2.アバター作った
本日二話目です。
《さて、魂の配達人のサボリで投棄されていたお詫びもあるし、蟻とか南京虫に転生させて踏まれ潰れたら世界滅亡! みたいな事にならない様に貴女の身体を造りましょうね》
"うっ……それは凄く嫌だ……いろんな意味で、ってかサラッと言ったけど配達? サボリ? 宅配事故? 私は棄てられていたの?! "
《お詫びとして、好きな容姿や能力を特別サービスしますわ。長生きもして欲しいですし》
女神が手を振ると美羽の目の前に女性の身体が現れた、美羽が生きていた時の身体のようだ。しかし……
"ちょちょちょっ! 待って待って! 何で全裸?! 服着せて服! "
《あらあら、他に見ている人は居ないし、別に気にしなくても良いのよ? ……それに……とても……凛々しく、慎ましくて格好いいわよ? 》
男女と馬鹿にされる高い背丈と薄い胸部装甲の裸体を、美羽は我が身を謎の光とし必死に隠した。
《んーじゃあ、下着をプレゼント致しましょう。秘蔵のコレね? 》
女神が再び手を振ると裸体が下着姿になる。
"秘蔵? まさかこのフリフリは! "
《貴女がタンスの引き出しの奥の奥に大切に大切に! 大切に!! 仕舞い込んでいた下着を完全再現してみたわ! 》
"ぎぃゃあああ、やめてぇぇぇぇ。黒歴史がぁ! 現実を見せないで! 隠してたのよ! 封印してたのよ!! 私にだって女の子らしい夢を見たい時があったのよ!!! "
ピンクのフリフリ下着姿の自分を客観的に見て、頭を抱え転がり回る美羽。
《貴女の葬儀が終わった後にタンス整理して、この下着を見つけた時のお母様の顔をスクショしといたけど……見る? 》
"いゃあああああ……もう止めて……私のHPは0よ……既に死んでいるけど……それとスクショ言うな……"
ついには膝を抱え顔を埋め泣き出す美羽……
《ではこの身体をベースとして……部位を触りながら願えば容姿が変化するけど、少し変える? 》
"変える! 変える! "
ふさぎ込んでいた美羽が一気に跳ね起き、頭を触りながらコンプレックスだった百八十超えの身長を下げ、胸を触りながら平らな胸部を豊かにし、凛々し過ぎた顔をお目めパッチリな可愛らしい顔に変えていく。
《ねぇ……身長=胸囲な体型は流石にやり過ぎだと思うわ? ……それにその目……そのサイズだと頭蓋骨の中は眼球しか詰まってないわよ? どれだけ強く願ったの? 》
女神ですらどん引く酷い容姿、どうやらやり過ぎた様である。
"いや、妄想と欲望が止まらなくてつい……顔に関しては少女漫画の影響が……"
呆れ顔をした女神がまた手を振り、程よくバランスの取れた体型と可愛い顔に直した。
少しウエーブのある青みがかったプラチナブロンドのレイヤーボブに琥珀色の瞳、美人と言うよりは可愛らしい、それでいて出る所はシッカリと出ている新しい容姿の美羽の身体。
"……でも少し幼すぎない? 何と言うかロリ巨……"
《この世界の結婚適齢期すこし前の十三歳平均の姿ね。ちょっと育ち過ぎな部分もあるけど……まぁ貴女の望みだし、それに元の年齢で造ったらコッチじゃ完全に行き遅れよ?》
"い……行き遅れ……そりゃ十三とかで適齢期とか言われちゃうと、行き遅れだろうけどさぁ……"
《身体も決まったし、後は技能……スキルと言った方が判り易いかな? それを決めましょう》
女神は手元に半透明な板を浮かべて何やら打ち込み始めた。
《この世界の人は幾つかのスキルを持って生まれてくるのよ。経験を積み成長する事でスキルを新たに習得したりスキルが進化もするわ》
