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ブレイカー  作者: フィール
1章
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1章完:暗躍……そして新たな仲間

ナム達が病院に運び込まれての治療が終わり、昏睡状態だったその時。


町の外のどこかの場所を、ベルアはヨロヨロと歩いていた。



(ギリギリでした……本当に死ぬかと思いましたよ。)



ベルアの体は、僅か2日で()()()()()()()()()()()()()


折れた両腕や、ナムの拳で受けた内臓へのダメージはまだ大部分が残っており、時々血を吐きながらも歩き続ける。



(ブロウ1人であの強さ……アーツとマギスの2人が全快だったら死んでいましたねぇ、雑魚だと思っていた名を知らぬ男もあのスノーマンを倒せるほどの手練とは……そういう意味ではあの3匹には感謝ですね。)



役立たずと罵ったビースト3匹への評価を多少良くしたベルアは、黙々と歩き続け、とある場所へとたどり着く。



ベルアの目の前にあるものは、そこまで大きくもない、ごく普通の洞窟だった。


ベルアは躊躇なくその洞窟へ入る。


中は暗いが、ベルアは不思議なことに一切つまづいたり壁にぶつかったりなどせずに迷いなく奥へ進んでいく。



そして、洞窟の最深部にたどり着き、行き止まりとなっている岩壁の一部分を蓋のように開けると、そこにあるスイッチを肩で押した。


途端に岩壁が扉のように開き、まるで暗い洞窟を照らすように明かりが点灯する人工の建物の内部のような光景が目の前に広がる。



「1年ぶりですねぇ。」



ベルアはそう呟くと、人工の建物内部へ入り、内部のスイッチを再び肩で押して扉を閉めて奥へと進んでいく。



「彼等は元気でしょうか。」



独り言を呟きながら奥に進むベルア。


その建物内部には僅かな生活空間や研究施設などが通路にある窓から見えた。


特にその施設内部には人影等は見えない。


しかし、更に進み奥にもう1つあった研究施設に1人の人影を確認する。



「相変わらずですねぇ。」



ベルアはその研究施設の扉を開くと、中にいた人影が驚き、ベルアの姿を確認すると、慌てて近付いてくる。



「ベルア様!!お早いお戻りで!」


「三武家に見つかりましてねぇ、ドルブの町壊滅は失敗しました、失態です。」


「三武家……!!よくご無事で。」



ベルアと会話している者は、研究施設には一切似合わない教会の神父服を着込んだ、()()()()()()()()()()()()だった。



「<ジカル>、魔物強化の研究はどうですか?」


「はっ……すみません、まだ解析が上手くいかず。」



ジカルと呼ばれた男は申し訳なさそうに教会の帽子を外して一礼する。



「仕方ありません、引き続き頼みます、他の3人は?」


「こちらです、お供致します。」



ジカルはベルアの前へ進み、2人揃って研究施設から出ると、通路を通って更に奥へと進む。



「それにしても、酷い怪我ですね。」



ジカルは歩きながらベルアの身体を確認し、驚いた表情に変わる。



「手痛くやられましてね、やはり奴らは危険です。」


「でしょうね。」



ベルアをここまで痛めつけた相手を、ジカル内心で賞賛しながらも、通路の奥地へとたどり着く。



ジカルは通路の最奥の扉に手を付くと、特に鍵などは無いようですんなりと開いた扉を抑え、ベルアを迎え入れた。



勧められて中へ入ったベルアの前に現れたのは、1.7m程の顔の造形の良い人間の姿の男。


4m程の全身が宝石のように輝く屈強な人型ゴーレム。


1.6mの頭が火炎のような形のデザインをし、プレートメイルを全身に着込んだ人型の魔物がいた。



「ベルア様じゃねぇかぁ!!おひさしゅう!!」



頭が火炎型の魔物はベルアを見ると、大きく笑いながら歓迎する、その頭からは大きく燃え盛る炎が飛び出している。



「<アグニス>!不敬だぞ!!これはこれはベルア様。」


「構いません、<ハルコン>……貴方も変わりありませんね。」


「はっ、光栄であります。」



ハルコンと呼ばれた全身が宝石のように輝く人型のゴーレムは深々とお辞儀をする。



