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ブレイカー  作者: フィール
3章
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3章:防衛戦、その後

トラルヨークでの戦いから、おおよそ1週間後。


ナム達が入院している病室。

そこには治療を受けるナム達5人の他に、数名の人間達が居た。



「アンタ達がそこまでやられたなんて。」



それを発したのは一人の女性。

背中の中心までの長い髪を後ろ側で1つで纏め、露出の高い服装でそのスタイルの良さを目立たせている。


以前、サールの町の事件に巻き込まれ、右手を失った女性であるアンナである。


彼女だけではない、彼女と仲の良い2人もその病室に集まっていた。


ナムのツヴァイであるラハムによって助け出された、髪は肩の上で短く切りそろえられ、サールの町の住人らしく派手な服装を身に纏うヨウコ。


ミナのツヴァイであるガルドに助け出された、足にまで届きそうな長い髪で片目を隠した上で、あの町の住人にしては地味な服装を身にまとったサリー。


ヨウコには傷らしきものは見受けられないが、サリーに至っては首元に痛々しい包帯が巻かれていた。



「まさか……あの黒い髑髏の彫刻が魔物だったなんて。」


「変な物はもう触らない。」



彼女達は意識を取り戻した後、トラルヨーク軍により経緯を知らされていた。


サールの町で流通していた、髑髏頭のチェスの駒のような形をした黒い彫刻の詳細をトラルヨーク軍から聞いた3人は、相当驚いていたらしい。


サールの町でいつも通りに3人で行動していた彼女達は、突如意識を何者かに奪われるような感覚に襲われた。

苦しみながらアンナは周りに助けを求めようと視線を向けた。


しかし、町の人達は皆同じように苦しんでおり、何が起きたかを考える前に、彼女達はそのまま意識を失った。

そして、意識を取り戻したら突如病院のベッドの上だ。


混乱するなという方が無理な話であろう。



「無事で良かったわよ……本当に驚いたんだから……それより。」



ミナは申し訳なさそうにサリーへと視線を向ける。

突然視線を向けられたサリーは首をかしげた。



「それ、あの馬鹿のせいでしょ? 申し訳ないわ。」



トラルヨーク軍の面々から感謝を受けたナム達は、彼らから他の門の防衛へと向かった、ラハムとガルドの戦いぶりも同時に聞いていた。


それぞれが偶然にも彼女達3人を1人ずつ助けだしたという話を聞いた後。

ミナの前に首元を負傷したサリーが現れた時には、流石に頭を抱えたものだ。



「大丈夫。」



サリーはとても口数が少なく、表情の変化もあまり無い。


それでも、怒ってる様子が無いのを確認したミナはほっと胸を撫で下ろす。



「ガルドの奴……もっと丁寧に助けることも出来ただろうによ。」



腕を組み、ナムはそう悪態をつく。

自身のツヴァイであるラハムは、ヨウコを無傷で助けられている。


ラハムには、元々女性に対してキザな面もあったというのもあるが、それでもガルドに出来ない理由はない。


