3話「勇者一行の受難の戦い」
魔法使いオルカは激怒した。
ありったけの魔法の集中砲火はことごとく鏡によって無効化された。
毛だるまがジワジワと距離を詰める。
魔法使いオルカは恐怖した。
恐怖のあまり、魔導士の杖をぶん投げた。
「ぐわっ」
伝説の魔法の鏡といえども、物理的な攻撃を無効化する事はできず、杖の先端によって粉々に打ち砕かれた。
「くらえ、勇者の剣!!!」
勇者はとっさの判断で、この毛だるまが父親であるという事実を隠蔽しようとした。
「おい、キオト」
「くそ、こんな村の中まで、魔王の放った刺客が現れるなんて」
「おい、おいって」
「さぁ、オルカ止めを刺すんンだ」
「ちょ、お前」
「混沌よ、魔性の者を小宇宙の塵芥に変えよ!!グラビティゼロエターナりゅっ」
オルカが噛んだ為、魔法は発動しなかった。
「お前、本気で親父さんを殺す気かよ」
遊び人シドはさっきからまともな発言しか言っていなかった。
「親父? どこにいるって? あぁ、え、ウソ、まじ、親父だったの? 」
勇者はうろたえるふりをした。
「変態、バカ、近寄るな」
「落ち着けオルカ、あれは人間だ」
シドが間に入り、やっと状況が落ち着いてきた。
「にんげん?あれが?」
「そう、人間。ヒューマン。怖くない。」
「うん。」
冷静さを幾分か取り戻したオルカは、自身の今の姿に気が付いた。
「ギャー、痴漢、変態野郎!!」
シドは思いっきりぶん殴られたのち、地面に頭を打って気絶した。
勇者は見なかったことにして、自分の家に帰宅した。