17.ダンジョン第一階層
本日二話目です。
崩れ易いと言う砦の床には真っ黒な穴が開いていた。
外からの光が差し込んでいる筈なのに、その穴の中を全く見通せず、まるで黒い板が置かれている様にも見える。
「これがダンジョン……」
「そう、下りた所すぐに魔物が居る可能性もあるので慎重にな。今回は俺が先行する、中を見て大丈夫そうならすぐ戻り仲間と入る。中々戻らなかったら注意しろ」
ギジーさんが一度中に入り安全を確認する間に、私達は真っ黒な穴の縁に腰掛け穴に片足を入れて待機する。
こうしておけばダンジョンが切り替わること無くギジーさんと同じダンジョンに入れるとのこと。
因みにこのまま三十秒経つと片足を入れている私達以外の人は穴に入れず真っ黒な穴の上に立つような状態になるみたいです。
そのせいでダンジョンの外に資材や人員を配置して必要な時に体の一部だけだして補充するとかも出来ないようです。
「ロープを中に垂らしてそれを外で掴んでいたり外の荷物に括っていたらどうなるのでしょう? 」
「そうしたらロープだけがダンジョンに入れるね、掴んでいた人や縛っていた荷物は穴の上さ」
穴に触れてない着ている服や背負った荷物は私達と共に入れるのに、他の荷物は駄目なのですか本当に難儀な造りですね。
「よし、大丈夫だ。中は自然洞窟型だ行くぞ? 」
ギジーさんが穴から頭だけ出して声をかけてきたので、私達も穴の中に入りましょう。
穴は入り口から下り坂になっていて、膝、腰、胸元と徐々に黒い空間に潜って行く。
何も見えない真っ暗な空間が肩から顎にかかると、私は思わず背伸びして逃げたくなりました。
「ミウさん、大丈夫だよ。その背伸びはダンジョン初心者が必ずやるから」
トニーさんがニヤニヤと私の行動を笑ってくる。むぅ……ならばと一気に潜るために息を……
「あと、初心者は何故か息を止めて水に潜るみたいにダンジョンに入るんだよな……」
……息を止めて一気にダンジョンに潜った、何か負けたような気がしました。
ダンジョンの中は完全な暗闇ではなく、ほんの僅かうっすらと壁が光っていた。
床や壁は平面ではなく、鍾乳洞のような凸凹した気を抜くと躓きそうな足場、でも水が溜まっている様子はないですね。
「先ほど自然洞窟型と言ってましたが、違う時もあるのですか? 」
「ああ、ダンジョンには自然洞窟型の他に山岳・坑道・森林・草原・海洋・湖畔・河川と様々な造りがある。入る毎に変わるし規則性も発見されてない」
「ダンジョンの中に山や森林や海ですか? 」
「そうだ、見えない壁で囲われて居るがこの街が全部入るほど広い。日の光が差し込み風も吹くし雨も降るダンジョンだってある」
外とほとんど同じなんて、ダンジョンの中は本当に別の世界なのですね。
「先行する者はこの様に明かりを持たず中を確認する、明かりに反応して襲ってくる魔物も居るからな。中に入って周囲に魔物の気配は無いのを確認して、さあ明かりをつけるぞ? お嬢ちゃんやってみな」
「判りました【ライト】! 」
以前創造した光属性の攻撃魔法ライトボールを改良し自分の周囲に浮遊させ照らす魔法【ライト】を唱えて周囲をLED電灯で照らしたかの様な明るい世界に変える。
「「目が~! 目が~! 」」
思いもしない突然の急な光で、ギジーさんとトニーさんの二人は両手で目を塞ぎのたうち回る。
「お……お嬢ちゃんに常識が通用しないって事をすっかり忘れてたぜ……」
「何なんすか? ミウさん何なんすかそれ? 明かりを灯す魔法道具? 」
ようやく光量に慣れた二人は口々に不満を漏らした。
「そんな感じです、気にしないで下さい。さっき笑われた気がしたから憂さ晴らしとかそう言う気は殆どありませんから、気にしないで下さい」
「「少しはあるのかよ……」」
「さて、これから探索を始めるのだが……」
ギジーさんが何か言いたげな目を私に向け……
「何する気だ? 」
直球で聞きにきましたね?
