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37、農機具を創りました

お久しぶりです。

本日からまたポチポチッと投稿します。

 私が初めに住んでいた小屋と壁を崩してから数日。

開店セールの賑わいも一段落し長閑な日を過ごして居ます。

まぁ、食器とかオルゴールとかを毎日買う人はそう居ませんね。

ある程度の人が買ったら暫くは買いに来ません。


 暇ですし何か新しい売り物でも考えましょうかねぇ……

……知恵の輪とか? けん玉とか? 何か正方形の物をカチャカチャ回して六面の色を揃える奴とか? 薄っぺらい水槽のボタンを押すと中の水が動いてリングとかを引っ掛ける奴とか?


「とりあえず一通り創ったのでココちゃんにどうぞ」

新しい玩具はココちゃんにお裾分けです。

「既にココの玩具箱が二つも溢れてるのだが? 」

「まぁ、減るもんじゃなし……」

「増えていくから困ってるんだよ! 」

ヴィヴィアさんの頭痛が痛い的な表情の横では、ココちゃんが知恵の輪に挑戦し始めました。

悩みながらカチャカチャやってる姿も可愛いですね。


 そんな平穏をぶち壊す来訪者がやって来ました。

「ミウ様、農機具の件で領主様がお呼びです。農機具を持ち、街の外の農場までお願い出来ますか? 」

遣いの兵隊さんが私の店の中で敬礼をしながらそう言ってきたのでした。


 店の前から農場まで馬車で送迎してくれるのですが……やっぱり振動対策しましょう! もしくは道路の整備を! 切に!!

「そんな力説を今されてもなぁ、考慮はするが……街道の整備は敵の進軍にも関わるから難しいぞ? 」

むう、やはり馬車の改良をするしか無いですか……


しかし、あんな馬車に平然と乗っていられるとは貴族の皮は厚いのですね。

「何処の皮だか敢えて聞かないが、俺達だって別に平気じゃないからな? 」

「……あぁ! ジョエル様! お久しぶりです」

「挨拶するのが今かよ! 」


「少し前から気が付いては居ましたが、自分の気持ちに一区切り付けて置かないと数日間は引きずりそうでして……」

「それ程に馬車が酷いか? これでも貴賓用の馬車で上等な部類なのだがな」

これで……ですか? やはり貴族の皮は厚い……


 一通り愚痴を吐き出せたので、農家の方を連れ開墾予定の地へと向かいます。

草が沢山生えた見事な荒れ地ですね……


「さて、この土地を開墾するのですが。農家の方……アナタは普段どの様な手順で進めてますか? 少し見せて下さい」

「この地区を担当しているファムです。最初は草刈りをしとります、この短刀で草をこう……」

ファムさんはしゃがみ込み、草を一束掴み根元を短刀を一振り。


「ありがとうございます、毎回しゃがんで移動は大変ですね。そこで、この草刈り機です。魔力を流すと棒の先の刃物が回転する道具です」

草刈り機を起動させ、軽く振りながら周囲の草を刈って見せファムさんにもやらせでみます。

「おぉ、コレは足腰が痛くならないし速く刈れます! 」

ジョエル様も感心して見ています……やってみたくても駄目です。


 刈った草を大きな熊手でかき集めて脇に寄せる。

コレ用の道具は創りませんでしたね、広い範囲だと牛に熊手を牽かせるみたいです。


「次は固い土をコイツで刺したり、こっちで掘り解し耕します」

ファムさんは片方だけのツルハシや鍬を持ち耕すのを実演してくれます。


「この工程のポイントは腕と肩ですね、絶えず上下に動かして大変です。それで、この耕運機を創りました」

コレも草刈り機と同様に何度か実演してからファムさんにやらせてみます。

「掘るのが少し浅く感じますが、土の表面のあの硬さをこの手間と速さで崩せるなら申し分ないですよ」


 他にも井戸の水を汲み上げるポンプ、外に放置すると盗難の危険があるので便利だけど却下。

同様の理由で畑に水を撒く撒水器も却下です。

だけどチェーンソーはかなり気に入って貰えました。

「便利なのだがな、不甲斐ない治安ですまん」

「いえ、全部が採用されるとは思ってませんでしたから。半分だけでも御の字ですよ」


 創った物はサンプルとして置いておき後日に回収します。

「置いていって良いのか? 購入する必要が無いほどに使うかも知れんぞ? 」

「それはそれで耐久性のテストになりますから。まぁ領主様が立ち会いの下に置いていった物を、そう無茶に扱うとは思えませんけどね」


 その後、領主様と農地の視察……馬車に乗るのですか? 遠慮したいです。

「そうは言うが、貴族としての体裁を整えんといかんからなぁ」

貴族と言うのは面倒な見栄を張りますね……

しかし、整備されていない農道をあの馬車で走ると言う行為は拷問です、生きているのを後悔するレベルです。

是非とも改善致しましょう! 


