今度は私が勇気を出す番
奈月は次の日から、用が無くても直人の部屋に行くようになった。
直人が心配をしないように、部屋では飲み物をたくさん飲んで、暖かい格好をして、直人の部屋の毛布にくるまって過ごした。毛布は、直人の匂いがして、奈月は心まで暖かくなった。
直人がくしゃみをした時には、毛布の中に直人を誘って、恥ずかしがる直人をからかった。
一緒にゲームをしたり、好きな漫画の本の話をしたり、直人の小さな頃のアルバムを見たり、手紙に書いてあった「宝物にしている五百円玉」を見せてもらったり。
学校でも、なるべく直人に話し掛けるようにして、友達にも「人見知りだけど、すごく優しいんだよ」と伝えた。
友達の中で特に親しい人には自分の膀胱炎のことを打ち明け、協力を頼み込んだ。とにかく、クリスマスまでに完治させることを強く心掛けたのだ。
休みの日は、直人を外へ連れ出して、手を繋いで歩いた。緊張した直人が何も言えなくなっても、それはそれで奈月にとっては嬉しかった。
話題に困ったらクリスマスを指折り数えて、楽しみにしていることをアピールした。
けれども、自分の部屋には一度も呼ばなかった。
自分の部屋はとっておきの切り札だったからだ。
そして、とっておきの日――クリスマスイブ――がついにやってきた。奈月の部屋で、二人だけのクリスマスパーティーが始まる。