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プロローグ

 

 古くから各所で行われてきた邪気祓い。

 各々がもつ罪や穢れ、時には村を襲う程の厄災は余りに多く、何時しか『祓い』を請負う能力をもった者たちが現れる様になった。


 しかし、強力な邪気を祓えば、力尽きて命を落とす者も多かった。 それを嘆いた巫女は、尽きかけた者の力を回復させる為『神降ろし』を行った。

 そしてその力を相手へと注ぐのだった。


 それが出来た巫女が、後に『"癒やし"の巫女』と呼ばれるようになる。 


 『神降ろし』が出来るとあって、巫女の神通力は、男の邪気祓いの力にも勝る、強力なものであった。

 しかし、神事を行い回復させられるのは、巫女の生涯で唯一人だけだった。 

 



 こうした『神降ろし』には、神のみではなく、神に遣えた動物達も、深く関わっていたという。

 鼠、狐、蛇、兎、烏、猿……。 様々な神獣達が、神に代わって巫女の体へ降り立ち、邪気祓いで失った力を取り戻す為の役目を果たしていた。

 


 しかし神の遣いとはいえ、『獣』だ。 人間とは違い、己の欲にも忠実であった。


 そして神獣の力は凶暴で扱うのも大変難しく、取り込めば人格を喰われてしまうという事も多かったという。


 それだけの力と共存出来る素質をもった者だけが、神獣の力の恩恵を与る事が出来た。 その証が、降り立った神獣と同じ色の瞳だ。 『朱い(あかい)瞳』もその一つである。 


 その中でも『神格』と呼ばれる者は、体内の神獣を手懐け、その力を最大限に引き出し操る事ができる。 そして瞳の色もとても深く濃い色へと変化し、勿論邪気祓いの力も強力になっていったのだった。



 それらが年月を重ね、その血を受け継いだ者たちが集まり、その力を後世へと引き継いできている。


 

 しかし時が経つにつれ、人々を取り巻く環境が著しく変化し、祓い屋家業も役目を終え、一部を残して姿を消していった。 

 その一部とは、『"癒やし"の巫女』の生まれ変わりと再会を果たし、結ばれる事でその血筋を後世に残すことが出来た家系だ。 その生まれ変わりも、女ではなく、男であることも増え、『巫女』から『君』へと、呼び名も変化していった。


 


 

 現代において、神使『鼠』の血を受け継いた一門の当主は『柳真白』、次期頭がその息子の『弦太』である。

 一門の頭にたてるのは『強者』のみ。

 長年柳家に太刀打ち出来る一族はなかった。


 その理由は、『神降ろしの巫女』に近いと言われる"女"が立て続けに生まれてきた事。

 

 加えて、柳家の者が先々代より『"癒やし"の君』と縁があった事にある。


 此等が重なった事で、柳家は精強な力を得ていた。

 

 四代目にして男の弦太が生まれたが、獣憑きの素質と、過酷な鍛錬によってその地位を築いている。 


 そしてその彼にも『"癒やし"の君』との縁が繋がる。



 それが柊ひなただった。


 

 

 

 

 


 

 


 

 

 

 



 


 

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