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ブレイカー  作者: フィール
2章
70/156

2章:2つ目の肩書き

四天王のハルコンの策略により、エイルは自身の正体に気付いてしまう。


真実を知た挙句、そのハルコンに嘘を吹き込まれたエイルは村人達へと追求を始めた。


しかしそれは更に悪い結果を招く。


彼がヒューマンである事を知る村人達の隠蔽体質な行動が、運悪くハルコンの策略を更に強固なものへと変えてしまった。


ハルコンから聞いた情報が真実だと誤解し、ショックで村から飛び出したエイルを重傷を負ったナムを除いた仲間達は彼を追う。


しかしそんなミナ達の前に、今回の事件の黒幕であるハルコンが立ち塞がったのだった。





4mを越す巨体を持つゴーレム、ハルコンは拳を握りこんで高速で突撃してくる。


彼と少しではあるが交戦した感じでは、この敵は魔法等を使うタイプではない事はミナ達も何となく察していた。


高速での突進や拳での殴打。

そんな行動しか取らないハルコンは恐らく肉弾戦タイプであろう。


しかしミナのメイスによる攻撃、トウヤの放ったフレア・ボムによる爆発にすら傷つかない体から放たれるその攻撃は、戦鎚と比べ物にならない程の威力を持つことは明確である。


先程の、所謂ただのタックルですら巨木を吹き飛ばす程の威力を持っていた。


それを自分の体にもろに受けたら、と考えたミナ達は冷や汗を流す。


当然である、即死以外の結末を想像できないからだ。


人間最強の一族、三武家は確かに超人的な身体能力を持つ。

マギスの跡取りであり魔術師であるトウヤですら、そこらの剣士よりも高い身体能力を持つのだ。


しかし体はあくまで人間、銃弾を頭に受ければ命を落とすし、刃物で喉を切り裂かれれば同じ末路を辿る。


ミナが素早く処置したお陰で命を拾ったナムが良い例である。



「リィヤちゃん、こっちに!」


「はい!」



ミナの言葉に反応したリィヤは、すぐさま彼女の近くへと移動する。


そしてミナは素早く武器を収めて彼女を抱えて横に飛び、そこにハルコンの拳が叩き込まれる。


拳を叩き込まれ、振動と共にクレーターのように抉れた地面からは土砂が高く舞い上がる。



「とんでもない威力ね。」


「ナムさんとそこまで変わらない気がします!?」



純粋な怪力を持つナムと違い、恐らく体の頑強さによるものも多分に有るだろうが、傍目から見るとリィヤの感想も的外れではなかった。


この威力の前に自分のバリアがどこまで役に立つのか、心底恐ろしくなったリィヤはミナの腕の中で体を震わせる。


彼女のバリア能力は、その頑強さでこれ迄の戦いで仲間を守るという意味では、これ以上に無いくらい優秀だった。


しかし、初めてその力に対して確信を持てない程の敵と遭遇した彼女は、元から持つ魔物へのトラウマを再発しかけていた。



(不味いわね。)