しかし、ナム達には最早彼らに理由を問いただすことは出来ない。


あの戦いの後、ラハムとガルドはトラルヨーク軍にナム達への伝言を伝えた上で、町から去っていたからだ。


ナムが意識を取り戻した少し後くらいまで、彼らは町にいた。

しかし、急に用事が出来たと言って慌てるように町を去ったらしい。



「お2人はどこに向かったのでしょ……痛た。」


「ちょ、リィヤちゃんは寝ててよ!」



ベルアから受けた傷が完治しておらず、話すと同時に強い痛みを覚えたリィヤの声を聞いたアンナは、慌てて彼女の隣へと移動する。


そんな2人を見ながら、ナムはここ最近の記憶を探る。


ナム達3人が意識を取り戻してから、病室に現れたドウハとザベルにより、先程のツヴァイの件を聞いた。


それから約2日後にタイフが目を覚まし。


それから更にもう1日後に、ようやくリィヤは目を覚ました。


ツヴァイ2人の件はともかく、タイフが目を覚ました時には、流石のナムも珍しく笑顔を浮かべ。


リィヤが目を覚ました時のトウヤも喜びようは、普段からはあまり見られないものだった。

そして、そんなトウヤと同じくらいにリィヤが目を覚ました事で喜んだのが、このアンナだったのだ。



「ア、アンナさん……傷自体は少しずつ良くなってますから。」


「だめ! 今は喋らずに大人しくしてる! アンタ死にかけたんだからね!」



痛がるリィヤを近くで無理やり黙らせるアンナを、隣のベッドでの上で少し顔を曇らせながら見つめるタイフ。


そんな彼に気付いたトウヤは、何となく彼の心境を察するが、どうやって声を掛けるべきか悩んでいた。



「お前のせいじゃねぇ。」


「だけど。」



しかし、そんな空気を一瞬で蹴飛ばすように、ナムはタイフに声をかけていた。

細かいことを気にしない彼だからこそ出来るフォローなのかもしれない。

そうトウヤは内心で感心した。


タイフが目を覚ました時に、彼は周囲を呆然と眺めた。

そして、隣で目を覚まさないリィヤを見ると一瞬で顔を青ざめさせたのだ。


そして、それから既に目を覚ましていたナムとミナ、そしてトウヤへと目線を向けると、更に顔を曇らせたのだ。


それからというもの、彼の表情は冴えない。



「俺も考え無しで1人で突っ走って、呆気なく奴の罠にハマったんだ、ヤツが狡猾だっただけだぜ。」


「そう……なのかな。」



彼の中では、自分が真っ先に戦闘不能になってしまった上で、結果的に足を引っ張ってしまったことが心残りであるようだ。

そして、更にタイフにとってはあまり嬉しくない事象が起こっていた。


彼の武器である2本の圏。

その内の1つが戦闘時にベルアに弾かれた後に、あの部屋に残されてしまったようだった。

現在彼の武器は1つしか残っていない。


恐らく、ナム達5人のあまりの惨状の前に、トラルヨーク軍の人間達はそんな物に気を回せなかったのだろう。


圏2つによる投擲戦法、近接戦が彼の得意分野だったこともあり、かなりの戦力ダウンになっている。


それも彼の中にわだかまりとして燻ってしまっていた。



(僕は……この人達に付いてて良いんだろうか。)



