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スイリブル・フェザー  作者: CLOWD
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運命の瞬間へ

── 要 計香 ──(かなめ けいか)

勇理の幼なじみの親友。

黒いセミロングで眼は茶色。

お気に入りの赤い髪留めをいつも付けている。

成績優秀の運動神経抜群。几帳面。

黒縁メガネ。


今日は授業に集中出来ていなかった。

ずっと計香の『剣』が気になっていた。


「はぁ…」


こればかりは考えてどうにかなる問題では無い。

それは分かってる。


10代の少女が「稀に」覚醒する事実、近い間柄で2人覚醒する事はあるのだろうか。


「考え過ぎだよね…。悪い癖だ」


深く考えてもしょうがない。目覚める人は目覚めるし凡人なら凡人。

そう完結して授業に集中した。


そういえば流星群が降るとか降らないとか…。

すぐに別の事に思考を巡らせてしまう。今日は朝から変に頭が冴えてしまって、というか妙に気が散っているだけかも知れないが。



── 放課後 ──


「おまたせ」

「うん、どうするの? まず計香の家に行ってから荷物取って僕の家で直潰そうか?」

「OK〜」


スマホの情報によると、流星群は夜23時に見え始める模様。今は午後6時半。あと4時間半もある。


「お母さん居るけど僕の部屋なら大丈夫だから」

「ごめんね、ありがとう」

「コンビニ寄ってご飯買って行こう。夜までゲームでも…」

「宿題終わったらね」

「…ふぅ」


流石計香、しっかり者。


制服のままコンビニに入る。

勇理はサンドイッチ1つにペットボトルのお茶1本と少なめ。


「あんたそれ足りんの?」

「まぁ」


お弁当を2つ抱える計香にエネルギーの心配をされた。


「別に運動する訳じゃ無いし」

「そうだけどさー」


レジを並び砕けきった店員の挨拶を聞き流し精算してコンビニを後にする。

程なくして計香の家に着くと


「ごめん、すぐ戻るから」

「はーい」


適当に着替えて荷物を取ってくるだけなので家でには入らないで玄関先で待機。10分程で戻るだろう。

スマホを取り出しネットニュースを確認すると


「あ…」


大見出しにあの少女が大々的に取り上げられていた。

9年前、勇理を救った紅い少女、今回も世界各地の外敵を倒しているようだ。

本当に凄いと思う。

あの災害以降『外敵』が世界で目撃されている。初期での発見であれば一体だけの為、直ちに対応可能な隊員が討伐に向かうが、『外敵』はその特性上、殺害した生命体を自身と同じ外敵に変異させてしまう。よって早い段階での発見、討伐が望ましい。

尚、虫や魚、鳥も例外無く変異する。虫が変異すれば硬い装甲を纏った外敵に。魚が変異すれば水中での活動に特化した外敵に。鳥が変異すれば巨大な翼で自由に空を飛ぶ外敵に。


「今回は大規模な外敵の軍勢だって聞いたけど」


もちろん翼を持つ隊員だって無敵では無い。

外敵に刺されれば当然活動を停止する。

確かに一般人と比較すれば多少身体能力は強化されているだろう。

だが決して不死では無いのだ。


勇理も隊員が殉職したというニュースなら幾らでも見てきた。そんな中、彼女だけは最前線で戦い続けているというのに、今まで生き残っている。


「やっぱり凄い人だったんだ」

面と向かってお礼を言いたいんだ。

あの時助けてくれてありがとうございましたって。

僕の大切な家族…ペットのエールを楽にしてくれてありがとうございましたって。


「はいどーもおまたせ」

「ん、じゃあ僕の家行こうか」

「久しぶりだなー勇理の部屋!何年ぶり?」

「5年」

「え!もうそんな経った!?」

「うん」


3分程歩きながら雑談。

そして、意外と近い小鳥遊家に到着した。

この距離なら今朝合流したのもタイミング次第では偶然では無いかも知れない。


「どうぞ」

「お邪魔します」


靴を綺麗に揃えて2階の自室へ案内する。


「前とは色々違うかもね」


そう言いながらドアを開けて中に入るよう促す。

そして計香が放った最初の一言は


「男の部屋か!!」

「ええ!!!そんな事無いよ!!!」


少し広めの部屋には黒が基調のカーテンとテーブルとベッド。

カーペットは飾り気のない灰色。

ゲーミングチェアとモニター3枚に謎の発光をするデスクトップPC。

極めつけは壁中に掛けられたエアガン、エアガン。


「変わり過ぎ!!あんた5年前は「こんなの」1個も無かったし興味も無かったじゃん!」

「あ!「こんなの」って言った!「こんなの」って!」

「言ったけど?ていうか学校ではそんな素振り微塵も見せ無かったじゃん!」

「まぁキャラじゃ無いし…。撃ってみる?」

「いやいいよ…」


そんな事より宿題!と計香に怒鳴られ渋々今日の課題に手をつける。

大した量では無いのですぐに終わった。


「終わった終わったー!」

「それにしても勇理、良くこんなに集めたね」


とディスプレイに綺麗に整頓されたハンドガンを歩きながら鑑賞する計香。


「何が良いんだか」

「全部良い。良くない所なんて無いっ!」

「はいはいはい…」


こりゃもう男の子だわ…。


「あら、これ素敵じゃないの」

「お!?どれの事かな!?」

「あ、すげぇ食いつく」


宿題にKOされていた勇理は飛び起きて計香の隣に駆けつける。


「これよ」

「…」

「勇理?」

「こんなの持ってたっけ?」

「いやいや!自分のでしょう!?」

「持ち過ぎてて忘れたのかな?」


鏡の様に磨き上げられた銀色の大口径バレルとマズルブレーキ。大袈裟なハンマー、スパー。藍色のシリンダー、ラッチ、サムピース。バレル上下に20mmレール。8インチはあるだろうか。こんな大袈裟なリボルバー、撃ったら手首が折れてしまうのではないか?人に撃ったら間違いなく肉を穿ち骨など容易く砕け散る、貫通どころか風穴が開くだろう。

とにかく、異様な存在感があった。


「…」

「…」

「いや!こんなの忘れる訳が無い!」

「知らない物は知らないってば…」


まあいいやと計香は筆記用具とノートを片付け始める。

もう10時を過ぎていた。ゲームもしたかったが、結局課題だけで終わってしまった。ご飯を食べて家を出なければ間に合わない。


「どこで観測するの?」

「大丈夫、完璧なスポットを見つけておいたわ」

「流石、計香」


出来るだけ家から離れたく無いなぁ。


「学校の裏の山!あそこの麓に小さな休憩所があるみたい!」

「え、でも結構暗い所だけど大丈夫?」


真夜中の森を抜けなければならない事になるのだが。


「何言ってんの!周りが暗く無いと流星群も良く見えないでしょ!」

「それもそうだけど」

「あれか!虫か!」

「違うー!」

「じゃあ何?」


もしも、万が一の話だ。

我々がこの暗い森の中で外敵に出くわしたらどうすれば良いのだろうか。

周囲に避難出来そうな場所も無ければ視界も悪い。

逃げ出しても山を出る前に追いつかれる事確実。

スマホで助けを呼んでも外敵は待ってくれるだろうか。


「外敵が出たらどうするの…?」

「外敵?大丈夫大丈夫!出ない出ない!出ても私は剣持ってるし!守ってあげる!」

「なら良いけど…」


普段から訓練しているという事だろうか?


「ほら!もう行くよ!」

「う、うん!」


こうして2人は運命の瞬間に歩いて行った。

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