長めの助走
── 雨宮 フレン ──
金髪の腰まで伸びるロングヘア。青い瞳。
何よりも自分を信じる信念と聡明さが彼女の武器。
聖徒会の副会長。
「で・・・」
「・・・」
結局僕は翼専に行く事にしたけど、お父さんとお母さんになんて言おうかな…。今日も言い出せないまま登校の時間になって家出ちゃったし。
翼専は国が管理し運営する機関の為、入学金や授業料の支援・免除が適用される。
が、専門学校のため様々な修学コースが存在する。
救助科
研究科
支援科
工作科
情報科
強襲科
選択したコースや授業内容などによっては高額の負担になる可能性もある。
まぁもしお金かかるようだったら本気で頭下げて行くしか無いよね・・・。
だが、その前に。
「それがあんたの「剣」なのね?」
「間違いないと…思う…」
学校に向かい歩きながら例のリボルバーを指で器用に回転させる。
「ウソおっしゃい!銃じゃん!!」
「いやでもぉ…」
実際に翼を展開したじゃないか。
そう言いたいが凄まじい剣幕でこちらを見る計香がそれをさせない。
「それに、翼もかなり異質だった」
「それはカッコ良かったからいいじゃん」
「見た目の問題じゃ無いでしょうよ…」
目覚めてしまった物は仕方がない。
「だいたい翼っていうのは、大まかに属性で分かれている物よ。私は妖精型で、まぁ多分水属性だけど、なんかそれっぽいの出せないの?」
天使型・悪魔型・虫型・妖精型。そのいずれにも該当せず、火・水・風・氷・雷・岩・闇・光にも当てはまらない。
「分かんないよ〜!」
いろいろ調べてるんだなぁ…。
情報の処理が追いつかず頭を抱える勇理。
大まかに属性があると言っても細かく分けると数千にも登る特性がある。例えば「火属性」でも本当に『火を具現化』するタイプと『触れている物体の温度を上げる』タイプなどが挙げられる。
昨晩、計香が見せた水は前者の具現化だと分かる。
だが勇理のブースターから噴出する銀色のガスは属性であるかすら不明。勇理はそのガスを噴出し静止状態から瞬時にトップスピードへ到達する加速力を実現する。
「飛んでる時どんな感じなの?」
「目開けられないし、呼吸出来ない」
「あ!それで外敵を直接攻撃しないで周りごと吹っ飛ばしたんだ!」
「したっていうか、なっちゃった…」
「うーん…。新型か、或いは完全に勇理だけのオリジナルか…」
「何にせよ目立つだろうね」
「友達作りは心配無さそうだね!」
発見はされているが未分類な場合や今後類似する翼を持った少女が現れるか。
それとも完全に小鳥遊 勇理のみが許されたオリジナルの一点物か。
「まぁ今色々考えたってしょうがないと思うな。僕は翼専に入ってから詳しい人に聞くのが1番だと思う」
「それはそうだけども」
「ていうか、もう飛んで行かない?」
「緊急時以外の飛行には免許がいるのよ」
「大丈夫!【飛んでる=免許持ってる】だから!」
「グレた未成年みたいな事言うな!丁寧にフラグ建てちゃって…。それにどうやってあんたの速度と並走するのよ」
「あ、そっか」
9年前の災害で翼の発見以降、政府は翼の覚醒者に義務を与えた。
1つ、外敵出現時には進行中のいかなる事情も中断し可及的、速やかに外敵の殲滅に向かう
2つ、いかなる状況においても一般人に「剣」を向けない
3つ、全ての外敵排除の行動は機関への詳細の報告
以上3つの【迅滅・保護・報告】の義務である。
「ていうか勇理、学問を疎かにしていないでしょうね」
「え」
勇理は不意の質問にたじろいだ。
「だ、大丈夫だと思うけど…これでも成績は上位なんだよ?」
「そういう事言ってんじゃ無いのー。この時期、少しでも気を抜いたら一気に差をつけられるわよ」
「頑張りますよぅ…」
それからの約1年はあっという間だった。
翼と剣さえあれば翼専に入学は可能。だが学力に明確な序列があり、これが低いと結果恥をかく事になる。
そのシステムの甲斐あって生徒同士で高め合い現在翼剣専門学校は高水準の偏差値を誇っている。もし一般入試を行ったら外敵への抵抗力を大きく落とす事になるだろう。
「僕は特に少しでも手を抜いたらせっかく入った翼専で居づらくなっちゃうからね」
外敵との接触もあれ以来無く、順調に翼専入学へ向かうのだった。
説明多すぎますね。
もう少しです。