3話:変化
「ねえ、シャーリー。今日のお昼は従兄弟と、そのお友達も一緒でも良いかしら?」
「ええ、良いわよ」
「ありがとう! 従兄弟たちが喜ぶわ」
唯一の友達ミレーとは、子どもの頃からの付き合いだ。だが、彼女の従兄弟との付き合いはない。
キツい見た目に硬質な声のため、嫌厭されていたためだ。
それが、ミレーと仲良くなって以来初めて、こんな風にお昼を共にと言われたのである。ちょっと驚きでもあるわ。
ミレーには、勿論私の他にも友達がいる。だから、お昼はその従兄弟たちや女友達たちとカフェテリアで摂っていた。
「あ、でも、私はお弁当を中庭で……」
「ええ、分かっているわ。料理人に頼んでバスケットにお昼ご飯を用意してもらったから、大丈夫よ」
「そうなのね。じゃあ、一緒に中庭で食べましょう」
「今から楽しみだわ!」
日焼けを嫌い、女子生徒の殆どがカフェテリアで食事を摂る。その為、こうして外で一緒に食べようというのは、かなりレアな事だ。
裕福ではない貴族家の寮生たちは、学費として収めているお金で食べられるカフェテリアの日替わりランチを摂る。寮生には寮生バッチが与えられているので、それを見せると金銭授受なしで食べられるシステムなのだ。
通いの方たちも、カフェテリアの席で摂るのが普通だ。ただ、カフェテリアはそこまで広くないので、教室などの校舎内で食べる方たちもいる。
まあ、だいたいは爵位が低い方たちなのだが……
校内は身分の貴賤問わず平等となっているが、やっぱり、ね。爵位の低い家の方たちは、狭いカフェテリアを使うのを遠慮する傾向にあるわけよ。
◇◇ ◆ ◇◇
「シャーリー嬢、ご無沙汰です。今日はお昼を共に出来て光栄です」
「こちらこそ、ご無沙汰ですわ」
「彼は私の友人で……」
お昼に私がいつも使っている東屋に集まり、簡単な挨拶をするとお昼となった。
「さあ、どうぞ。召し上がれ」
土日に作り置きして、無限収納へしまっていた料理を少し出す。それが目的のようだからだ。
「まあ……!」
「噂通りだ!」
「うん、それに美味しそうだ……!」
チキンバーガー、豚カツ、ソーセージ三種とチーズのスキレット焼き。それと野菜スープに温サラダだ。
人前で取り出すとは思っていなかったので、器は普段使いの物だ。それはご容赦願おう。
「まさか、こうして皆さまに供するとは思っておりませんでしたから……器が普段使いの物で、申し訳ありませんわ」
「そんな! 気にしないで!」
「そうです。急にお約束したのですから」
「ええ。しかも無限収納におしまいの料理があるとお聞きし、無理を通したのはこちらです。
本当に、お気になさらないで下さい」
「ありがとうございます」
そう言って微笑むと、んんん〜? 男子二人の頬が赤くなったわね。ミレーは料理を出した時から目を輝かせたまま、変化はない。
まあ、どう繋がるか分からないから、生徒たちとあまり関わりたくはないのが本音。その一方で、親切とか優しい人という印象を与えたい。
その為の努力は、一切惜しむ心算はないから。赤くなられない程度に、その目的の為の時間を作るわ!
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