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自炊する休日

作者: 玉菜

「自炊って面倒じゃない?」

 同僚は市販のサンドイッチを齧りつつ私の弁当箱を見ながら言った。内容物に凝ったものはなく前日の残り物と常備菜が数品、彩りに気は回らず映えとは縁遠い。

 同僚も一人暮らしを始めた当初は自炊をしていたらしいが、家を出る前は料理をしてこなかったそうで、自分の作った料理が美味しく感じず、すぐに止めてしまったそうだ。彼氏が最近手料理が食べたいと言ってきて面倒臭いと大袈裟な溜め息とともに漏らしていた。

 あの時、私はなんと返したか覚えていない。多分、大変だねとかありきたりな言葉で気のない相槌を打ったのだろう。大して仲のいい同僚ではなかったし、相手も愚痴を言えれば誰でも良かったはずだ。

 そんなことを考えながら実家から送られてきた人参を千切りにしてラペにする。程よい酸味が箸休めにちょうど良く人参があるときは常備していた。ラペをタッパーに閉じ込め、ボウルの中で塩にまみれた薄切りの茄子ときゅうりはいい感じにしんなりとしている。ぎゅっと水気を絞って数切れつまみ食い。ほのかな塩っ気が素材の味を引き立てて美味しい。こちらもタッパーにしまう。

「女の子は料理ができて当たり前」

 幼い頃、祖母はそう言って食事の支度を手伝わせた。両親は共働きで、祖父もまだ現役で働いていたから家のことや孫の世話は祖母が一手に請け負っていた。私には兄と弟がいるが、祖母が手伝いをさせるのは決まって私だった。古い考えの人だったのだ。

 小鍋の卯の花はいい感じに水気が飛んで、少し味見につまむ、いつもどおりの味だ。

 なんで私ばかりと思わなかった訳ではないが、だからといって祖母を悪く思ってもいなかった。一人暮らしを初めて、料理や掃除を含め家事全般を特に面倒だと思わなかったのは祖母のおかげだ。

 半額シールのついた牛肉はしぐれ煮にしよう。刻み生姜をたっぷりいれるとすっきりとしてご飯のお供にぴったりだ。お弁当のおかずにも丁度いい。

 私の休日はこうして買い込んだ食材を作り置きおかずに加工して過ぎていく。仕込まれた料理を披露する相手もいない。他人が見たら寂しい休日だと感じるのかもしれないが、こんな生活を私は愛していた。

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