 チェーンソーの試し斬りで出た端材を頂いて、変形加工したら念動力の魔法をトッピング。

馬車の座席に置いて起動、浮かぶ座椅子の完成です。

僅かに浮かぶ座椅子が衝撃を吸収し快適な座り心地を提供します。

「馬車を創りだす時間も無いので、とりあえずこれで今は我慢です」

「もうこれで良いのでは? 」

「私は構いませんが、座っているだけで魔力を消費しますよ? 」

座りながら心身共に疲れる振動か、振動は無いけど湯水の如く魔力を消費するか……中々嫌な二択です。


 視察の最初は小麦畑ですか、この世界はもうじき初夏なのかそろそろ刈り入れ時ですね。

「この辺りの刈り入れも草刈りみたいな短刀なのですか? 」

「そうですな、短刀で切っていると伺っております。この視察が終わると刈り入れが始まります、ご覧になって行きますか? 」

ニコラハムさんが応えてくれましたが……やっぱり手作業ですか、此処はサッカー場が何面取れる広さの小麦畑なのでしょう? 

まぁ、私はサッカー場に行った事が無いから比較も出来ないのですけどね。

どちらにせよ、人の力で終わる量とは……


「渡したあの道具程度ではやっぱり駄目ですよね」

草刈り機では切ったら周りに撒き散らしてしまいます。

米とか麦を刈り取る機械ってどうなってましたっけ?

昔、何かの写真で見たのは、確か斜めにしたスキー板で挟んで切って束ねて横にポンと……


 根元を切って脇に送るのは何とか判るけど、どうやって縛っているのですかね?

縛らずに切り倒して行くだけだと拾う手間が……でも手で切るよりはマシかな?


「あの、農家の方々は手で押す荷車みたいなのを持ってますか? 」

「押すですか? 引く物でしたら道具を運ぶ様なのがあったと記憶しております」

リヤカーかな? それなら……どうにか……


 馬車を止めて貰い、道路脇で創作活動……そこらの草の繊維からベルトを創り、鉄の歯車状タイヤと、木の板を……

完成したので先ほどの農家の所に戻って貰います。


「これは領主様、何か不都合がありましたか? 」

農夫のファムさんが急に戻って来た事を心配してます。

「何、このミウが農具を渡し忘れていたらしくてな。刈り入れても構わない畑に案内してくれ」

「後、人が引いたり押したりする荷車も数台持って来て下さい」

私のお願いに農家の方が持って来たリヤカーもどき……うん、大丈夫だ、


 小麦畑に到着し、私が収穫機を取り出します。

Vの字に開いた所から麦が入り、麦がベルトに押さえつけられ、根元を草刈り機が切り、そのままベルトと板で斜め上に誘導され、最上部から併走するリヤカーもどきの中にバサリと滑り落とされます。

藁束を縛れないならそのまま直接隣の荷車に投げ込んじゃえ! 拾うよりマシでしょ? 方式です。

ベルトの動力は歯車タイヤの回転を利用してみました。


「この距離の収穫をこんなに早く……ありがとうございます」

「改良の余地がまだ有ると思うので遠慮せず言って下さいね」


 その後、視察を再開し領主邸に戻りました。

「本当に代金は要らないのか? 売ればかなりの額になる筈だが? 」

「その代わりに改良とか追加生産はお任せしますから。それに……」

「それに? 」


「私の持っている販売額許可証って『日用雑貨』なので……流石に農機具を日用雑貨とは言えなくて……」

「お主はそんな所を気にするのか! ふあっはははは!! 」

ジョエルさんとニコラハムさんの笑い声が青空のメイリンに響きました。

もうじき夏ですね……。


此処まで読んで頂き、ありがとうございます。

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