腕の中で震える彼女に気付いたミナは事の重大さに頭を悩ませる。


ベルアとの戦いの時、目の前の事すら分からない程に錯乱していた彼女を知っている身としては、再びあの状態に陥ることは避けなければならない。



「何処かで自信を持たせないと。」



ワザと口に出すことでそう決意したミナは、リィヤを木の後ろへと下ろすと、素早くその場から離れてハルコンの前にわざとその姿を見せた。



「どうした、オレを破壊するんじゃなかったのか?」


「すぐにでも破壊してやるわよ。」



木の後ろに隠したリィヤに意識を向けさせない為に、わざと挑発したミナは、トウヤへと目配せをする。


ミナの視線に気づいたトウヤは、両手と両肩の上に火球を発生させてハルコンへと放つ。


合計4つのフレア・ボムは、全てハルコンの体へと命中すると同時に大爆発を起こす。


しかし、爆煙の中から無傷のハルコンがトウヤの方を見ながら立ち尽くしていた。


その姿からは余裕が見て取れる。



「無駄なことを。」


「くそ……!」



トウヤは再びそれぞれの体の部位に魔力を集中させ始め、手を前に出すとその魔力を消費して魔法を放つ。



「パワー・ブースト!」



トウヤの放った付与魔法、パワー・ブーストはミナの体を赤く点滅させる。


付与された者の力を1.5倍程強化するこの魔法を身にまとったミナは、再びハルコンに対して突撃する。


ミナは背中のバトルアックスを構えると同時に、自身の数少ない魔力を消費すると、彼女が使える唯一の魔法を放った。



「炎属性中位付与魔法、フレイム・オーラ!」



バトルアックスに炎が纏い、彼女の本気の状態となる。

それを見たトウヤも同時に魔力を消費して魔法を準備する。



「重力属性中位魔法、グラビティ・ホール!!」



ハルコンに向けて放たれた魔法はその周辺の重力を数倍に増し、敵の動きが重くなる。


元から相当な重量を持つであろうハルコンにとっては、相当効果を発揮するようだ。


そしてミナは空高く跳び上がると、炎を纏ったバトルアックスを頭上で回転させ、落下と同時にそれを全力で振り下ろした。



「なるほど。」



感嘆したような声色の言葉を発したハルコンの体に、グラビティ・ホールの効果範囲の力で更に強化されたバトルアックスが叩き込まれる。


しかし、ドロイドにやったように溶断しようと叩き込まれた攻撃だったが、ハルコンの体に刃が少しも通った様子がなかった。



「嘘でしょ!?」



パワー・ブースト、そしてトウヤのグラビティ・ホール。

更に炎を纏わせたバトルアックス。


その全てを載せた全力の攻撃すら、ハルコンの体に傷を付けることすら叶わない事実に、ミナは思わず驚愕が隠せない言葉を発してしまう。



「コレが限界か……三武家も大した事ないようだな。」



失望したハルコンは、ぶっきらぼうに拳を空中のミナへと振るう。


それに対して慌てたミナは、バトルアックスを素早く体の前に持っていき、ハルコンの拳をそれで受ける。



「ぐぅっ!?」



拳が命中すると同時に、刃の部分がひび割れ破壊されたバトルアックス。

しかし、それでも威力は完全には相殺できずに後方へと吹き飛んだミナは、巨木へと背中を激突させられる。


肺の空気が全て出るような衝撃を受けたミナは、まるでボールが跳ね返るように地面へとうつ伏せで叩きつけられた。



「ミナぁ!?」



その光景を見たタイフは全力でミナの元へと走り出し、地面に転がる彼女を抱き抱えると、その場から跳躍した。


ミナの倒れていた地点にすかさずハルコンの拳が叩き込まれ、未来眼(サーチ)でこの攻撃を予見していたタイフはほっと息を吐いた。



「ありがとうね……タイフさん。」


「ギリギリだったよ。」



弱々しく礼を言ったミナは、まだ動けないようで大人しくタイフに抱き抱えられたままである。


その手には刃を失い、柄だけになったバトルアックスの残骸が握られていた。


三武家の1人をこんな簡単に戦闘不能に陥らせる敵の存在に、タイフは嫌な予感を払拭出来ずにいた。



(あの2人が傷1つ負わせられない敵に対して、僕に何が出来る!?)



ハルコンの体の硬度は、タイフから見ても異常だった。


ミナを倒されたトウヤは、怒りを滲ませながら魔法を放っているが、それの全てがハルコンに命中しながらも全く効果を為していない。


アグニスの時にも似たような現象があったが、彼の場合はまだ腕や首を斬り落としたり出来ていた。


しかし、この敵に対してはそもそもそれすら出来ないのだ。



「タイフさん、私は良いわ……リィヤちゃんを!」


「あ、分かった!」



思考していたタイフは、ミナの言葉で強制的に意識を現実に戻してなるべく遠くに彼女を降ろし、再び走り出してリィヤのいる場所へと向かった。





タイフがミナの言葉を聞いて行動していた頃、トウヤはハルコンからの攻撃を避けながら様々な魔法を放ち続けていた。


フレア・ボムは勿論、岩属性の魔法や雷、風の魔法すら試した。


しかしハルコンの体には一切効果が無く、トウヤはかなり苦しい戦いを強いられていた。



「どうしたマギス、貴様は魔法においてほかの追従を許さぬ存在だろう?」



ハルコンからの挑発とも取れる発言を、トウヤは舌打ちをしながら聞き流す。



(どうなってる、いくらゴーレムとはいえここまでの強度を持つ個体なんて相当な実力者で無いと無理だぞ……ゴーレム魔法が苦手な俺様では間違いなく作れない!)



