鎮魂の銀杏
はらり ひらひら 涙は落ちて
ひらり はらはら 我が葉も嘆く
痛や 痛やと声が病み止み
我が葉に魂の鎮めを
祈り願うたな?
しわがれ声としわくちゃの手が
幾ばくも残さぬ時を分け
我らは共に幸福であった
疾く 疾く時よ流れようよ
我が友よと語らうたのを忘れたか?
失うは辛い 友よ 老いて逝くな
お前を送るは辛いのだ
この舞い落ちる葉がお前の時となればと
どうにもならぬは知っている されど
行くな 逝くな
泣くな 亡くな
寂しいのだ 友よ
お前はもう おらぬのか?
ほれ 道を黄色に染めたぞ 怒らぬか
さぁ 旨い実を付けたぞ 拾わぬか
見よ 散り様が 扇葉が 黄の色が
見事だと 友よ お前はもう誉めてはくれぬのか?
はらり ひらひら 涙は落ちて
ひらり はらはら 我が葉は嘆く
唯一人の友を思い 鎮魂の落葉を
銀杏の実は 未だ苦い