7話:体育祭
「ああ〜……。中間が終わったと思えば、次は体育祭か……」
中間テストは、クラスメイトを巻き込んだお陰で賑やかに、しかし、変なフラグを立てる事なくやり過ごす事が出来た。
各教科、先生が想定していた平均点より高くなったと、クラス全員褒められたのは良かったかな。
ま、それは午前中の普通科の科目に限られていたが。
午前は、全科共通の普通科の授業。午後から普通科の他に、騎士科、魔法科に分かれるのだ。
普通科は、男女共通でダンスの日。女子は刺繍の日、男子は騎士科ほどではないが、剣術の日がある。
騎士科は勿論、馬術や剣、槍等を習う。
魔法科は、魔法の座学と実践ね。
午前中は普通科の男子生徒による剣舞と、魔法科の生徒による遠当て。午後は騎士科の生徒による、馬上槍試合だ。女子生徒に、体育祭の競技はない。そもそも、体育と無縁の人種だからね。そんな女子は男子の応援をして、盛り上げるのがお仕事。
私は、どこで何をしていたか分かるように、アリバイ作りに忙しい。
カフェテリアを借り、軽食とドリンクのお店をしている。私は勿論、厨房。有志の令嬢の何人かが、何とウエイトレスをしている。それ以外は、私の料理を見たいカフェテリアの料理人たちなど、もともとここで働いている従業員たちで構成されたメンバーだ。
体育祭の日は、みな、こぞって豪華な昼食を持参してくる。その為、カフェテリアはそんなに忙しくないのだ。日替わりランチを食べる生徒と、たまにドリンクを飲む人がいる程度。
それなら、暇なカフェテリアを借り、アリバイ工作に使わせて頂こうと奔走したわよ。
ドリンクはレモネード、蜂蜜柚子水、ホットオレンジ、ホットりんごジュースの4種類。今、女性にはホットジュースがブームなのだ。それで、2種類、ホットジュースを入れてみた。
食べ物は、タルトタタン3種。タルトタタンと言えばりんごだけど、梨と桃も用意。それにスフレケーキ、旬の果物のクレープ。
がっつり系で、ローストビーフのオープンサンド、チキンサンド、ホットドッグ。ホットドッグはシンプルな物に、好みでチーズやキャベツ、レタス、トマトといったトッピングも可能。これなら、あまり裕福でない家の方も、充分手の届く物になると考えて取り入れた一品だ。
しかし、蓋を開けてみると……
「ホットドッグを二つ。一つはチーズを追加で」
「こちらも、ホットドッグを頼む。一つはチーズとキャベツ、一つはトマトとチーズをトッピングした物を」
ホットドッグが大人気! 成長期の男子に、競技の合間に立っていても食べやすいと大人気なのだ。一人で友達の分も頼んだり、従者さんや侍女さんにお使いしてもらったりと、とにかくバカ売れなのだ。
お陰でパン、パンが間に合わないわ! どうしよう?!
「お嬢さま。邸の料理人から、ホットドッグ用のパンを預かって参りましたわ」
「えっ?! 邸の?」
「はい。旦那さまが朝からの売れ行きをご覧になり、午後の分はなくなりそうだとお考えになられたようですの。それで、邸の料理人にパンを焼かせたそうですわ」
「お、お父さま〜っ、頼もしいわ!」
「そうだろう? 邸で練習していたからね。このパンを作らせる事が出来たよ」
「あ、お父さま! ありがとうございます。
ええ。この形のパンは見た事がございませんから……作るしかございませんでしたの」
「菓子ならともかく……、料理などと思っていたが……」
(あ、これは。商売になるとか考えているんだろうな)
「帰ってから、ゆっくり話しましょう」
「そうだな。ああ、そうそう。後で二回、追加のパンが届くように手配している」
「ありがとうございます! これで、最後までパンが足りそうですわ。本当に、お父さまの手配に感謝致します」
私がここにいたというアリバイが出来れば良かっただけなのだが、こうしてホットドッグを筆頭に、全品完売という嬉しい結果となり――――
それは、夏休みから本格的に始めようと思っていた計画を後押ししてくれたのだった。
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