6話:中間テスト前
「今回も満点です。シャーリー嬢、これで五回連続ですね。素晴らしい事です。
この調子で、来週の中間テストも頑張って下さい」
「はい、マルグ先生」
週に一度ある、算数の小テスト。小学生レベルの算数は、流石に苦労しないわ。
……まあ、それも落ち着いてテストを受けられるようになってから満点が取れるようになったんだけど。それまでは簡単な計算ミスとかで、何問か落としていた。
「まあ、シャーリー嬢。本当に素晴らしいですわ。私、算数はあまり得意ではなくって……」
「私も、算数は苦手で……満点はなかなか取れないな」
「……算数は、魔物を狩るには不要」
「はあ、私は大学で算数も修めるのだが……。得意ではないから羨ましいです」
「未来の宰相候補が、頼りないな。……そういう私も、得意ではないが……」
「暗記なら得意なんだけどな……算数は……」
(今でも、前世を詳しくは思い出せないけれど……。二十歳前後の記憶まではそれなりにあるから、小学校くらいの算数はさすがに楽勝よ)
そうなのだ。ある程度の記憶があるので、この世界の学校で習う算数は苦労しなくなった。
子どもの頃から家庭教師に教わってきた、歴史や古典は苦労しているが……
(だってねー? ここで教わるのは、日本の学生が教わる、歴史や古典ではないから)
「私も苦手なのですわ。友達のミレーと、図書室で予習、復習をするようになったのが良いようですの」
(私が算数を教えて、ミレーは私に古典を教えてくれているのよね)
貴族には、古典はとても重要らしいのだ。古典からの引用で、貴族特有の回りくどい言い回しを良しとされるからだそうだ。
「まあ、図書室で?」
「図書室か……」
「…………」
「シャーリー嬢、その……」
「私達も、その……」
「混ぜてくれないだろうか?」
「絶対にお断り!」とは、勿論、口が裂けても言えない。
「まあ。ですが、皆さま、それぞれになさる事があられるのでしょう? 授業が終わると、すぐにお帰りになりますもの」
ふっふっふー。私は知っている。ジュリエット嬢は、授業で習わない言語や各国の歴史などを。
王子殿下は、国王陛下のサポートを。
他の四人もそれぞれ見習いとして、様々な事を学んでいる。
このゲームの主要メンバーは、生徒会役員などしている余裕がない人たちなのだ。
「そうなのですが……」
「こうして学校の学生である限り、学業優先は許されるよ」
「そうだよな。俺はさすがにもう少し、算数の成績を上げないとマズい」
「私も、大学へ進むには成績を上げないとマズいな」
「成績が振るわないのは、ちょっとね……」
「うん、ちょっとね……」
(いやいやいやっ!! あなた達、忙しいじゃないの! いや、暇でも関わりたくないんだって!)
「ね、シャーリー嬢、お願いですわ。私、刺繍が得意ですから、刺繍をお教えいたしますわ」
(くっ。これも貴族子女には必須! 日本で刺繍なんてしなかったからか、縫い物に比べてすっごく苦手……っ)
「私は、各国の歴史は得意だ。そちらなら、お教えできる」
(そりゃー、政治の中枢に携わっているのだもん。歴史から現在まで詳しいでしょうね)
「私は……得意? あれ、剣以外……?」
(あはは……。脳筋ではないものの、剣以外の成績はほどほどだもんねえ……)
「私は……」
「分かりました。放課後、図書室でみんなで勉強会を致しましょう」
(その代わり……!)
「他のみなさまも、宜しければ放課後、図書室で勉強会を致しません?」
クラスメイトたちも巻き込んでやるううぅうう! これならジュリエット嬢と攻略対象者だけで固まるより、少しでも安全になるよね?!
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