第一話 はじまりの海
小説家になろうという名の海の底――。
「うぅ……。
今日も評価はもらえなかったなぁ」
深海にすむ小さなお魚――。
数ヶ月前に誕生したナロウは、自分が書いた作品にため息をつきます。
「いったい、何がいけないんだろう」
見上げた海面を泳いでいるのは、大きなお魚たち。
その姿に憧れて、筆を手にしたものの――。
前に進めない毎日に、ナロウは悲しむばかり。
「そうだ。
きっと僕は、まだ勉強が足りないんだ」
そう考えたナロウは、参考にしようと総合ランキング1位の作品を開きますが、
「なんかこの作品……」
――あんまり面白くない……。
しずかにノートパソコンを閉じ、
「でもポイントはとても高いし……。
僕の感覚が、みんなとずれているのかもしれない」
自分を納得させ、
「……明日もまた、更新をがんばろう」
疲れた身体をベッドに横たえ、しばしの休憩をとります。
そんなある日――。
総合評価 12pt
評価者数:1人
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「あ……」
ナロウは、自分の作品に評価が入っていることに気付きます。
「やった……。
やっと僕の作品が、他の誰かにみとめられたんだ!」
さらには感想が書かれていたことに、ナロウは穴倉の中ではしゃぎますが、
「これって……」
投稿者名に、おもわず我が目を疑います。
「これ、すこしだけ読んだ……。
総合ランキング1位の人だ」
ナロウは困惑しながらも、ていねいに返信を書き終え……。
「そうだ。
応援してもらったお礼に、このお魚さんの作品に評価と感想をつけよう!」
そんな純粋な気持ちから、ナロウは頑張って作品を読み切り、
『作品、とても面白かったです』
彼を傷つけないために、やさしい嘘をつきます。
その日から――。
ナロウと彼の交流が、創作の海の中ではじまりました。