「前回の弓子さん一号のリベンジですよ? 」
「つまり、新しく弓を作ってきたと? 」
「弓と言えば弓ですが……今度はクロスボウ、弩弓ですね」
「……アレだって反動が無くなる訳じゃないだろう?」
ギジーは顎に手を当てて考え込む。
「そこでコレです! 出でよ! 弓子さんmarkⅡα」
「まーくつーあるふぁ? 」
そのかけ声と共に収納から出たゴーレムが私の脇に現れる。
それは六十センチ程の黒い涙滴型を半分に割った形の板の上に弩弓が乗っており、その反対側、板が地面に接する平面な部分には六本の脚……
端的に言うなら、クロスボウを背負った柴犬サイズのG……
「うっ……何……コレ? 」
流石のギジーさんもこのビジュアルにはクル物があったようだ。
物凄くイヤそうな顔をして私に質問してくる。
「弓子さんmarkⅡαです。反動がキツいなら自分で撃たなければ良い、無理に二足歩行する必要ないよね? をコンセプトにダンジョンの踏破性や高速機動を突き詰めました! 」
右手人差し指を一本立ててドヤ顔で説明してみました。
「お……おう……」
「なおクロスボウ部分は弦を自動で巻き上げ、矢を装填してくれる優れモノ! 」
「……」
「こんなの作れるんですか? ミウさんすげー! 」
トニーさんはGが苦手ではないようです、平然と感心していますね。
「しかし、お嬢ちゃん。このクロスボウ歪んでないか? 弦とか構造も何か変だし、ちゃんと飛ばないぞ? 」
うっ、それは私のデッサンが……、一応ホンモノを見ながら創ったのですが……
「大丈夫ですよ、それは見かけだけで実際はゴーレムパワーで矢を撃ち出しているだけですから」
「それはそれで既に弓じゃない気もするんだが……」
「第一階層では、罠が存在しない場合が多いから僕は後ろからの不意打ちを警戒するよ」
「そう、ダンジョンでは魔物が急に生まれる。一本道で魔物が居なかったからと後ろの警戒を蔑ろにすると、急に後ろに生まれ攻撃される恐れがある。常に全方位を分担して警戒しろ」
「了解です、地上に生まれるのもそれが理由ですか? 」
「そんな考えを調べている物好きが居たけど……難しくて覚えてねぇな……使われてないダンジョンが溢れてとか言ってる奴もいたが、検証が無理だからな、さぁフォローはするから好きに動け」
「では、ダンジョンの構造、魔物や罠やお宝が何処に居るか【サーチ】! 」
目の前にダンジョンのマップが表示され、魔物や罠が赤い点、私達を含む冒険者が青い点、お宝が黄色い点で表示されていく。
「え? 何ソレ? 」
思わずトニーさんがかぶりつきでマップを覗き込みにきます。
「周囲のマップを表示する道具です」
本当は魔法ですが道具と誤魔化しときましょう。
「すげぇ欲しい、ってかこんなのあったら僕の存在価値半減しますよ? コレ」
後で作ってみましょうかね?
マップに表示される赤い点をクリックして何が居るのかを確認します。
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コボルト(☆3)
犬のような顔をした二足歩行の魔物、常に群れで行動し人を襲う
武器を使うくらいの知能は有るので初心者には危険。
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「少し進んだ丁字路の右側に……コボルトが三体居ますね」
「そこまで判んのか……」
「では攻撃しましょう!弓子さんmarkⅡα.β.γ.Δ.ε.ζ展開! 迎撃開始! 」
私の周囲に現れた弓子さんmarkⅡシリーズ六体が脚をカサカサ動かし壁や天井を縦横無尽に走り回りダンジョンの奥に向かって行きます。
「まだ……居たのかよ……」
「うわぁ、動きが気持ち悪いくらいGに似てますね……」
流石のトニーさんも六体が走り回る姿はキツイ物があったらしく少し顔が引き攣ってますね。
「都合十体あります、無駄を省いて動きを特化すると不思議と虫の動きになるんですよね~」
程なく通路の先でクロスボウを射る音とコボルトと思われる悲鳴が何度か聞こえ静かになる。
ミウの収納にコボルト三体分のアイテムが入ってきました、ゴーレムの攻撃も私が倒した扱いになっている様ですね。
「終わりましたね、どんどん次に行きましょう!」
「……」
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オーク(☆3)
豚のような顔をした二足歩行の魔物、常に群れで行動し人を襲う。
外見はともかく、肉は美味。
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「次はオークですね、弓子さんmarkⅡたち頑張ってください」
この後、残りの四体η.θ.ι.κを呼び出し、十体によるローテーションを組みボルトを補給しつつ蹂躙していく。
「……」
ダンジョンの入り口から殆ど動かず第一階層を殲滅しました。
この階層から魔物が居なくなった事を告げようと振り向くと、二人は目が点になったまま硬直してます。
仕方ないので、今日はここまでにして帰りましょうか。
此処まで読んで頂き、ありがとうございます。




