表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

黒酢ノ短編集

勇者辞めますか?それとも人間辞めますか?

作者: 黒酢

 主人公は勇者(予定)。


 この物語は勇者のひとり語りです。


 異世界とか行ってみたいけどちょっと怖いですよね………私だけでしょうか?笑

 俺は勇者だ。


 俺は勇者だ。


 重要なことだから二回言った。


 勇ましい者と書いて勇者。


 いや、もちろん名前じゃないぞ?


 さすがに勇者が名前は嫌だ。


 勇者ってのは、まあ称号みたいなもんだな。


 え?なんで勇者してるのか、って?


 そりゃーまぁ、あれだ!召喚されたんだよ。


 流行りの異世界召喚ってやつだな。


 驚かなかったのかって?


 そりゃもちろん最初は驚いたさ。


 でもすぐ順応したけど。


 わりと受け入れは早かったな。


 それでまぁあれだ、「この世界をお救いください勇者様」


 テンプレだよな。


 あ、期待はするなよ………さっきの台詞吐いたのは男だ。


 がっかりだよ。


 閑話休題ー。


 さて何か聞きたいことはあるか?


 え?勇者って儲かるのかって?


 この守銭奴どもめ。


 そうだなー、召喚先の世界にもよりけりだとは思うが、俺のとこはわりと貰える。


 まあ、何だかんだで俺、この世界で一番強いし多少はね?


 特に何の努力しなくても強くなれるチート最高すぎか!


 やっぱ公務員………もとい、勇者は安定してていいわ。


 それに行く先々で特別待遇。


 尊敬の眼差し?っていうの?


 あれ気分いいね。


 あと女にもモテるモテる。


 こんなにモテたのはじめてだと思うわ。


 あー、もう元の世界には帰りたくなーい。


 ビバ勇者ライフ。




 ーと、思ってた時期が俺にもありました。


 マジでブラック。


 勇者が戦奴隷とは言ったものだ。


 あれから5年。


 俺はこの5年でどれほどの功績をあげてきたか。


 この5年でどれくらいの敵を殺してきたのか。


 もう忘れた。


 忘れるぐらいに殺して殺して殺しまくった。


 そして今では片手間に悪魔を殺せるようになった。

 

 いや、なってしまった。


 そしてー。


 今日、俺はついに魔王を殺した。




 久しぶりに王都に帰還した。


 皆が歓喜で出迎えてくれる。


 ありがとう。ありがとう。


 だが俺が一歩足を進めると、民衆は一歩後ずさる。


 もう一歩、そしてもう一歩。


 すると一人が背を向けて走り出した。


 それが合図だったかのように、次々と走り出した。


 「オ、オイ、オイ………マテヨオマエラ」


 しかし誰も待ってなどくれない。


 しばらくして王宮から兵士がやって来た。


 彼らは全身をフルアーマーで覆っている。


 なんだなんだ。


 なぜ俺を囲む?


 なぜ剣を、槍を俺に向ける?


 俺が呆気に取られていると、馬に乗った階級の高そうな騎士が躍り出てきて、震える口を開いた。


 「ど、どこからきたんだ………出ていけ化け物」


 化け物?俺に言ったのか?


 なんだよその目は。


 それじゃあまるで………。


 「オレガバケモノミタイジャナイカ」


 そう叫ぶと、剣が、槍が、一斉に俺に向かって突き出された。


 「ナニスルンダ!」


 ー。


 次の瞬間、通りは人馬のむくろで埋まっていた。


 殺してしまった。


 人間を。


 殺してしまった。


 誰が殺した?


 あぁ………俺か。


 辺りがだんだん騒がしくなってくる。


 遠くに応援の兵士の一団が見えてきた。


 もうここにはいられない。


 受け入れてもらえない。


 「………」


 俺は逃げるように街を出た。




 俺はこの5年の間、強さを求め続けた。


 当然だ。


 強くならないと命が危ないのだから。


 そして俺が持つチートが、俺の力を予想よりもはるか高みに導いた。


 より強く、よりたくましく。


 背が伸び、体表は黒ずみ、筋肉は異常なほどついた。


 しかし容姿の変化を、力の強さを、魔力の量を。


 異常だ!と言ってくれる人などいなかった。


 当然だ。


 5年もひとりで魔物や悪魔と戦っていたのだから。

 

 敵に勝つには、魔王に勝つには、人間を捨てないといけない。


 そして俺は、


 人間を捨てたたのだ。


 10年の月日が流れ、


 俺は勇者に殺された。人間を捨てた勇者に。

 最後までお読みくださりありがとうございます。


 少しでも面白いと思っていただけたのならうれしいです。

 

 よろしければ、感想・評価・ブクマのほうをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 魔王は勇者の成れの果て......ですか。 力について、深く考えさせられました。 [一言] どうも、豊平です! このテーマ、はじめは勇者のテンプレ談話かとも思いましたが(それはそれで面白そ…
2017/06/11 17:12 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