ベルアと出会ってからというもの、かなりの高頻度でヒューマンとの戦闘が続いていた。

普通の人間であれば絶対に有り得ない程にだ。


ヒューマンは、その特殊な生まれの影響で全体的な総数はかなり少ない。

むしろ、普通であれば一生のうちに出会うことすらない人間だって少なくはない。


三武家ですら苦戦するような相手と何度も戦ったのだから、普通の人間よりは強い程度の彼ではこの結果になるのは目に見えていた。


かと言って、そんな事実があったとしてもタイフの内心は晴れないのだが。



「よう。」



そんな空気の中、ナムと同じく空気を読まない存在が病室に入ってくる。


その声を聞いたナムは、表情をしかめっ面にするとその存在に向かって目線だけ動かす。



「また来たのか、クソ親父。」


「んだよ、折角良い情報を持ってきてやったのによ。

可愛くねぇガキだ。」



病室に現れたガイムは、その言葉とは裏腹にニヤリと笑う。

それと同時に、部屋にいたサールの三人娘が彼を見て固まった。


それもその筈だ、この世界において三武家の当主を知らない人間の方が少ないだろう。



「ガ……ガイムさん!?」


「本物。」


「すっご! 初めて見たよアタシ!」



サリーとヨウコは我先にとガイムの近くに寄る。

そんな中、アンナだけは興奮しながらもリィヤの隣から離れない。



「おうおう、俺はサインはやらねぇ主義なんだ。

それよりナム、さっきも言ったが良い情報だ。」


「なんだ?」



ガイムは、近付いてきた2人に掌を向けて止め、ナム達5人の真ん中に立つ。

そして、わざと全員に聞こえるような声でその良い情報とやらを話し始めた。



「例の奴……いや、本当にそうかはわからねぇが、町からだいぶ離れた場所で1つ死体が発見されたらしい。

首が無くなってて身元がわからねぇんだがな。」



ガイムからのその言葉に、ナム達は1度目を合わせるが、大きなため息を吐いた。



「ナムの攻撃で死んだのなら、首は落ちないと思うわ。」


「まぁ……そうだよなぁ。」



ガイムはそう言って、懐から1枚の写真を取り出す。

それをナムの近くに寄ってから、目元に差し出した。



「見覚えあるか?」


「写真あんのかよ、すぐ出せクソ親……ん?」



ナムは横になった状態のまま、ガイムから写真をひったくると、それをマジマジと見つめる。


そこに写った、平原に倒れたその首なし死体。


確かに顔は見えないが、その服装に見覚えがあった。


まるで執事のような黒い服を着込んだその存在は、ナムにとっては忘れるはずもない物だ。



「おいおい。」


「どうしたのよ、まさか本当に?」


「そのまさかだ!」



ナムはその写真をミナに向かって飛ばし、それをミナは指先で受け止め、それを眺めるとトウヤに向かっても差し出した。



「見覚えあるわ、この服。」


「見覚えどころか……まんまじゃないか……マギスが雇ってるボディーガードの制服だ。

かなりボロボロだけど、間違いない。」



戦闘時、彼は当時ドルブの町で会った時と同じ服装をしていた。

替えの服が無かったのか、わざとなのかわからないが、あの時に着ていた服は正しくこれであった。



「ベルアが逃げた時に他のご遺体に着せたという線は無いでしょうか? 痛たた。」


「あまり無理をするなリィヤ……その線はあるが、まず無いだろうね。

奴がヒューマンである以上、それをやる利点が全くないと俺様は思う。」


「そこまで目立つ行動をしていた奴じゃないわ……わざわざ死んだことにする利点は私も無いと思う。」



2人から否定され、リィヤは痛みに耐えながらも思考を巡らせる。



「ですが、そうだとしたら……一体どなたが?」


「そこなんだよ。」



ナムは、ミナから返されたその写真をもう一度まじまじと見つめる。


しかし、その写真はガイムに横取りされてしまった。



「おい!?」


「報告だけだ、てめぇらは気にせず休みやがれ……俺はもう少し調べてみる。」



ガイムはその写真を懐に仕舞う。

そしてそのまま部屋から出ていこうとしたが、暗い顔をする1人の男がたまたま目に映った。



「なんだ、助かったのに暗いじゃねぇか。」


「あ……いや、その。」



タイフは、ガイムから目を逸らすと気まずそうに俯く。


彼の中にある罪のような意識がそうさせてしまったのだろう。


しかし、ガイムはそんなタイフを見ても表情は変えない。



「何となくてめぇのその態度で何があったのかわかる。

落ち込むのは勝手だが、そんな時間はあるのか?」


「……え?」


「落ち込むことに意味はねぇ。てめぇのやるべき事はなんだ?

