表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイカー  作者: フィール
序章
9/156

序章:終結

襲い掛かってきたビースト<クラウン>を危なげなく討伐したナムとトウヤは

ノーマル<ファイボ>の能力で燃え盛る屋敷の1階へと移動していた。


彼らが屋敷の玄関付近に移動し終わった時、向かって右側の扉が開け放たれ、そこからミナが出てくる。



「あら、ナム終わったの?……あ!トウヤさんじゃない!」

「ミナさんも来てたのか!」



自堕落なナムと違い、しっかりしているミナは過去に会っていたトウヤをすぐさま認識する。



「でも一応気を付けて、1階のノーマルは殲滅したけど、まだビーストを見つけられてない。」



ミナはそう言うとまだ警戒してるように視線が動く。



「問題ねぇよ、ビースト3体はこっちで殲滅した。」



そう言うナムに視線を向けると、安堵した顔に変わるミナ。



「私達なら問題ないけど、町にでも行かれてたら被害が相当出たでしょうから気が気じゃなかったわ、じゃあこれで終わりね。」



今回の魔物の集団の唯一の誤算はここが三武家の<マギス>の屋敷だった事

助っ人に来た2人も三武家の人間だった事だろう。


魔物達がなぜここを襲撃したのかは全く分かっていない3人だったが、考えても分からないとの事で1度屋敷の外に出る事にした。




屋敷の外にはミナが避難させたであろう屋敷のボディガード3人。

気絶しているらしい、ナム達が救出した防衛戦をしていた1人。

重症の4人も含めて、8人がそこに居た。

無傷の3人はそれぞれ応急処置や病院への連絡等、手分けして動いていた。

そして近くには不運にも命を落とした2人の遺体もカバーを被せられ横たわっていた。


それを見たトウヤは顔を曇らせる。



「2人も死んだのか……なんで逃げなかった、お前達より俺様の方が強いからヤバくなったら俺様を置いて逃げろっていつも言ってたのに……いやすまない、今はそんなこと言う状況じゃ無かったな……ご苦労だった皆。」



トウヤはボディガード達に礼を言うと、遺体の近くに寄り無言で手を合わせた。


この世界の治療魔法は非常に貴重である。


生まれつき体に流れる魔力が普通の人間と違う者が極たまに生まれる事があるのだが、その魔力が普通と違う存在しか治療に関わる魔法は使えず、それはマギスの人間であるトウヤも例外ではない。


そして治療魔法を使える者は攻撃に関する魔法を覚えることは出来ない。

その特殊な魔力持ちは100年に1度しか生まれないとされており、この世界に病院や医療技術が発達した原因はそこにある。


勿論その治療魔法魔法でも蘇生魔法は存在しない。


祈りを終わらせたトウヤが遺体の傍から離れ、無事な3人に近づく。



「応急処置に病院の手配、相変わらず手際が良くて助かる。

この4人を頼んだぞ、これ以上死者を増やさないでくれ。」



トウヤの言葉に一斉に敬礼したボディガード達は指示もそこそこに各人が動き始める。


それを確認したトウヤはナム達の元へ近付いてくる。



「俺様1人じゃもっと犠牲者が増えていたかもしれない、助かった。」

「気にしないで、むしろちょっと遅かった位よ、誰かさんのせいで。」



ミナはそう言うとナムの方を睨みつける。



「俺のせいかよ!?」

「寝巻きで外に出てたのが悪いわね。」



元はと言うとナムが強盗達の対処をしてたせいでミナが彼の自宅に来た時には既におらず、連絡が遅れた事も原因の1つなのだが、当の強盗たちはそんなこと知る由もないだろう。


一通り問答をし、項垂れるナムと勝ち誇るミナはトウヤに1度別れを告げ、町へと戻ることにした。



「後でナムの家に集合だ、久しぶりに三武家の跡取り同士話でもしようじゃないか。」



そう言ったトウヤに、なんで俺の家なんだ?、とか言ってるナムは総スルーでミナも了解し、一旦解散したナム達。


トウヤは引き続き屋敷の消火やボディガード達の護衛をしながら町に移動をするらしい、最早どっちが守られる側なのか分からないとナムとミナは苦笑した。


実際ボディガード達は殆どトウヤに守られているらしく、トウヤは彼等の生活の為屋敷の維持などの為に雇い続けていたようだ。

実際に雇っているのはマギスの現当主であり、トウヤの実父<ドウハ>の息子可愛さからの護衛役だそうだ、基本は戦闘においては逆の立場になってるらしいが。

そこまで当主が援助をしているのはマギスのみであり。


ブロウの現当主でありナムの実父<ガイム>

アーツの現当主でありミナの実父<ザベル>


彼等はドウハとは違い、独り立ちの時に金銭面の援助しかしていない。



彼らが独り立ちしているのには三武家共通の古いしきたりが関係している。


当主の実子が生まれると同時に孤児院から同い年の赤子を引き取って彼等が15歳になる迄、跡取りと養子に全く同じ訓練をさせ、お互いを競い合わせ実戦経験と修行を同時にこなせるよう鍛錬をし、15になると跡取りの権利がどっちなのかを当主が決めるのだ。


その養子は<ツヴァイ>と呼ばれる。


跡取りは実子が必ず継ぐ訳ではなく、実子よりもツヴァイの能力が高い場合は跡取りの権利がツヴァイに移ることすらある。

現在までそのパターンはどの武家も起きていないらしく、血はまだ三武家の血を引き継ぎ続けている。

そして彼らが15になると同時に、跡取りもツヴァイも独り立ちを強制され、社会の基礎を学ぶよう厳命されるのだ。


今回同じ町に三武家の跡取りが3人集まったのは偶然に過ぎず、世界のどこかには彼等のツヴァイも生活している。


ツヴァイの能力は殆ど跡取り達と変わらないため、三武家は各町に三武家の人間を散らばらせる事により非常時の対策の代わりとしている……とか噂されていたりされてなかったりする。

それが本当の噂なら既に今の時点でこの町の戦力が無駄に高くなってしまうのだが。


その事を思い出しながら帰宅していたナムは、独り立ちの時にボロ家1軒買える程度の援助しかしなかった実父のガイムの顔に拳を叩き込む妄想をしながら自宅の玄関に着く。

そんなことをすれば逆に極められ床に叩きつけられるのはナムの方なのであくまで妄想である。


その援助金で買えた木製で所々ガタついているボロ家の玄関を開けると、ようやく寝れるとばかりにすぐさま布団へと寝っ転がるナム。



「親父の野郎覚えてろよ。」



そんなことを呟きながら昼寝……いや、既に夕方になってるが……を再開し、いびきをかきながら眠ったのであった。


魔物襲撃編完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