12話『勇者一行と不死の軍団①』
王都までの道のりの最大の難関は、川越えである。
ユーフィニア平野を取り囲む霊峰ヴィシュヌから湧き出た小川が、四つの大きな大河となって海へと流れでており、そのすべての川に巨大な鉄橋と関所が設けられている。
モンスターが都市に侵入するのを防ぐ為でもあり、関税と通行料で懐を潤す為でもある。
建て前上はその集められた資金はインフラ工事や社会福祉の為に使われている事になっているが、実態はかなり怪しいものだった。
通行料を払えない貧しい人々は、門の外で暮らすしかなく、モンスターの脅威と隣り合わせで生きるしかなかった。
王都で生活しているのは王族、貴族や金持ちなどの一定以上の富裕層に加えて、高い税金を収められる者に限られている。
現在、勇者一行は顔パスで通行できるはずなのだが、何故か足止めをくらっていた。
「門を開けられないってどういうことですか? 」
「実は、モンスター達の活動が活発化していて、第3の門までは通行制限がかかっているんです。今は、入る事も出る事も禁止されていて勇者様といえども例外ではないんですよ」
門兵達は、申し訳なさそうに事情を説明してくれた。
「この辺りは確か、アンデット族の不死王クックの縄張りだったよな? 」
「はい。ですが、新たな勢力ネイチャーズによってアンデット族はほぼ壊滅したと聞きます。」
「死なないはずの不死の軍団を壊滅させるなんて可能なのか? 前回、攻略した時も死なないゾンビ達はかり厄介な体質だったはず」
「そこまで詳しくは知らないですが、ネイチャーズには双子の天使が居て、魔王軍とやりあったそうな」
「双子ねぇ、あたちらですら殺せなかった不死の軍団を殺せるなんて相当ヤバいやつらね」
「仕方がない。門を通らずに王都に行くなら、山越えか海路を行くしかなさそうだな」
「海は危険だけど山越えも大変そうですね
」
「さっきから聞いてたんですが、もしかして、あの有名な勇者様のパーティーですか? 」
商人風の男が突然、話に割り込んできた。
「海は今は辞めておいた方がいいですよ。海神リヴァイアサンの同族達が、怒り狂って海を行く船や飛行機はすぐに沈められてしまいます。」
「それじゃあ霊峰ヴィシュヌに登るしか道はない訳か」
勇者一行が、最初に王都を目指した際は、港から船に乗り、遭難して王都にたどり着いた。王都攻略後は、橋を渡る事に慣れていたので、この遠回りは誤算であった。
「あたちら、魔王城目前だったのにどんどん離れてるわ」
「仕方ないよ。移動魔法はもう使えないんだから。諦めて登ろう」
勇者一行は、霊峰の登山口まで向かい、ルートを再確認する事にした。