"スキル制かぁ……剣とか魔法とかある世界なのよね……ゲームみたいね……レベルとかもあるのかな? でも剣とかで戦うのはなぁ、弓なら格好良いかなぁ? いや、やはり魔法は夢よねぇ、ぜひ使いたい……あっ! ゲームと言えばアレやりたい! 色々なアイテムを色々な材料から作り出すやつ! "
美羽は生前に大人気だった錬金の工房シリーズをリクエストした。
《魔法と錬金術、後は道具作成ね? 魔法で世界エネルギーを沢山使う様にコレとコレも……、錬金にもコレを……レベルもあるわよ、レベルが上がれば身体能力が上がっていくわ。後は何かある?》
"んー……どれがどの材料になるか判らないし、魔物はもちろん魚すら捌いた事が無いんだけど……何とかなりますか? "
《現代っ子ねぇ、そうね……凝視すれば名前や用途が判る鑑定術、それと色々な物を入れておける収納スキルに……狩りをしたり収集した獲物から必要な部分だけを自動で切り分けて分別して収納するスキルを追加オプションでオマケしておくわ》
"あと心配なのは文字とか言葉とか?それでオッケーかな? "
《ホイホイそこらはスキルですら無いわ……問題なしっと、じゃあ最後に名前ね》
"名前かぁ、名字・家名は貴族だけだろうから……元の名からミウで良いわ"
《美羽さんがミウ……っと、はい入力終わり! コッチの世界ヴィラネルでは『ステータスボード』と念じれば自分の能力が見れるからね》
"へぇ、生まれた時から自分の向き不向きが判る世界ってのも凄く便利ね"
《でも、ミウさんが居た世界みたいにスキルを知らないからこそ自分の可能性に挑戦し、夢の達成に感動する事が出来るのよ? 》
"でもそれは一握りの成功した人達だけだわ、大半は途中で挫折し失墜するの。私も……"
《そうね、でもそれは文明が成熟し余裕がある証拠よ。このヴィラネルは未だそこまで進んでいないわ、皆が今を生きるのに必死なのよ、なんならミウさんが望む様な素敵な世界に育てて良いのよ? 》
"育てると言っても、領地とか経営の運営シミュレーションゲームは苦手なんだけどなぁ、そう言うのは放置してて良いの? "
《ふふ、放置も傍観も運営手段の一つよ、エネルギーの比率で言ったらヴィラネルの九割以上がミウさんなのよ、出し終わるまで好きにしてなさい》
女神はそう言い手元にあった半透明の板を消す。
《じゃあこれで設定は終わりね、ミウさん行ってらっしゃい! 新しい人生を楽しんでね! 》
"あっ! そう言えばまだ女神様の名前を聞いてない! "
《シャロンよ、もし神殿を見かけたらよろしくね? 》
そして全てが白い光に包まれた。
光が収まり目を開けるとミウは胸元まで伸びている背の高い長い葉が生えた草原に立っていた。
ススキとは違い葉の縁は固くなく、手足が切れる心配はなかった。
「青い空、白い雲、いい天気ね、昼を過ぎた辺りかな? それほど気温も低くない、ポカポカした春の気候だわ……」
まさに行楽日和と言える日差しを浴び、大きく深呼吸をし青草の香りを吸い込む。
「うん、まあ確かに言わなかったよね。そんな話題にもならなかった。最後の方で絆された気分になって、私も忘れていたよ、指摘もしなかったし。でもさ……その位のサービスはしてくれないの? 」
ミウは自分の身体を改めて点検し、空に向かい大声で女神シャロンにツッコミを入れた。
「何でじゃ! ちょっと待てやあああ! 」
その声は誰もいない草原に虚しく響いた。
ミウ13歳、異世界ヴィラネルの名も知らぬ草原に、何も持たず、ピンク色のフリフリな下着姿で爆誕!
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