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ブレイカー  作者: フィール
序章
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序章:最後の三武家

町の外にある屋敷に突如襲撃してきた魔物の集団。

それに今にも命を奪われようとしていた屋敷のボディガードを間一髪で救ったナムとミナは、今も尚所々から出火している屋敷の玄関の前に居た。

流石に扉は壊されていて、侵入者を防ぐ役目は果たせそうにない。

まぁ……扉では魔物は防げないだろうが。



「行くわよ、ナム。」

「俺は2階に行く、ミナは1階を頼む。」

「分かった、殲滅が終わったら合流するわ。」



そう言ってミナは鞘に収めたままの剣の柄に手を掛け、屋敷の玄関から中に入ると、右側にあった扉の1つへ入って行った。

ナムも屋敷に入ると、目の前にある大きな階段をかけ登って行く。


とりあえず階段の前の目立つ両開きの扉を蹴り開けると、部屋の中にノーマルであろう魔物が2匹存在した。


人の頭位の大きさの火の玉型の魔物だ。

名は<ファイボ>だ、屋敷を燃やしたのは恐らくこいつらの仕業だろう。


ナムは実家の三武家の<ブロウ>の方針で、格闘で戦う上で注意しなければならない魔物を知る必要があるため、自堕落な性格の割には魔物への知識はしっかり叩き込まれていた。


更に依頼で魔物を倒す機会も多く、自然と魔物の種類に詳しくなっていた。

そこまで依頼を受けず、ひたすら修練に明け暮れるミナには無い強みである。



「ファイボが居るとはな、ガントレットを装着しといて良かったぜ。」



ナムの両手には、手首まで覆う装甲の付いたガントレットが装着されていた。

関節の装甲の隙間は普通のものより大きく、指の動きを阻害しない特殊品だ。

そして特殊なのはそこだけでは無い。


突如現れた人間に気付いたファイボは、玉の部分から直線型の火炎放射を放つ。


ファイボはノーマルであり、火炎の強さは精々火傷を負う程度の威力であったが、5年前から始まっている魔物の超強化の影響を受け、人間なら一瞬で黒焦げにしてしまう程の威力に上がっていた。


その火炎放射をナムは僅かな動きで右に避け、ファイボに近付く。

そして右手の拳を最短距離でファイボの玉の部分へ叩き込み、その場で右回転し、裏拳をもう1匹のファイボへ叩き込む。

2匹のファイボは粉砕され、絶命した。


ナムの手に装着されているガントレットは、魔法等の実体を持たないものへ干渉できるような強化魔法を付与された特殊品だ。

その付与だけではあまり戦力の強化には繋がらないが、人間最強の三武家の修行中であるとは言え、跡取りであるナムの装備に付与すれば無敵の防具へと変貌する。

魔法を放たれても拳で弾ける上に、ファイボのような実体の無い存在も拳で粉砕出来るのだ。


三武家の<ブロウ>の家系に生まれる人間には魔力が無い、つまり魔法は一切使えないのだ。

実はナムは例外だったりするのだが。

人体にとっての何かの欠陥だと思われるが、魔力を持たない分身体能力の伸びが異常に発達していた。



「この部屋はこれで終わりか、あそこに扉があるな。」



ファイボ2匹をあっさり倒したナムは、疲れを見せずに次の扉に近付いて開け放つ。


途端にナムの目の前に飛びかかる魔物。

外にも居た狼型のノーマル<ウルブ>である。



「うお、待ち伏せか?」



ナムは拳を構え放とうとしたが、その動きは途中で止められた。

ナムの目の前でウルブの口から青白い透明な剣のようなものが飛び出し、ウルブが絶命したからだ。



「なんで入って来た!!危ないだろ!!俺様に任せろって……あ?」



ナムの目の前に現れた男は、彼の右腕から伸びている青白い透明な剣に貫かれたウルブを振るって投げ捨てると、入ってきた男がボディガードでは無いことを確認して言葉が止まる。