「それにしても随分な怪我じゃないですか、貴方程の方が。」



この中で唯一人間と変わりない姿をした顔の造形の良い男がそんな事を言う。


その肩には3mを超す長さを持つ巨大なグレートソードが担がれている。

頭以外にこの者も鎧を着込んでおり、人間の力自慢の戦士のような見た目をしている。



「<ビレイド>、貴方も元気そうですね。」


「そりゃもちろん!」



ビレイドと呼ばれた男は自身の胸の甲冑の部分を篭手で叩くと、金属の音が鳴り響く。



そして、ジカルも含めた4人は、ベルアの前に集まり、片膝をついて平伏した。



「四天王No.4<極魔>のジカル。」


「四天王No.3<業火>のアグニス。」


「四天王No.2<城塞>のハルコン。」


「四天王No.1<獄犬>のビレイド」


「「「「ベルア様近衛兵、ヒューマン四天王、健在です。」」」」



ベルアはそれを見て拍手をしながら笑顔を浮かべると、辺りを見回し始める。



「あの3人は?」


「3人?……あぁ!あの3馬鹿なら部屋で寝てますよ。」


「そうですか、後で会いに行きましょうかね。」



ベルアはそう言って、奥に存在する椅子へと腰掛ける。



「少し休みます、貴方達は通常通り、ここの防衛と研究の続きを頼みますよ。」


「お任せを。」



4人を代表して、ビレイドが応えると、全員が平伏をやめてそれぞれ行動を始める。



(覚えてなさい、我の()()()()()を使っていずれは三武家である貴方達を滅ぼして差し上げましょう。)



そう内心で決意したベルアは、今でも少しずつ修復していく体に身を任せて、少しだけ眠りについたのであった。





ベルアとの戦闘が終わってから約1ヶ月程経った時だった。

歩き回れるまで回復した4人は、退院し軍の用意した仮住まいに住むリィヤの部屋を尋ねた。



「治ったんですね!?、どうぞ中へ!」


「まだ辛うじて、だけどね、お邪魔するわよ。」



思ったより元気なリィヤの姿に安心したトウヤは安堵のため息を吐いて、リィヤの部屋のテーブル席へ座る。



「お茶を入れますね、紅茶しかありませんけど。」



リィヤはそう言って、拙い動きで紅茶を用意し始める。

この1ヶ月でなんとか自分1人で入れられるように練習したようだった。


そしてそれからしばらく経ってから、テーブルの上に置かれる人数分の紅茶を前に、5人は誰からともなく会話を開始した。



「うーーん、まだあんまりですね。」


「中々よく出来てると思うけどな、相変わらずの紅茶好きだな。」



トウヤは普通に美味しい紅茶を啜りながらリィヤとの久しぶりの会話を楽しんでいるようだ。



「1人になってしまったので、自分の力で生きていかないといけなくなりまして……少しずつですけど出来ることも増えたんです。」


「それはいい事じゃねぇか。」



そう言ったナムも肩肘を突きながらも普段の飲むことの無い紅茶を楽しんでいるようだ。


物心ついた時から孤児院暮らしで、そのままマギスの養子になったリィヤは基本的に自分で何かをやることは少なく、紅茶好きになったのもマギスの屋敷で初めて飲んでからである。


ボディーガード達の献身的なお世話で好きな紅茶を自分で入れたことのなかった彼女にとって、腕の上達は嬉しいものであった。


そうせざるを得なくなった状況のことを考えなければ、だが。



「……良い人達でした。」



リィヤは俯くと、顔を曇らせる。



「何も変わらない日々だったんです、あの日の内に読みかけの本を読んで、明日には皆さんに会おうと……それだけの日常でした、ベルアも普段と変わらない感じでした。」



4人はリィヤの発言に口を出せる訳もなく、静かに聞いている。



「わたくしが、ベルアの正体にもっと早く気付けていれば、ベルアが屋敷に来た時に、彼から聞いた増員の話をお父様に確認さえしていれば。」


「それは違う。」



リィヤの発言を否定したタイフに驚き、リィヤは目を向ける。



「僕も後悔した、けど過去は変えられないし、今回の件も早く気付いた所でリィヤの命、下手するとこの町の未来が危なかったかもしれない、僕達が来るまでベルアを潜ませ続けたからこその勝利だった可能性もある。」