トウヤが今迄にゴーレム魔法を使わなかった理由は簡単である。

嘘偽りなく苦手なのだ。


人間相手であれば簡単に勝てるほどの個体は作れるが、魔物に対しては少し心許ない。


しかし、このハルコンと名乗るゴーレムの完成度は相当なものだった。


前から突き出された拳を、トウヤはその場から横に跳んで避け、すかさずハルコンの顔にフレア・ボムを数発叩き込み、大爆発を起こす。


最早それで破壊できるとは思っておらず、どちらかと言うと爆煙による視界の妨害をメインにしていた。



「ボルテック・キャノン!!」



ハルコンの体に向け、右手から放った上位魔法の巨大な電撃玉は見事に敵に命中する。


しかしやはりと言うべきか、雷と同時に大砲クラスの威力を持つこの魔法でも、ハルコンに対してなんの効果もなかった。



「くそ!!」



トウヤがその言葉を吐き捨てると同時に、再びこちらへと突撃してくるハルコンを見たトウヤは、慌てて2つの魔法を発動させる。


ミナのサポートの為にも放った重力魔法、グラビティ・ホールである。


ハルコンの周りに二重に展開された重力フィールドは、見事にハルコンの彼をその場に押し留める。



「煩わしいな!」


「はっはっは、せめて止まってくれなきゃ俺様が困っちまう。」



トウヤはそう言いながらも、魔法を使用して魔力がない体の箇所へと魔力を再び集中させる。


トウヤの魔力集中箇所は6箇所に及ぶが、現状では集中箇所数自体は、そこまで優位になる要因となっていない。


そもそもダメージが無いのだから。



(さて、どうするか。)



重力フィールド内でゆっくりとではあるが少しずつ前に進むハルコンを油断なく睨みつけながら、トウヤはこの敵に対してどうやって戦うか思考を巡らせ続ける。


この時点で既にトウヤは相当数の魔法を試していたが、どれも徒労に終わっていた。



(俺様の魔法がどれも通用しない、このままでは……!)



自身の自慢であり、誇りでもある魔法が役に立たない状況に対し、彼は無力感を感じてしまっていた。


前衛となるミナは先程に戦闘不能に近い状態となってしまった。

彼女へ視線を向けると、一応まだ戦意はあるようだがフラフラしており、とてもじゃないが本気ではまだ戦えないだろう。



(本当に不味いな、敵の体は無傷なのにこっちはどんどん消耗していく。)



トウヤの心の中に焦燥感が溢れ、何とかしてこの状況を打開する方法を考えるが、何も思い浮かばずにいる。


アグニスの時のように先入観で戦っている訳でも無く、むしろゴーレムに至ってはトウヤは知識が深い。


しかし、だからこそ敵への対処が思い浮かばない。


何故ならば、ゴーレムの弱点は心臓の位置にある核……それしか無い事は彼が1番わかっているのだから。



(アイツなら傷を負わせられるんだろうけどな……ん?)



脳裏に真っ先に脱落した仲間、こういう敵相手に本領を発揮する男の顔を思い浮かべたその時だった。


トウヤの表情が一瞬何かを思い出したかのように変わる。



(そうだ……魔法で奴の体に強大な衝撃を与える手段が……まだアレを試してない!)



ニヤリと笑ったトウヤは、体の中の大量の魔力を操り始めた。


彼にとっても大量と感じられる程の量であり、コレを失敗したら今後の戦闘に支障をきたす。

そう確信できるほどの魔力を背中に向けて集め始める。


その様子から、先程までの魔法とはまた経路の違ったモノだと察したハルコンは歩みを止めた。


驚いて足を止めたというより、何かを期待するかのような様子ではあったが。



(試すつもりか、癪に障るね。)



内心ではそう思いながらも、敵が止まってくれたことに対してはチャンスとも感じたトウヤ。


その甲斐もあってか、問題無く必要な魔力量を背中へと集め終わると、それを消費して魔法の準備を開始した。



(魔法での攻撃は無力、だけど……あの魔法ならば!)