ナムもその男に見覚えがあるような気がして、しばし動きが止まる。


その男は豪華な私服で身を包み、髪はオールバック、年齢はナムとそう変わらない20歳前後に見えた。

右手の肘の先から青白く透明で50cm程の剣があること以外はまさに金持ちの坊ちゃんという見た目だ



「ナムじゃないか!かなり久しぶりだな!」

「……もしかしてトウヤ坊ちゃんか?」

「おいおい!俺様の顔忘れたのか!?相変わらずだな!ほら!お前のガントレットを昔作ってやったじゃないか!子供の頃!」



ナムは自身のガントレットを眺める。



「あぁ……トウヤ、なるほど<マギス>の!!道理で聞いたことあると思った!」



人間最強の<三武家>、その中の1つの魔法戦闘術の権威<マギス>の跡取り、それがこの屋敷の主、トウヤだった。


マギスは世に存在する魔法を全て習得しているらしく、魔術師としては人間最上位。

しかもそれだけでなく、今ウルブを強化魔法の<魔法剣>を使用して絶命させた事から分かるが、実は近接戦闘もこなせるのだ。


流石に全ての武器を達人以上に扱える<アーツ>のミナ程の技術はなく、<ブロウ>のナムほどの格闘の相手にも通用はしないが、その辺にいる剣士相手には引けを取らない程の実力は持っている。

修業中のトウヤですらこれなのだから、現当主の実力は推して図るべきであろう。



「ナムは変わらないなぁ……昔から、こういうヤバイ状況にはすぐ駆けつけるくせに、普段はダルそうでやる気が見受けられないところとか。」


「俺たち<三武家>が全部解決してたら町のためにならねぇんだよ、ドラゴンとかビースト、ヒューマンなんかが現れたら仕方ねぇけどな。」



ノーマルより数倍強いビースト。

そしてそのビーストすらも歯が立たない程強く、見た目も人間にしか見えないヒューマン。

ノーマルでありながら個体によってはヒューマンとも互角に渡り合うドラゴンなどは人間にとって天災クラスの驚異だ。

昔ならいざ知らず、今の原因不明の現象により強化された上記の魔物には現状<三武家>位しか太刀打ちができていない。


後は軍がもつ強力な魔物用の兵器くらいだ、それも少なくない被害を出してようやく討伐できる。



「そういや、ビーストが三匹侵入したらしいじゃねぇか、今どこに?」

「1匹は俺様が倒した、後の2匹もそんなには遠くない位置に……ナム!後ろだ!!」



トウヤの言葉で首だけで振り返ると、部屋の入り口から2匹のビーストがナムめがけて襲いかかる。

同時に繰り出された拳をナムは背を向けたまま同時に軽く掴むと、勢いそのままにトウヤに当たらないよう前の地面に全力で叩きつける。


ナムが修練しているアイキドーといわれる武術だ。

本来は力なき者が相手の力を利用してカウンターをする一般人向けの護身武術だが、人外の怪力であるナムが使用するとカウンターだけで敵の命を奪える強力な武術となる。


<三武家>の<ブロウ>の一番目につきやすい特徴はその人外の怪力だが、1番恐ろしいのは全世界の格闘術を師範以上に修める、その異常な武術の熟練度である。

そこに怪力が加わり結果的にそこしか目立たないだけなのだ。


地面に叩きつけられた2匹のビーストは痛みに耐えるような挙動で急ぎ体勢を立て直すと、トウヤとナムから1番離れた位置へ跳躍した。


身長は約3m、ガタイの良いブリキ人形のような体にピエロのような顔。

ビーストの<クラウン>である。


道化師のような非常に読みにくい格闘術を使用する、ビーストの中では中位くらいの強敵である。

相手がこの二人でなければ。



「クラウンか……お前が倒した1匹もコイツか?」

「あぁ、俺様が倒したのも同じ個体だ。」

「なら問題はねぇな、1匹任せるぜ。」

「了解だ、ナム。」



2人はそれぞれの個体へ近付く。

クラウンも先ほどのナムのカウンターにより手痛い反撃を受けているせいか、まるで芸をするような動きをしつつも、2人を警戒しているように見える。


燃えた家具の1つが音を立てて崩れる、それを口火にそれぞれの戦闘が開始されたのだった。

三武家集合です

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