わからねぇなら、てめぇはアイツらにとって要らねぇよ。 俺からはそれだけだ。」


「……!?」


「てめぇより、リィヤの方が役に立つだろうよ。」



タイフにそれだけ言うと、ガイムは病室からさっさと出ていってしまった。


散々に言われてしまったタイフは、目を見開いて更に表情を暗くしてしまう。


流石の暴言とも取れる父親の言葉に、ナムは頭をかいて居心地悪そうにしていた。



「あー……悪ぃなタイフ、あのクソ親父には後で言っておく。」


「いや……大丈夫……だよ。 間違ってない。」



タイフはその言葉を最後に、押し黙ってしまう。


そんな彼の心境を考えると、ナム達も言葉をかけられずにいた。

そんな時、この病室にいたヨウコが手を1回うち鳴らす。



「さて、あまり居たら邪魔だよ、行くよアンナ、サリー。」


「了解。」


「あ、うん……またね、リィヤちゃん。」


「はい、アンナさん!」



アンナは、リィヤのベッドの枕元に置かれた、緑の宝石が埋め込まれたイヤリングを一瞥すると、満面の笑みになる。



「まだ持ってくれてたんだ。」


「勿論です、ずっと大切にします!」



アンナは照れくさそうに頬をかくと、緩んだ笑顔のまま病室から出て行った。


空気の気まずさからと言うよりは、仲間達だけの時間を作ってくれたのだろう。


客人達がいなくなってから、三武家の3人はお互いに目を合わせる。

ナムとトウヤは、間にミナがいて合わせられないのだが。



「……どうすんだ?」


「そうねぇ、私達は気にしてないんだけど。」


「そういう問題じゃないと思うな、多分。」



ナム達の間の暗い空気は、アンナ達の気遣いの甲斐無く、その日は晴れることなかった。





「大丈夫かなぁ、あの人。」


「容赦無かったねぇ。」



首の裏の傷の検査の為、一応入院しているサリーに別れを告げて病院から出たアンナとヨウコは、トラルヨークの町中を歩いていた。



「タイフさん……リィヤさんと一緒にたくさんの町の人を助けてくれたと聞いたけど……余程何かあったんだね。」


「三武家の人達があんなボロボロになるほどの戦いだもん、アタシ達にはなんも分からないよ。」



2人は、サリーが完治するまでの間だけ、軍が用意した宿屋で生活している。

既にサールの住人の半分くらいは、軍に警備されながら町に帰ったらしいが、流石にサリーを置いては行けない。


それならばと、普段来れないトラルヨークを観光でもするか、と2人で良く歩き回っていた。



「あ、今日あそこ見たいな……あのデカい像の場所!」



その途中、アンナが指さした方向には、かなり目立つ人間の像が建てられていた。

アクセサリー職人を目指す彼女にとって、何か響くものでもあったのかもしれない。



「芸術品鑑賞も良いけど、そろそろ義手決めなよー。」


「それは後! 行こ行こ!」



アンナは1度決めたことは中々変えない。


ヨウコは肩をすくめると、大人しく彼女について像のある広場へと向かったのだった。




それから10分程後。

彼女達は目当ての像のある広場に来ていた。


アンナが元気よく走り出したので、ヨウコも慌てて彼女を追う。



「へぇ! これがこの町の英雄さんの像かぁ、1度見てみたかったんだよね!」


「全く……いきなり走りださないでよ……これがそうなの?」



2人はその像を下から見上げ、その圧倒的な存在感に目を見張る。



「ねね、作れるようになったらさ、こんな人型の形をしたアクセサリーなんてどう思う?」


「誰がつけるの、せいぜい置物じゃない?」


「かなり小さく作れば人気出るって!」


「そうかなぁ?」



2人はそんなことを言いながら、お互いに軽口を言い合う。


そんな時だった。



「さぁさぁご覧あれ! 的当てのお披露目のお時間です! 退屈させませんよ!」



そんな言葉が、明るそうな青年のような声色で辺りに響き渡る。

非常に爽やかな声であり、遠くの方でありながら綺麗に聞こえるほどだ。



「何かやってるよ! ヨウコ!」


「アンナ……本当にそういうの好きだね。」



喜んでその声の主の近くへと走りよるアンナと、それを呆れた様子でついて行くヨウコの2人は、広場の隅で人が集まっている場所へとたどり着いた。


人混みが凄く、肝心のものは全く見えないのだが。



「見えない。」



