5話:学内舞踏会
「はー……あ…………
無事に終わったら、さっと帰ろ」
子の心を親は知らずな夜から一月。今夜は、学内舞踏会の当日である。
今日までにもう一度、王子殿下たちとジュリエット嬢とお昼を一緒に食べたり……、他の生徒とも二回お昼を食べたり……
焦ったのは、四人目のパートナーがなかなか決まらなかった事くらいだろうか。決まったのはいいのだが……
最後の一人は、殿下の取り巻きであり、攻略対象者の一人でもあるアーサーさまになったのだ……
(だって……あれじゃあ、なかなかパートナーが見付からないと思うもん。
放っておけなかったんだよおおぉおお)
アーサーさまは騎士科に通っているだけあり、たいへんパワフルだ。かつ、ちょっとリズム音痴である。
そんな彼の特訓を偶然目撃して、一月でどうにかなるのかと目眩を覚えた。
そんなアーサーさまと踊れる女子生徒が、ほとんどいないのである。これを上手く踊れるようにしてあげるのが、ヒロインの役目である。
(聞くのと見るのでは、全然違うものね……
関わらないと思っていたのに、つい、手を差し伸べたくなったくらいだわ)
学内舞踏会の一曲目、私はアーサーさまとダンスである。まだ時間はあるので、アーサーさまを探す。普通の舞踏会であれば、爵位の低い方から順に会場入りとなる。それは、学内舞踏会には適用されないから、もう会場入りしていてもおかしくはない。
(あ、いたいた!)
少し探すと、やっと来たらしいアーサーさまを発見した。生徒全員が学校で集合なのも、普通の舞踏会との違いだ。
「アーサーさま、ご機嫌麗しゅう。本日は一曲目のお相手を、どうぞ宜しくお願い致しますわ」
「シャーリー嬢、こちらこそ宜しくお願いするよ」
そうこうしていると、ジュリエット嬢や王子殿下方も会場入りをなさった。もうすぐ、学内舞踏会の開始時刻だ。
「アーサーさま、そんなに緊張なさらなくっても……」
「そうだぞ、アーサー。緊張のし過ぎは良くないよ」
「アーサーさま、女子はそこまでか弱くはありませんわ。ご一緒にダンスを楽しめましてよ」
そうなのだ。アーサーさまはお母さま以外の女性と、殆ど接した事がない。姉妹はおらず、兄弟に揉まれて育った彼は……
ものすっごく! 初心なのだ!
ただ話すくらいなら、それほど照れないみたい。それが手を触れるとかとなると、一気に緊張するのがダンスが下手な理由。
「あ……、そう? なのか?」
「アーサーったら……。女子を大事に思い過ぎよ。アーサーが思っているより、私たちは強くってよ」
ふふふ。ドレスは意外と重い。時代やドレスの形などにもよるが、数キロから十数キロはあったのだ。鉄製の支柱とか使った下着とか、下着だけでかなり本気で重いから! クジラの髭とかを使った軽いものや、シュミーズが復活したのが分かるよ。
因みに、十二単衣も重いよ。
「まあ、儚げなジュリエットさまには似つかわしくないお言葉ですわ。
私でしたら本当にそうですもの。信じて下さいますわよね?」
扇を開き、口元を隠して嫣然と微笑む。
校庭の隅で、木に登って降りられなくなっていた猫を助けている所を見付かったのだ。木登り中の私ともども。
アーサーさまは目を白黒させて驚いておられたが、にゃんこの命にはかえられない! 邪魔なハイヒールも脱いで、木登りしたわよ。
そんな事を思い出したのか、アーサーさまの体から、少し力が抜けたように見えた。
「そうですね。パートナーをしっかり見て、一緒にダンスを楽しみたいと思います……」
良かった良かった……
私には、ジュリエット嬢にワインを掛け、王子殿下とダンスが出来なくするといった妨害をする心算はない。
悪役令嬢がその役を果たさなかったのだ。こうして、学内舞踏会は騒ぎの一つも起こらず、無事に閉会を迎えたのだった。
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