表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/128

どういうことですか!?

「本当!? 猫が森田くんの膝に乗ってる写真ってこと!?」

 奈月の大きな声が辺り一面に響く。

 奈月は慌てて周囲を見渡して

「大きな声出しちゃった。他の人いなくて良かった」

 と照れ笑いをした。


「猫関係は私もそうなります」

 と、夢子も笑った。

「猫そんな好きなんですか?」


「好き。昔は森田くんも、猫苦手じゃなかったんだけどね」


「引っ掻かれてかなり苦手になったらしいですね」


「うん。マンションの廊下に猫がいて、家の鍵を開けようとしてキーホルダー出したら、その手に飛び付かれたんだったかな。猫的(ねこてき)には、キーホルダーにじゃれたのかな?」


「多分そうですよね。偶然じゃらした形になって、爪がたまたま出てて」

 そう言いながら夢子は、両手を丸めて猫の手を作って里子の頬を撫でた。


 奈月は頷いた。

「多分そうだよね。それまで森田くんって、動物が好きってわけじゃないのに、わりと動物たちに好かれてたんだよね。だから猫を全然気にしないで鍵を出しちゃって、猫の方も気楽にじゃれて。

 けど森田くん、猫にいきなり引っ掻かれたのが相当ショックだったみたいで。

 ちょっと前に野良猫を見掛けたときも、私が猫で遊んでる間、森田くんはかなり離れて見てて。気にしないで遊んでてって言ってくれたけど、かなりトラウマになってるのかなって思った。

 だから、猫と森田くんがいっしょの写真があるなんて驚いちゃって。どうやって猫との写真なんて撮ったの?」


「ベンチに座ってたら、森田先輩の足に猫がスリスリしに来て。本当に性格悪い話で恥ずかしいんですけど、私チャンスだって思っちゃって。森田先輩の太ももに猫を置いて、無理矢理。すみません」


「大丈夫、そんなの私もチャンスだって思うし!

 森田くんはどんな反応してた?」


「森田先輩、かなり怖がってましたよ。思ってたより本気で苦手そうだったから、高速で写真撮って猫どかして、ちゃんと真剣に謝って。

 でもなんか、私への怒りより猫への驚きの方が強かったみたいで。『猫ってすごく重いんだね。猫が触ってたとこがまだ熱いよ。ああ疲れた』って、笑ってくれました」


「ああ、そうなるかも。直くん――あ、森田くんね。森田くん、動物を抱っこしたこと少なくて。

 小さい頃に動物と触れ合い施設に行って、ウサギとか触らせてもらえたんだけど、森田くんは『落としそうだからやだ』とか言って、抱っこするの嫌がってたの。亀の甲羅だけツンツンしてたけど、それ以外は触りたがらなくて。

 だから森田くん、猫の体重も体温も全然知らなくて、その日に初めて知ったんじゃないかな?」


「あ、直くんって呼んで良いですよ。実は私、クリスマスに二人の呼び方が変わったってこと、知ってるんですよ。

 森田先輩に無理矢理――なんか私、無理矢理ばっかりですね。とにかく聞いちゃったんですよ。クリスマスのこと報告してくれないなら、教室まで行ってクリスマスデートのこと言いふらすって脅して。

 クリスマスになる前は森田先輩、どうせ何も起きないよって笑ってましたけどね。信用してもらうまで頑張るから、クリスマスに下心出さないって」


「直くんは我慢出来たんだけどねー……。私が早く付き合ってほしくて。あー恥ずかし」


「恥ずかしくないですよ、素敵だと思いました」


「直くん、どんな風に言ってたの?」


「えっと……好きなことバレてて、胸とか見てたこともバレてて、なのに嫌わないでくれたって。泣いてました。あんなに優しい人知らないって」


「あーそれ、亜紀の前で言ってほしかった!」

 と、奈月は残念そうな顔で言った。

「亜紀がまだいたら自慢したのになあ。

 亜紀はさあ、私の友達のくせに、どちらかというと直くんの味方で。思い出話をしてても、すごく直くんの肩持つんだよね。

 森田くんじゃなかったらとっくの昔に嫌われてるよって、何回も亜紀に言われてるの」


「そういえば二宮先輩、なんだかすごい慌ててサウナに向かいましたね」

 夢子が、思い出し笑いをしながら聞いた。


「色々あって、亜紀は直くんの文章のファンなんだよね。だから歌にも期待しちゃったんだと思う」


「そういえば、私以外にもファンがいるとか言ってました」


「ああ、もう知ってるんだ?

 まさか直くんが小説書けるなんてねえ」


 それを聞いた夢子は慌てた。

「いや私、小説とまでは聞いてませんでしたけど。

 森田くんに怒られるから言えないんだけど、ファンがいるんだよってくらいしか……」


「あ、そうなの? ……じゃあマズイじゃん私。バラしちゃったじゃん。

 お風呂から出たら直くんに怒られるかも」


 里子は少し気になって

「わざとじゃなくても怒られちゃうんですか?

 奈月先輩って、森田先輩にすごく大切にされてるって聞いてますけど」

 と、聞いた。


「あ、うん。大切にはしてくれてる。でも、どんなことで怒るかとかまだ知らないから心配で。

 ……わざとじゃないから平気かな?」


「大丈夫じゃないですか?」


 自分の責任だと思った夢子は

「ごめんなさい。私、森田先輩に説明しますよ。私が勘違いさせるようなこと言ってバラさせたって謝ります。私が怒られるべきですし」

 と、謝罪した。


 しかし、その言葉に奈月は大慌て。

「ダメダメ。そんなこと言ったら、小説でエッチなことされちゃうから」


「どういうことですか!?」


 三人の笑い声が風呂場に反響し、小鳥が驚いて飛び立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