ヨウコは顔を顰めながら、つま先立ちをしたりしているが、それでも様子を見ることは出来なかった。


そんな時、彼女の肩をアンナが叩き、ついてこいと言わんばかりに左手で合図をされる。


そんなアンナに仕方なくついて行ったヨウコは、彼女の案内で、ギリギリ隙間から催し物を見ることの出来るスペースに辿り着いた。



「本当に上手いね……こういう場所探すの。」


「任せなってー。」



2人は人混みの隙間から、その催し物をやっている主催者を見つけた。


どうやら男と女の2人組らしい。


片方はテンガロンハット、別世界ではカウボーイハットとも呼ばれるようなつばの広い大きな帽子をかぶっており。

茶色を基調とした、銃使いが着るような軽装の服を纏っていた。


髪は男にしては長く、肩甲骨の辺りまである。


そして相方の女は、髪を顎の辺りで切りそろえた短髪気味。

同時に少し筋肉質な体つきをしており、アンナと大差ないくらいスタイルが良い。

その服装は戦士のような軽装鎧を身にまとっており、頼れる姉貴分とも取れるような風貌をしていた。



「聞いたか? 色んな町を回って的当ての催しをやってる2人組らしいぜ。」


「へぇ、そりゃ相当腕がいいんだろうな? んで、もう1人の女は用心棒か?」


「あの見た目ならそうだろう、男の方はひょろひょろで強そうに見えないしな。」



アンナとヨウコの前の2人組の男は、若干馬鹿にした風にそんなことを言っていた。


アンナとヨウコは顔を合わせると、知ってる? と言わんばかりにアイコンタクトをするが、2人とも知らないようだった。



「そこのおふた方! ご安心を、満足させて見せましょう!」



どうやら主催者には聞こえていたらしく、バツが悪そうな男2人組は咳払いなどをしながら体裁を保った。


そんな2人を見たアンナは少しばかり吹き出す。



「さて、では集まったようなので……早速始めましょう!

……よろしく!」


「はいはい。」



男の主催者が相方の女に合図を出す。

何故かすこし呆れ気味の彼女は、近くにあった1辺15cm程の正四角形の木の板の束を持ち上げる。


その板の中心には赤丸が記載されており、これがどういう用途で使われるかは、素人でも何となくわかる。


その木の板の束を抱えた彼女は、それを持ったまま定位置に着く。

そして、1度頷くと同時。


その束全てを一斉に回転させながら投げた。



「一気にかよ!」


「ははは! そりゃ無理だぜ!」



1枚ずつ順番に投げるのではなく、複数枚を一気に投げた彼女は、呆れたように腰元に手を当てる。


前で相変わらず軽口を言う男2人は、嘲笑していた。


しかし、そんな2人はすぐに閉口することとなった。



「ご覧あれ!」



そんな掛け声と共に、男は腰元から一丁の拳銃を抜き取るとそれを片手に持ち、連続で発砲を繰り返した。



「なっ……!?」


「マジかよ!」



その男が放った弾丸は、空中に放たれた計10枚ほどの的へと見事に命中する。


それと同時に、相方の女性はその場から跳躍し、弾丸の衝撃で跳ねるように空中で舞った木の板を全て手に取って回収してしまう。


それだけでもかなりのパフォーマンスとなったが、驚きはそれだけではなかった。



「全部真ん中に当たってやがる!?」


「嘘だろ!?」



前の男2人の言う通り、回収した木の板を再び彼女が空中にばら蒔いた時、その赤丸の場所に風穴が空いていた。


しかもどれも同じ位置だ。



その離れ業を見た観客達は、見事に湧き上がる。


前の男2人すら、驚きのあまり自然に拍手をしてしまっていた。



「凄!」


「見事だねぇ。」



アンナとヨウコも目を輝かせながら拍手をしており、見事に観客達の中に溶け込んでいた。



「どうもどうも! さぁ、これだけじゃありませんよ!

楽しんでいってください! お代は皆様のお気持ちで!」



主催者の男は、片手を天に挙げると、手に持った拳銃を指で回し始める。



「このシュルトの銃の腕、引き続きお披露目しましょう!」



そう言うと、そのシュルトと名乗った男は更にパフォーマンスを続けた。


すっかりハマってしまったアンナとヨウコは、そのパフォーマンスが終わるまで釘付けになったのだった。


3章開始です。

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