トウヤは膨大な魔力の変換が終わった事を察すると、大声でその魔法の名前を詠唱した。



「スティール・ウィング!!」



その魔法は、マギスオリジナルであり、マギスの後継者にしか伝えられないもの。


背中に鋼鉄の翼を生やす、最上位の付与魔法。



「なにっ!?」



トウヤの背中から巨大な翼が生えたのを見たハルコンは、思わず声を漏らす。


流石の彼でも本気で驚いたようであった。



「鋼鉄の翼……これならばお前相手にも通用するかもしれない!」



ミナのメイス、そしてバトルアックスでは力不足だった。

あくまで人間が使える程度の重量の鋼鉄の武器だからこそ、もしかしたら威力が足りなかったのでは。


そう考えたトウヤは、この魔法に全てを賭けた。


空を飛べるほどの質量を持つこの鋼鉄の翼であれば、と。



「パワー・ブースト、クイックベール!」



トウヤは自分に対して2つの魔法を掛け、高速で空へと飛び立ち、ハルコンの上へと移動する。


自身の力を増す魔法と、速度を上げる魔法を同時に掛けたトウヤの体は、赤と青の点滅を繰り返す。


しかしトウヤは再び魔力を消費すると、今度は自分の翼……スティール・ウィングへと魔法を掛ける。



「グラビティ・ホール!!」



翼へと掛けられた重力魔法の影響で、トウヤの高度はどんどん下がっていく。


それもそのはずだ、翼にそんな魔法を掛けたのだから上手く飛べるはずもない。


トウヤの高度はどんどん下に向かい、そしてタイミングを図って重い翼を空中で無理矢理上へと振り上げる。



「まさか。」


「今頃気付いても遅い!!」



トウヤはハルコンを攻撃の間合いに捉えると、重力が増した翼を躊躇なく振り下ろす。


ハルコンは重い腕を何とか振り上げ、自身の顔の前へと手を出す。


それと同時に、ハルコンの右腕とトウヤの右側のスティール・ウィングがぶつかり合う。


それと同時に、高い金属音と共に辺りへと衝撃が広がり、地面も大きく振動した。


そして、ハルコンの腕に巨大なひび割れが発生する。



「おぉ!?」



流石に驚いたハルコンは、全力でトウヤを振り払う。


しかし、それを行った事によりトドメをさしたようで、彼の右腕は見事に崩れ落ちる。



「よし……ってうお!?」



翼の片側だけが重い不安定な状態だったトウヤは、地面へと激突すると後ろへと転がる。


それが受身となり、僅かな衝撃で済んだトウヤはほっと息を漏らした。



「まさか……魔術師にこの腕を破壊されるとはな。」



ハルコンはまるで驚いたように右腕を見つめており、どことなく喜んでいるようにも見えてしまう程、発した言葉は弾んでいた。


しかし、それは逆にトウヤの額に冷や汗を流す結果となる。



(腕を破壊された反応じゃない……一体なぜだ!?)



トウヤは内心で生まれた疑問に、何故か嫌な予感が湧き出る。


じっと自分の腕を眺めていたハルコンも、腕から視線を外すと

トウヤを真っ直ぐ見つめた。



「素晴らしい……成程、アグニスが倒される訳だ……コレが三武家、先程の言葉は撤回しよう。」



ハルコンはそう言うと、破壊され半分の長さになった腕を上へと高く挙げる。



「次は油断しない。」



その言葉を聞いたトウヤは、表情をどんどん青ざめさせる。


いや、正確には言葉を聞いたからでは無い。


今まさに()()()()()()()()()()()()()()()()表情を変えたのだ。


砕け落ちた右腕の欠片が何故か浮かび上がると、その欠片はハルコンの残った腕にまとわりつき始める。

そしてまとわりついた欠片はどんどん凝固していった。



(嘘だろ……まさか!?)



