14話:文化祭以降の変化
「シャーリー嬢! たまたま兄が迎えに来ていて、ご挨拶させて頂けませんか?」
「シャーリー嬢、私の兄もですの。ご挨拶させて頂けませんか?」
………なんなんだ!? 文化祭の間も、そんなのが沢山あったわね。一体、なんなのかしら?
「そりゃ、人より美味しいものを食べたりレストランを知っているのはステータスだもの。
この間、貴族向けのレストランも開いたでしょう。貴女と結婚すれば、新しいメニューも手に入るかもしれないもの。
兄弟姉妹やいとこがこの学校に通っているのなら、迎えにかこつけてやって来ても不思議じゃないわよ」
「ああ…………」
思わず、顔から表情が抜け落ちるのが分かったわ。
「それにね、」
ミレーはそこで言葉を区切り、ややもったいをつけてから続きを話し始めた。
「お料理をしているシャーリーは、とっても幸せそうに笑っているの。
それがとっても可愛くって、男女問わず、人気が出ているのですって」
「笑っている……」
確かに、楽しいかも。
ここが乙女ゲーの世界だとか、下手をうつと断罪されるとか……何も考えず、ただ、料理に集中して、食べた人が美味しいと笑顔になるのが嬉しくって……
「ノアとイザックさまに聞いたのだけど、卒業生にも隠れファンが多かったんですって!」
「は?」
隠れファン? 思わず、変な声が出たわよ。
「前はね、近寄り難くて、見ているだけの高嶺の花だったそうなの。
でも今は、頑張れば近寄れるかもって……それで、頑張ってみようって方も多いみたいよ」
私は何も変わっていない心算だけれど……周りの人の目には、そんな風に映っているのね。
「でも、シャーリーったら、私とノアとイザックさま以外には、どこか線を引いているでしょう?」
断罪されない人生を手に入れる為に、確かにそうしているわ。この世界の平民も楽ではないけど、それでも生きていたいもの。
「シャーリーも、いつ婚約者が出来ても不思議じゃない年頃だもの。だから、線を引かれていても、前より柔らかな雰囲気の内にっていうのもあるんだと思うわ」
「そうね、そっか。歳も歳だもんね……」
十八歳になる年に学校を卒業して、女子は卒業と同時に結婚する子もいる。遅くても、二十歳頃までには結婚するもんね。
「侯爵令嬢、顔良し、スタイル良し、成績も優秀。男子が放っておかないわよ!」
……かあーー!!
一気に顔に熱が集まっていくのが分かったわ。侯爵令嬢と成績は分かるけれど、顔とスタイル?
顔はキツいし、スタイルは普通だと思う。何より、男子が放っておかないの件は、良く分からない。
「……あんまり、分かっていなさそうね……
でも良いわ。今のシャーリーの方が、私も好きだもん!」
「あ……りがとう、ミレー」
ミレーに好きと言われたのは、とても嬉しい。目の奥が痛み、熱を持つ。
「あ、馬車が来たわ。今日は冬服を買いましょう!」
「ええ、良い物を探しましょう」
こうして、ひっそりとしていたい私の周りは、一気に騒がしくなったのだった。
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