表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

15話:服飾店facile(ファスィル)

「ええ、そうよ。この店の服は、一部は私が考えたの」


 服を作るつもはなかったが、困っている事があって手を付けた。


 ボタンは古代からあったが、中世ではまだ職人の手作りによる一点物で高価なのだ。近代になり、金属製などの安価な物は作られ、一般にも広まった。

 ファスナーも、近代に入ってから出来た。


 困っているのは、ドレス。なんと、所々まち針で留めて着るのよ! そんなものだから、たまに針の先が刺さるのよ!


 ファスナーを作ろうと思ったけど、構造が分からず断念。代わりに何かと考え、の『こはぜ』。フックにしなかったのは、こはぜの方が量産し易いから。


「まあ、前がこんなにしっかり閉じれば、暖かいでしょうね」


「そうなの。奥がこはぜで、表はボタンの二重で止めるから、隙間から入る風をかなり防げるの」


「すっきりしていて、シャープな印象のがいとうになるね」


「本当だね。マントとも、従来のがいとうとも違う印象だね」


「私はこういった、シンプルな服の担当ですの。それ以外は、新進気鋭のデザイナー、ベルルッティさまにお願いしておりますわ」


「まあ! ベルルッティですって!?」


「新進気鋭の、人気デザイナーじゃないか!」


「ベルルッティと組むなんて、たいしたものですね!」


 そう、ベルルッティと提携出来たのは、何を隠そう、こはぜのお陰! 彼はこはぜの有用性と使い勝手の良さに気付き、提携を決めてくれたのだ。


「シャーリーさま、お待たせして申し訳ありません」


「ベルルッティさん、接客していらしたのだもの。気にしていないわ」


「ありがとうございます。こちらの男性お二人を、私がご案内させて頂くのですね」


「ええ、卒業式の舞踏会で着る物をお探しなの」


「通常であれば、私どもがお邸に伺うところ。こうしてご足労下さったのです、晴れの日に相応しい物をご案内致します」


「平服でもとても素晴らしいから、期待しているよ」


「シャーリー嬢、ミレー嬢、また後ほど」


「ええ、後ほど」


「ノア、イザックさま、後ほど」


 ◇◇◇ ◆ ◇◇


「ミレー、これどうかしら?」


「似合っているけど、シンプル過ぎだと思うわ」


「そう、かなあ?」


 前世の記憶が戻った事で、一つ弊害がある。この世界はロココ時代のような、男女ともにフリルとレースとリボンがたっぷり使われた服なのね。あまりにそれらがたっぷり使われているのに困惑して、自分ではそれなりの物を選んでいるつもで、かなりシンプルな物を選ぶようになってしまったのよね。


 衣装にお金を掛けるのも、貴族として見栄や財力を喧伝するのに外せない。最近では、地味ともとれるドレスのチョイスを両親に心配されるほどだ。


 それはミレーも同じで、それなら一緒にドレスを作ろうとなった。


「ええ、シャーリー嬢。卒業式の舞踏会は、花嫁衣装に近い華やかで豪華なドレスが好まれます。一度しか着ないお衣装がどれだけ豪華に出来るかで、財力を測られますわ」


 アドバイスをしてくれるのは、ベルルッティのパートナーで、このお店、服飾店Fa(ファ)ci(スィ)le()の副店長。社交界にも出入りしていて、細かいところまで詳しい、頼れる人だったりする。


「ええ? 卒業式の舞踏会のドレスまで、家の財力を見られるの?」


「それはそうでしょう。婚約者を見付ける為にも、財力を見せる場なのだもの」


(そうは言ってもねー……)


「せめて、しゅうを増やされてはいかがでございますか?」


「そうよ。しゅうくらい、しっかり入れた方が良いわよ」


「そうねえ……」


 この日、私のドレスがなかなか決まらず、買い物は別の日に行く事になった。


 それでも、なかなか予約の取れないベルルッティの服が着られると、ミレーにもノアにもイザックにも喜ばれた。


 イザックともまた買い物に行けたから。うん。良しとしよう。

 誤字報告、ありがとうございます。


 お読み下さって有難うございます。お楽しみ頂けましたら幸いです。


 面白かった、良かったなど、お気楽に下の

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 にて、★1から★5で評価して下さいね。


 いいね!も、宜しくお願いします。


 続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!


 感想や応援メッセージもお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