トウヤは目の前の光景を信じたくは無かったが、その期待は裏切られる事となる。



「何を驚いている、オレはそもそも人間形態をとる時は1()()()()()()()()()()()()、驚くようなことでは無かろう?」



ハルコンの破損した右腕は、一瞬のうちに()()()()()()()()()()()()



「便利だろ、誰がオレを作ったのかはわからんが……とても気に入っているよ。」



トウヤは絶望する。


いや、トウヤだけでは無い。


まだ地面に膝をついているミナ、足を止めてしまったタイフに、彼に抱きかかえられたリィヤ。


全員が目の前で起きた事を信じたくないかのように唖然としている。



「さぁ、仕切り直しだ。」



ハルコンはどことなく笑うかのような声色でそう言うと、無理矢理重力範囲から外に出る。



「マギス、貴様が1番危険かもしれん……先ずは貴様からだ。」



ハルコンはトウヤ目掛けて走り出す。

完全に標的を彼に決めたようで迷うことなく高速で近付いてくるのを確認したトウヤは、何とか対策しようと魔力を集め始めた。


しかし、ハルコンの足は早い。



「に……兄様が!!」


「大変!」



ミナはふらつく足を無理矢理動かしてトウヤの元へ走る。


しかし、とても間に合いそうもない。



(くそ……スティール・ウィングのせいで残り魔力が……かくなる上は!)



トウヤは、一抹の希望を持ってスティール・ウィングで身を守る。


絶対守れる自信はない、しかしコレが彼に出来る最高の対策だった。



「オレの拳を……鋼鉄如きで守るつもりか……笑止!!」



ハルコンはトウヤまであと数歩の所で拳を後ろに振りかぶる。


突撃の速度が乗った全力の拳。


流石のスティール・ウィングでも耐えられない事を悟ったトウヤは、死を覚悟した。



トウヤの視界の外でミナの表情がみるみる変わる。

信じられないものを見たかのような彼女の視線。




()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




そして、今まさにトウヤに襲いかかっていたハルコンの拳は、間に割って入った何者かに止められる。


それは素手であり、腕を掴むかのように受け止められた。



「不思議ね……本当なら、私の治療を無駄にする気?って怒るべきなんだろうけど。」



ミナはハルコンとトウヤの間に割り込んだ男の姿をしっかり捉えてそんな事を言い始める。



「よく来てくれたわ……としか言えないわ!!」



そう、ハルコンの拳を止めた男。


それはナムだった。



「来て……良かったぜっ!!」


「な……なにぃっ!?」



ハルコンは本気で驚いたように、体を揺さぶる。


しかし、彼の体は後退も前進も出来なかった。


右腕をがっちり固められたハルコンは、ナムの力で完全に動けなくなっていたからだ。



「仲間が世話になったみてぇだなぁ!!」



慌てふためくハルコンの体へ、ナムの全力の蹴りが炸裂する。


ひび割れどころかクレーターのように一部が粉砕されたハルコンは、慌てて右腕を切り離してナムから離れる。


それを見て驚いたナムは咄嗟にそれを離すと、彼の腕からハルコンの右腕がひとりでに離れてハルコンの右腕へと装着される。



「け……蹴りで……オレの体を……!?」


「てめぇ、相当硬ぇな……完全に蹴り砕くつもりだったってのに表面が砕けただけかよ。」



抉れるように粉砕されたハルコンの体は、すかさず修復されていく。


ナムも体に出来た巨大な刀傷の様子を確認し始め、大きく頷いた。



「なるほどな……てめぇは俺じゃなきゃ無理そうだ……全員まだ動けるか!?」


「ええ……ちょっと手痛くやられたけどね。」


「まだ少しなら魔法を打てるよ!」



無言で頷くタイフとリィヤへと視線を向けたナムは、ニヤリと笑うと拳を構えた。


しかしやはり彼も、普段よりも体幹が安定していない。


相当出血したのだから当然のことであった。



「俺もいつまで持つかわからねぇ……だがコレで仕切り直しだな!」


「ブロウ……かっ!!」



村から全速で走ってきたナムを警戒するハルコンは、先程には無かった緊張感のようなものを纏い始め、ナムの仲間達も急いでナムの近くへと集まった。


ナムが来たことにより、仲間達の表情もどことなく明るい。


ナムは油断なくハルコンに向けて拳を構えると、人差し指をわざと数度折り曲げる。



「別に俺が名乗り始めた訳じゃねぇが、敢えて使ってやるよ……世間でブレイカーと呼ばれた俺の力……てめぇに見せてやるよ。」

ハルコンにとって一番危険な人物が、ミナ達にようやく合流出来ました。

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