4話『勇者一行の気まずい夕食』
勇者達の戦闘から数時間が経過していた。
魔法使いオルカは死んだような目で床を凝視していた。
勇者キオトは、気まずい雰囲気に呑まれ、かれこれ一時間弱、無言であった。
元勇者ブライアンは、鎖に繋がれ、ベットに横たわっていた。
そして、遊び人のシドは、記憶喪失に陥っていた。
「えーと。ここはどこで、私は誰なんでしょうか? 」
あまりにも陰鬱な部屋で、ひとりだけ状況を飲み込めないシドだけがあたふたと動き回っていた。
「とりあえず夕食にしよっか」
「私、何も食べたくない。私の記憶も消して欲しいな」
「うがーうが、うが」
元勇者ブライアンの口には猿轡が噛まされていた。
「あのー、お二人はどういう関係で、私はなんなんでしょうか」
「いいよ、君は座っててくれたらいいから」
「はい。ですが、私はまだ名前も解らなくて」
「いいから、きっと一晩眠ったら。(トラウマも、記憶喪失も、親父も)なんとかなるって」
「そうでしょうか? 」
「ぁぁあぁ何も知りたくない。聞きたくない。」
夕食は勇者が手早く用意し、何とか三人は黙ったまま食事を済ませた。
野宿には慣れていたが、流石に壺の錯乱する床には寝れないので親父をどけて、オルカがベットで寝る事にした。
「あのー、この人は何か悪い事をしたんでしょうか」
「あぁ、気にしない気にしない。シド君は何も気にせず休んでね」
「はぁ、ではおやすみなさい」
「おやすみ。」
灯りの消えた部屋で、勇者は明日こそ魔王を倒し、世界に平和を、心に平穏を取り戻そうと決意したのだった。