18話『勇者一行とパーティー解散』
指導者であった将軍モーラントが死亡した事で、ネイチャーズは一部の後継者達を残して崩壊した。
そして、不死王亡き後、その残党も表の勢力図から姿を消した。
勇者一行も、傷を癒すため、オルカのいる修道院にて休息をとっていた。
それと同じころ、王都のとあるカフェに魔術師マフールが現れていた。
「あなたの息子が何やらまた、歴史に残る戦いに勝利したようですよマダム」
「せっかくのお茶が不味くなる話題はやめてちょうだい」
元賢者メアは、幼子を膝にのせていた。
「既にご存知とは思いますが、貴女の反応を見たくて、つい来てしまいました」
「私にはこの娘、ズズネがいるし、その男の事は知らないわ」
カップを優雅に口元に運ぶ姿に動揺は見られなかった。
「お兄たん? 」
幼女がそう尋ねると、カップの取っ手が不自然に割れて、コトリと倒れた。
中のお茶は、何か不思議な魔力によって、一滴も零れることなくカップに残っている。
「そんなに踊りたいなら、あなたが直接出向けばいいじゃない? 」
「まぁ、それはいずれ訪れるその日まで、楽しみにとっておきますよ」
「相変わらずの悪趣味ですわね」
「貴女はどうしますか? お茶のおかわりをお持ちしましょうか? 」
「遠慮しておくわ、新しい恋人に会いにいく用事があるの」
「でわ、またどこかで会いましょう」
「ええ」
マフールは、霞のように消え失せた。
ゆっくりと元賢者は席を離れた。
「今回の事で、私は自分の無力さを実感しました。」
砂場では子供たちに交じってオルカが泥だらけになりながらトンネルを作る遊びに興じている。
勇者キオトはとシドと別れの挨拶をしていた。
「本当にいいのか? 一緒に旅をして経験値を積む道もあるんだよ」
「いいんです。遊び人という職業に、どうしても馴染めなくて、いっそ僧侶になろうかなと」
「もう決めたんなら仕方ないな。また、旅できるといいな」
「はい。その時は右腕としてぜひ仲間に入れてください」
「ああ、頼む」
固い握手の後、一足先にシドは修道院を離れていった。
「さて、私も旅立つとするか」
勇者も門を出ようと足を踏み出す。
すると、いつのまにか後ろまで来ていたオルカが裾を引っ張っていた。
「ねぇキオト」
「なんだいオルカ」
「アタチ、本当にここに残るの? 」
「そうだよ、これ以上君を危ない目に合わせたくない」
「アタチがこんな姿だから? 子供で足手まといだから? 」
オルカは涙を必死に堪えながら、勇者の裾だけはしっかりと握りしめていた。
「そうじゃないよ、オルカ」
勇者は振り向いて、目線をオルカに合わせて下げた。
「君が好きなんだ。愛してるからもう、傷つけたくないんだ」
「そんな勝手、ずるい」
「勇者ってのは、たいていどんな物語でも主人公で、最初からずるいもんなんだよ」
ポンと優しく頭を撫でたあと、勇者は立ち上がる。
「そんな顔するなよ。ちょっと時の神殿まで行ってくるだけだから」
「うん、ぜったいに迎えにきてよね」
「勿論、その時は結婚しよう」
「それは、永遠の別れになるフラグだからダメ。その時は、また三人で旅をしようね」
「分かった。じゃあ行くね」
勇者は、一人きりで時の神殿を目指して新たな旅に出るのだった。
つたない構成と文章ですみませんでした。
勇者たちの冒険はまだまだ続くと思いますが、この物語はこれでおしまいとさせていただきます。
読み返す中で、誤字脱字や、ちょっと気になる表現がありましたので修正はしていきます。
ここまでお付き合いくださってありがとうございました。