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ブレイカー  作者: フィール
序章
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序章:魔物の襲撃

銀行強盗事件をあっさり解決し、報酬を受け取って帰ろうとしたナムは。

彼の自宅の玄関先で待っていた人間最強の<三武家>、武器戦闘術の権威<アーツ>の跡取り娘であるミナから



「最近町外に越してきた金持ちの一家の屋敷が魔物に襲われている」



と、緊急性の高い要件を聞かされたのだった。



「おいおい……なんでまた町の外なんだよ、中だったら町の周りに防護壁があるだろうに。」

「それはそうでしょうね……だってあの家は……いえ、そんな事より早く行きましょ!こうしてる今も襲われてるんだから!」

「待て待て、せめて着替えさせろ。」



ミナは今気づいたかのようにナムの寝巻き姿を上から下まで驚愕の顔で流し見る。

そして彼の自堕落な性格を思い出し、勢いよく自身の右人差し指を玄関へ向ける。



「さっさと着替える!」

「待ってろ。」



ナムはすぐに家に入り、クローゼットを開く。

中には戦闘用の衣装が収納されていた。



「たく……優雅なお昼寝タイムが。」



ナムは今まで着ていた長袖の寝巻きをすぐさま脱ぎ去る。


寝巻きの袖で隠れていた右手首に30mm幅の銀色の金属鉄板をそのまま腕に沿って曲げたような形状。

中心に緑色の石の装飾が一個だけ埋め込まれたデザインのブレスレットが3つ装着されていた。

留め具を外し、蝶番で一部分が開いて腕に着脱する仕組みだ。



そしておもむろに彼は自身の右腕のブレスレットを見る。



「ノーマルが組織で襲うなんて基本ありえない、おそらくビーストが居る……久しぶりに外す時が来たかもな。」



ノーマルの魔物は数が多く強い、武装した大人3人でようやく1匹倒せるレベルだ。

しかしナムにとってはたとえノーマルが束でかかってきても相手にはならない、しかしビーストは流石にそんな簡単にはいかない。

負けることはないが、かなり強く面倒なのだ。


そんなことを思考していると、玄関の外からミナの急かす気配を感じたので着替えを続行するナム。

彼女の投げるナイフはこの家のボロい扉ならあっさり貫通してナムの後頭部に飛んでくるだろう。

避けたり受け止めるのは楽だが家を壊されるのも癪なナムは黙々と戦闘衣装を装着していく。


ミナの軽装鎧と比べると保護されている箇所が多い所謂プレートアーマーだが、関節部は普通のものより広く隙間があり、彼の格闘術に一切干渉しないようなオーダーメイドの作りとなっている。

