7話『勇者一行の憂鬱な昼食』
勇者キオトは、大きなため息をついた。
それは、先程起きた超時空魔法の失敗。
昨日の、事故による記憶喪失。
度重なる運命に翻弄され、パーティーの戦力は大幅にダウンした。
里帰りなんかしなければ、今頃魔王を倒して世界を救っていたかもしれない。
「ちょっと、きいてるの? あたちの話をききなちゃいよ」
勇者キオトの身長は、実はそれほど高くはなかった。
成人男性の平均よりも下だったし、小柄で小回りが効くタイプの勇者だった。
しかしながら、幼女化した魔法使いからしてみれば、それでも見上げなければならなかった。
「どうした? 抱っこならしないぞ。自分の足で歩けよ」
「そうじゃない。そうじゃないけど、まずはあたちを持ち上げなちゃい」
舌が回らない為、難易度の高い魔法は全て使えないようだ。
「はいはい、タカイタカイ」
勇者が無造作に、持ち上げると、ふわりと幼女の身体が浮き上がる。
「イヤイヤ、怖い。怖過ぎる。高いよ。おろちて、おろちてよー」
半泣きになりながら結局、懇願した為、本当に抱きかかえる羽目になってしまった。
「こうやって見ると本当に勇者さんの子供みたいですねぇ」
事情を知らない遊び人シドは相変わらず呑気だった。
「うるちゃい。全部あんたが悪いんらから」
チームワークも、今まで築き上げてきた経験も失った勇者一行は、とりあえず勇者の家に帰ってきた。
「じゃあ、とりあえず瓦礫とゴミを片付けて、お昼にしましょうか」
「仕方がない。そのあと作戦を立てよう」
「勇者さん、ベビーチェアありますか? 」
「そんなもんある訳ないだろ。ベットにでも座らせとけ」
ふと、ベットを見るとそこには毛むくじゃらの生き物が鎖に繋がれていた。
「ギャー、助けて、食べられる。」
「大丈夫。怖くない。噛みつかないから大丈夫だから」
「勇者さん、これ生ゴミですかね」
「いや、流石にゴミに出しても持っていってはくれないだろう」
自分で鎖に繋いだものの、勇者は若干、引いていた。
「すまん親父。明日旅立つ時には解放してやるから我慢してくれ。」