第二話 みんなのちから
ナロウと知り合いになったお魚さんの名前は、ユウマさん。
いわゆる相互クラスタの、中核的な存在でした。
「ナロウくん、今日も頑張っているかい?」
「ユウマさん!
いつも気にしてくれて、ありがとうございます!」
ユウマさんは、ナロウの活動報告によく遊びに来てくれました。
「新作を投入したんだってね。
あとで拝読して、評価させてもらうよ」
「ほ、本当ですか?
うわぁ……嬉しいなぁ!」
そしてふたりは、雑談をまじえながら打ちとけあい――。
「ああ、そうだ……。
ナロウくんは信用できるし、よかったら俺たちのグループに入らないかい?」
「ユウマさんのグループに……ですか?」
「うん。
みんな創作活動をがんばっているし、ナロウくんの刺激になるかもと思って」
「でも……。
僕なんかが入っても……いいんですか?」
「あはは、大歓迎だよ!
実は今夜、みんなの集まりがあるんだ。――ナロウくん、遊びにおいでよ」
「は、はい!
――喜んで!」
そして、その日の夜――。
(こんなにたくさんのお魚さんがいるんだ……)
おめかししたナロウは、わざわざ深海まで降りてきてくれたお魚さんたちの姿に感激し、
「みんな、紹介するよ。
この子が今日から俺たちの仲間になるナロウくん。
まだ小説を書き始めたばかりだし、仲良くしてあげてくれよ?」
ユウマさんの声に、にこにことみんなは微笑みかけてくれます。
「こんばんはナロウさん。
私は運営さんのお手伝いをしているDといいます」
「よ、よろしくおねがいします!」
「ボクは書籍化しているSだよ。
ナロウくん、今後ともよろしくね!」
「わ、わわ……」
稚魚であるナロウにとって、雲の上の存在のようなお魚さんたち。
「じゃあ、今日は帰ったら……。
さっそくナロウくんの作品を読ませてもらおうかな?」
「え、えええッ!?」
「ぼくもぼくも!」
「では、それがしも拝読させていただきまする!」
次から次へと聞こえてくる声。
ナロウは終始とまどっていましたが……。
「――ぼくの作品が、ジャンル別ランキングに載っている!」
穴倉へと戻った彼は、はじめてランキングに入った自分の作品に目を疑います。
――いままで、見向きもされなかったのに……。
そして次の日も、
「感想も、ブックマークもポイントも……」
その次の日も、
「レビューさえも、うなぎのぼりに増えていく!」
まるで夢のような光景に、ナロウは尾びれと背びれを動かし喜びます。
「すごい、すごい……。
こんなの、ひとりでやっていたときとは比べ物にならないや!」
そしてナロウは、改めて組織の力に感動し、
「そ、そうだ……。
みんなにお礼をしなきゃ――」
ユウマさんのときと同じように、ひとりひとりに恩を返していきます。
ですがこれが、地獄への入り口だったことなど……。
いまのナロウに、知るよしはありませんでした。