タイフはそう言って、少しだけ動きを止めて、頭を掻き始めた。



「上手く言えないけど……過去を後悔するより、これからどうするか、じゃないのかな?多分。」



そんなタイフのしどろもどろな発言を聞いたナムは大きく笑った。



「自信無さげだなぁおい?」


「笑うなよ!?」



リィヤもその2人のやり取りを見て、暗い顔から少しだけ笑顔になる。



「タイフの言うことは間違いでもねぇし、正解でもねぇ、けど1つの考え方だと思うぜ。」



それを聞いたリィヤは、再び暗い表情に戻るが、すぐに顔を上げて4人を見る。



「わたくしには後悔をしないは無理です、ミリアちゃんの事も、屋敷のボディーガードさん達の事も忘れられません……けど。」



リィヤは笑顔に戻り、4人へ微笑みかける。



「これからは必ず大事な人はしっかり守る、タイフさんの話を聞いて、今そう決意しました。」



リィヤの発言に4人は頬を緩ませ、すぐに違和感を感じた。



「どういう意味かしら?」


「わたくしも同行します、貴方達に!」


「お、おいおい!!リィヤ!!俺様達についてきたら魔物……あっ!」



トウヤはしまったと言わんばかりに口を塞ぐ。


魔物へのトラウマを持つリィヤにその名は禁句なのである。



「魔物に関しては、確かにまだ怖いです、ミリアちゃんをわたくしから奪った憎い存在でもあります、ですが。」



リィヤは震える体を押さえ込み、笑顔のまま話し続ける。



「わたくしが魔物などに震えていたら、誰が皆さんを守るのですか?

今回も多くの迷惑をお掛けしました、恐怖に錯乱したわたくしを守りながら戦ったせいで兄様を危うく失うところでした、そんなのはもう嫌なのです。」



4人はリィヤの強い表情を見ると、どこか安心したように顔をほころばせる。



「わたくしも同行します、皆さんを守る盾として、危なくなったらわたくしの後ろに隠れてもらえるように努力致します!……体力も……増やします、そちらはゆっくりと。」



リィヤが突然自信の無い顔に変わったのを確認した4人は、吹き出して少しだけ笑う。



「わかったわ、よろしくねリィヤちゃん?」


「俺の拳を防げるほどの守りだ、十分やれるだろうよ、魔物が怖くなったら俺達が何とかする、安心しな。」


「身内としてかなーり心配だが、決意が固いみたいだし……こうなったらリィヤは折れないからな。」


「僕からもよろしく頼むよ、リィヤ。」



4人は1人ずつリィヤと握手をする。



「よろしくお願い致します、皆さんはわたくしが全力を掛けてお守り致します。」



そのリィヤの言葉を最後に、ナム達はこれからの方針の話し合いに会話をシフトする。


その中にリィヤもしっかり加わりながら方針を決めて行く5人。





(ベルア、わたくしは貴方を許しません。)



リィヤは彼らと方針を決めながら、内心で信頼していた男を思い浮かべる。



(わたくしの大好きなボディーガードさん達を皆殺しにした貴方を。)



そう心で決意した彼女は、表情をすこしだけ固くする。



(この人達と協力して、貴方を必ず倒す!)



突然表情を変えたリィヤから、何かしらの決意を感じた4人は、それに気付かない振りをして、会話を進める。



彼等の仲間に、強い決意を持ったリィヤが加わった瞬間だった。

新たな仲間、リィヤ加入です。


1章は仲間集めがメインの話でしたので、ここで完結となります。


次回からは2章開始です。

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