幼馴染は中二病
俺には竜宮院結菜という幼馴染がいる。
容姿端麗、才色兼備、羞月開花‥‥‥。
彼女は、神に愛されていると言っても過言でないレベルで、数多のものに恵まれている。
むしろ、ないものを探す方が難しい。たぶん、出来ないことはないんじゃないだろうか。
中でも、外見は群を抜いて良い。
すらりと腰に届くほど伸びたストレートヘア。無垢な輝きを見せる瞳、女性らしい曲線を描く体躯。などなど。
月並みの表現にはなるが、百人が見れば百人が彼女の容姿に太鼓判を押すだろうし、芸能人にも引けを取らないルックスだと俺も思う。
現に、文化祭のミスコンではダントツで一位になっていた。他の追随を許さない、とはまさにああいうことを指すのだろう。
しかし。
そんな美少女たる竜宮院にこれまで彼氏が出来たことは一度もない。それどころか、彼女は告白されたことすらない。
だがそれもそのはずだ。
だって、彼女は‥‥‥、
「ククク‥‥‥。あたしの真紅の瞳に映ってしまったからには、貴方に未来はあると思わないことね。神から授かりし人智を超越した力を持つこのあたしに勝てないものはないんだから!」
────極度の中二病患者なのである。
竜宮院はその恵まれた容姿と才能、その他諸々を無に返すほど、非常に残念な女の子なのだ。
高二になった今でも、彼女が中二病から解き放たれる気配はさらさらなく、学校にいるときでもずっとこの調子。
竜宮院の性格を知らないうちは、誰しも彼女に一目惚れをして心をドギマギさせるのだが。
それも一分と経たずに気の迷いだと知り、みんな何処かへと去っていく。
そうして、残ったのは幼馴染である俺だけ。
みんながみんな竜宮院のことを腫れ物のように扱う中、俺だけが彼女の側にいる。
当然、そんなあいたたたな幼馴染の側から離れない俺もまた、変わり者だという認識を受けていた。
正確には、同族だと認識されているみたいだが。
じゃあなんで、俺が竜宮院の側から離れようとしないのかといえば‥‥‥。
「よし、きょうすけ。あたしから離れて。今にあいつをこの世界から葬り去ってやるのよ!」
「できるかバカ。お前、ゴキブリ一匹殺すために、民家ぶっ壊す気か!」
彼女は、ただの中二病ではなく、本当に魔法とかそういう感じの超パワーが使えてしまう‥‥‥非常に危険な病を抱えていて。
俺が側にいないと魔力の制限が一切できない大変頭のオカシイ女の子なんだ。
ああ、神様‥‥‥。
こいつに魔法を使えるようにしたのは絶対失敗だと思います。一刻も早く、こいつから力を取り上げてください‥‥‥。