13話:ある日の学生生活
「お誘い、ありがとうございます。
お昼休みはクラスの違う、仲良しのミレー嬢と過ごすのが楽しみなのですわ」
「そうですか……
機会があれば、その時は是非ご一緒させて下さい」
「はい、機会がございましたら」
(ないけどね!)
最近、お昼ご飯を一緒に食べたいと声を掛けられる回数が増えた。以前は何回か、ミレーたち以外と食べた事があるわ。今は勿論、全部断っているわよ!
気の置けないミレーと、ノアさま、イザックさまと過ごすのが楽しいのも本当。何より、イザックがいるんだから!
この四人で、町へ買い物へ行った事もあるのよ。他の人とは行かないけど。
そんな楽しい学生生活を送っていたある日……
「ミレーもノアさまもイザックさまも、みんな休みなんて……」
(偶然が重なって、そんな日もあるかなあ……。仕方ないよね)
「シャーリー嬢、今日は私たちとお昼をご一緒致しませんか?」
(有難いけどねー……)
お誘いを断り続けていたジュリエット嬢たちから、チャンスとばかりにお声がかかった。
「お誘いしても、なかなかご一緒できないからね。どうだろう?」
(そりゃ、理由をつけて避けているからね)
「珍しい、美味しい料理が噂になっているんだ。また、食べてみたいな」
(体を作る食事の話から、私の手作りお弁当に並々ならぬ興味を持っているもんね)
「私たちのグループは、女子生徒がジュリエット嬢お一人でしょう? たまにはジュリエット嬢が女子生徒と話す機会にと、何人かお誘いしたんだけどね……」
(王族に、高位貴族だらけのグループだもん。混ざれば気疲れするよね。
それも、殿下とジュリエット嬢が婚約するのは決まりだろうと言われている中、混ざるメリットもないわけだしさ)
「シャーリー嬢なら、何度かご一緒した事もあるからさ」
(まあ、何回かご一緒したわねー)
「私は素直に、珍しい食事に興味がある。是非、交換して頂きたいです!」
(おお! 本当に素直!
……確かに今日は一人だし、んー……)
「ありがとうございます。ご一緒させて下さいませ」
(美味しい物を食べたい! それは私も同じだから、今日だけね!)
◇◇ ◆ ◇◇
「うふふ。シャーリー嬢とご一緒できて、本当に嬉しいですわ」
「ジュリエット嬢は、学校では女子生徒となかなか一緒に過ごせなくなっただろうからね」
「殿下の近くに、あまり女子生徒はね……」
殿下が普通の学生として過ごす為、校内でお世話係りを拝命した方以外は、あまり近寄れないのだ。護衛騎士も付いているが、殿下の警護の為の対策でもある。
(それを知らないから、ジュリエット嬢とばっかり! って、嫉妬にも繫がったんだけどね)
それに、お世話する女子生徒がジュリエット嬢だけなのは、王家も彼女を殿下の婚約者の最有力候補と考えているためでもあるのだろう。
(学生生活を通じて親しくなり、婚約がスムーズに整うようにという準備でもあるんだろうな)
「これを文化祭でというのは、大胆な出し物だよね」
「毎年、どこも似たような出し物だから、面白みに欠けているからな」
「そうなんだけど……。言い出した私たちが料理に関わらないのは、申し訳ないよね」
「私たちは料理が出来ないから。料理は担当生徒に任せる方が、きっと邪魔にならないよ」
「お会計やご案内も、大切な担当ですわ。みんなで我が校初の飲食店の出し物、成功させましょう」
そうなのだ。料理がしてみたい! というご令嬢がクラス内に結構いて、出し物がカフェテリアになったのよ。
裕福ではない家の子息令嬢は、狩りや家事もしていたりするから。変わった料理が覚えられるのは、意外にも有難いらしい。
傅かれて生活するのが普通の生徒に、勿論料理はさせられない。料理以外を担当する。オーダーの取り方や会計の練習をしつつ、練習で作った料理が食べられるので悪くないらしい……
「メニューは増やし過ぎす、定食を3種類か4種類でというアイデアも、とても素晴らしかったですわ!」
「そうだね。それなら短時間で習得できるね」
「俺はチキンステーキを習得したぞ!」
「え?! アーサー、いつの間に!?」
「ズルいぞ! アーサー!」
「私はグラタンを覚えた」
「まあ! マエルさまがお料理を?」
そうなのだ。公爵令息のマエルさまがグラタンをいたく気に入り、練習会に参加して覚えられたのは驚いた。
地球では、料理が趣味の王さまが何人かいたから……覚えるのは絶対に駄目とは言わなかったんだ。
「メニューを決める試食会でもお弁当でも食べた、何と言ったかな……? そうそう、豚カツ。私はあれを覚えたいな」
「え!?」
「殿下までお覚えになられるのですか?
それなら私は、唐揚げを覚えたいですわ」
「ジュリエット嬢?!」
「叶うなら、私は海老フライだな」
「私も、海老フライなら覚えたいな」
(みんな、怪我する未来しか見えないんだけど?!)
アーサーは騎士科で野戦食を作る実習もあるから、それなりに料理は出来た。マエルさまは料理に興味があり、玉子焼きとかのカンタンな料理を料理人から教わっていた。
だから、この二人は練習会の参加は問題なかったが……
「殿下、ジュリエット嬢、ジュールさま、それにユーゴさま。料理のできる方と練習会にお越し下さいませ。その方にお教え致しますわ」
これが精一杯の譲歩だわ。
こうして、危うく変なフラグが立ちそうだったのをへし折り、しばらく後にあった文化祭も無事に終えられたのだった。
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