42、祭りの終わりと後始末
今日は、ちょっと短いです
泥水鉄砲が中々良い売れ行きなのですが、材料を入れれば自動的に泥団子を造り出す装置と、それを撃ち出すランチャーを女装男子ーズに渡し新たな販促に勤めます。
「いつからこの店は武器屋になったんだ? 」
元祖女装変態のギジーさんがそんなコメントをしてきますが……
失礼な、『かんざき』は普通の雑貨屋ですよ?
水鉄砲とか銀玉鉄砲とかと同じです……多分。
「全部が他愛ない子供向けの玩具ですよ? 」
さて、そろそろ私も参戦しますかね。
ヘルメットにゴーグル、ポンチョを着込んで創っておいた最新兵器を取り出して搭乗し街中に進軍です。
巨大な泥タンクの上に、泥水セントリーガンと泥団子キャノンを複数配置し、馬型ゴーレムのエミシ君とイルカ君に牽かせ、手当たり次第に撃ちまくり、周囲を泥まみれに変えながら街中を練り歩いていたら怒られました……
何がいけなかったのか、よく判りません。
僚機のGキャタピラー型資材輸送ゴーレム、イモちゃんver2を改良して背中に砲塔を積んで撃ちまくった事でしょうか?
しかし此処は硝煙……いえ泥煙漂う戦場です、油断していると物陰から屋上から泥団子や泥水が降り注ぎます。
そう、生きとし生けるもの全てに等しく泥を与えん。
終末兵器として、私が放った多弾頭型泥団子ミサイルがメイリンの街中を焼け野原ならぬ泥野原に変えた頃、夕方の鐘が鳴り響き泥祭りが終了しました。
「今日、私達は土に埋まりそして流された。」
神殿前ではまた偉い人による長い話が始まってしまいました。
朝に見た時は高そうだった法衣が、今では全身泥まみれです……朝の人と中身が違っていても区別がつきませんね。
まぁ私はそんな話は聞かず、隣に立つナルスお婆さんとお話中です。
「ナルスお婆さん、この街中の泥はどうするのです? 明日は皆で大掃除ですか? 」
「明日から幾日かは雨が降るから、大丈夫さね」
雨ですか? 綺麗な夕焼け空でとても雨が降るとは思えないのですが……
「この祭りの翌日には必ず雨が降るんじゃ、女神様を讃え女神様から恵みの雨を貰う。昔からそう言うしきたりじゃな」
神も魔法も現実にある異世界ならではですね。
讃える祭りをすると雨が降る、その雨が街中の泥を洗い流し、街の外の畑には水を与える。女神様の恵みですか。
「雨の河を渡り我らは再び現世に……」
偉い人のお話が短くなる恵みも下さい。
翌日は本当に雨でした。風を伴った嵐の様な雨ではなく、シャワーを全開で出している様な、ほとんど無風の雨です。
だからと言って外に出る物好きがそう居る訳でなし、雑貨屋としては暇なのですが。
暇な時はドジョ・ドジョでモフモフですよね。
「昨日、どっかの誰かが大量に泥を街中にばら撒いたから雨が何日続く事やら……」
撒かれた泥の量に比例して雨が降るのですか? ……しかも何日も……誰ですかそんなに泥を撒いたのは!
例年は一日、長くても二日の所を今回の雨は三日間降りました。
やっと雨が上がったので商業ギルドに売り込みです。
「携帯式の撒水器……自走式の撒水器……牽引式の撒水器ねぇ」
以前提案した設置式の撒水器は治安の面で不許可でしたので持ち帰り可能な物を用意してみました。
「これってアレだろ? 祭りの時に街の中を阿鼻叫喚の地獄に陥れた……」
え? 大絶賛の声かと思いましたが? 違ったのですか。
「あの祭りは兵……いえ、撒水器の性能を売り込む絶好の機会でしたね」
「いま兵器って……まあいい、この件は領主様にお伺いを立てておく。品はこれだけか? 」
「私としてはこちらが本題ですね、家庭用洗濯機と乾燥機の原案を持ってきました」
ドジョ・ドジョの宿では業務用サイズのゴーレム化し全自動な物が設置されてますが、ゴーレム抜きの機能縮小版にしてみました。
「あの宿にある布地を洗ったり乾かす道具か、他の宿屋なら需要は……しかし一般家庭には売れないな」
そうなのですよね、この世界の人は衣類を毎日洗わないんですよ。
布地自体が高価ですし縫製や染色の都合で洗うと痛むのが多くて……まあ、洗濯板に擦り付けたり棒で叩いたりすれば嫌でも傷みますけどね。
それに風呂にさえ毎日入る、前世のあの国が異常な潔癖性だったとも言えます。
「洗濯機は今の洗い方よりは大人しい方法なので布地が傷むのは軽減されますよ」
「まあその洗濯機の製造販売権は差し上げます、私からは洗濯機用の石鹸……洗剤の開発依頼です。コレが無いと洗濯機はまず売れないでしょうし」
市販されてる石鹸は固い塊ばかりで粉石鹸とか無いのですよ。
「石鹸……洗剤の出資者になると? そんなの儲かるのか? 」
「無理でしょうね。でも応用の利く分野ですし、何より今の固く刺激の強い石鹸より手や布地を傷めずに済みますから」
所変わっても水仕事の手荒れは永遠の課題です。
ハンドクリームは医薬品でしょうか? うちの店では売れませんかね。
「初期予算は金貨五百で、有望そうな若いのを見繕って下さいな」
「お前さんなら自分で作れそうなのに随分と出すな……大丈夫なのか? 」
「『私だけが創れる方法』じゃあ意味ないですから。それにお金は使ってこそ景気と経済が廻る物です」
実際ドジョ・ドジョ分の洗剤は私が創ってますし……
「まあヤル気のある有望そうな若いのを見繕っておくよ、しかし本当に何歳だお前は、たまには子供らしくしたらどうだ? 」
「レディに年齢を聞くとは不躾ですね……グライスさんより年上、と言ったら信じます? 」
「流石にそれは……いや、でも……」
「うわ、そこで悩みますか? 」
前世でもそこまでの歳じゃありませんよ?
「普段の行いがなぁ……」
私は普段から良い子ですよ?
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。