ブレスレットを装着している右肘より先にはアーマーがそもそも無く、兜に相当するものも存在しない。

鎧の隙間の幅が広いということはより狙いやすいという事だが、彼はそんなものは自身の動きでカバー出来ると踏んでの作りだった。



「準備完了!!」



両手に装着された、手首から先の範囲のこれまた関節の隙間が広いガントレットの動きを確認するナム。


玄関から外に出ると同時に振り下ろされた反りのついた片刃の剣を右手の人差し指と中指で挟むように白羽取りをする。

出会い頭に投げられたナイフなんて目じゃない速度と威力だった。



「腕は落ちていないようね。」


「あたりまえだ、つか振り下ろすな!!」

「背中を任せる相手なんだから怠けて弱くなってないか確認するのが基本よ、というか早く放しなさい、取れないじゃない!この馬鹿力!」



指先で白羽取りしているのにミナの力でもびくともしない剣をナムが放すと、ミナはすぐさま剣を鞘に入れた。



「付いて来て、どうせ場所も知らないでしょ?」

「おうよ!」

「……まぁいいわ、こっちよ!」



2人は事件現場へ急行した。




町の外の平原の一区画に、かなりの規模の屋敷が存在していた。

豪華な装飾、花が咲き誇る大きな庭、屋敷がまるで1つの作品のような見た目だ。


魔物に襲われてあちこちから出火していなければ……だが。


屋敷に務めるボデーガードの1人が、慌ただしそうに魔物用の大口径のライフルを何度も発砲している。



「クソ……クソ!!坊ちゃんをお守りしなければ!!」



突如襲ってきたノーマル30匹の大群、そこにビーストが3匹も混ざっていたのが運の尽きだった。

一緒に戦っていた10人ほどいた同僚も4人が重傷、命を落としたのが2人、無傷なのが屋敷外は自分1人と屋敷内で戦っている3人だけの絶望的な状況だった。



「我らでなんとかするのだ、誇りにかけて!!!」



屋敷内に既にビースト3匹が入り込んでしまっている。

これ以上侵入させまいと中の3人を信頼し、外で1人食い止めているボディーガードの男。

魔物を負傷させたり、運がよければ絶命させたりして奇跡的に奮闘していた。


外にいる魔物はノーマル10匹ほど。

狼型の魔物が2匹、目玉に手足が生えたかのような見た目の魔物が5匹、所謂ゴブリンのような子供サイズの人型の魔物が3匹。


屋敷内に最初の戦闘で数匹入り込まれている上にまだこの数が残っている。

食い止めてはいるが、弾の数的にもそろそろ瓦解する寸前だった。



「明らかにここ5年くらいで魔物の強さが異常に強くなってる!!ノーマル相手でここまで苦戦するなんてあり得なかったのに!!クソ!!」



悪態をつきながらも弾切れを起こした銃を放る。

そしてすぐ近くで、1匹だけ混ざっていた遠距離攻撃を持つハリネズミ型のノーマルの攻撃で不運にも命を落とした同僚の手に握られているライフルを奪い取る。

そして再度狙いを付けようと敵の方角を見た時、3m程先の距離にオオカミ型が接近していた。



「しまっ……!?」



今からでは狙って撃つほどの時間は取れない。

せめて動きの遅い目玉辺りが来ていたのならまだ何とかなったが、動きの早いオオカミ型ではそうもいかない。


死を覚悟したボディガードの首筋に噛み付こうと跳躍した狼型のノーマル。


その時、遠くから何か銀色の棒のようなものが狼型の首に突き刺さり、横に弾かれるように悲鳴を上げながら地面へと落ちる。

ボディガードは何事かと放たれた方向を見ると、2人の男女が立っていた。


女性の方が更に棒のようなものを投擲すると、近付いて居たもう1匹の狼型の首に命中させ、絶命させる。


男の方はその場から目にも止まらぬ速度で駆け出し、一瞬の内に5匹居た目玉のノーマルを片っ端から自らの拳で打ち抜いていく。

殴られた目玉のノーマルはその全てが体を粉砕され、絶命していった。


そして女性も腰から1本の片刃の剣を抜くと、急に仲間が倒れて慌てるゴブリン型の魔物へ最短距離で跳躍すると、瞬く間に3匹の首を一閃で跳ねる。


男は腕に付いた血を気にすることも無く、女性の方は目にも止まらぬ速度で血振るいをすると鞘に剣を収め、こちらに近付いて来る。



「すまねぇ、遅くなっちまったな。」

「あんたが昼まで寝巻きのままだったからよ!!……大丈夫?」



筋骨隆々で180近くある身長を持つ男と、剣をあの速度で振れるとは思えない細腕だが、よく見ると筋張ってガッチリしている美人な女性。


ボディガードは確信していた、この2人こそが坊ちゃんのよく仰っている三武家の<ブロウ>と<アーツ>の跡取り達だと。

そして咄嗟に、自らも驚く位すぐに言葉が出ていた。



「お願いします!!トウヤ坊ちゃんを助けてください!中にビーストが3匹も!!」



「「りょーかい」」



男は何故か少し何かを考えるような表情で、女性は惹かれるような満面の笑みで、その返答をした。


そして、燃え盛る屋敷の玄関へと向かっていった2人から言葉が漏れ聞こえてきた。



「トウヤ?なーんか聞いたことあるような?」

「会えばわかるわよ。」



とても魔物の襲撃中とは思えない会話で、ボディガードは心強さと若干の不安を覚えながら、体と精神の疲労でその場に倒れ込み意識を失ってしまう。


彼は運良く助かったのであった。


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