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マンション管理人の日常  作者: みずすまし
日常
3/15

午前中のお仕事

 ようやく朝のお勤めも終わり、道行く近所のランナーだったり宅配便の人だったりと挨拶を交わしながら自分の部屋に戻る。

 住んでいるところは最上階の一室だ。これはオーナーの特権だろう。


 家に帰りシャワーを浴びて、ようやく朝ご飯。

 朝はトーストとサラダと牛乳。たまに卵が付く。一人暮らしなんてそんなものだ。


 そして実はこの時間が一番暇なのだ。

 ほとんどの人が、朝仕事や学校に行く。その家をでる時間帯は7時半~9時半。

 ビルの修繕などが必要なときは忙しいが、基本は暇。

 なのでご飯が終わると、僕はマンション内を点検して回ることにしている。

 もちろん手にはホウキとチリトリ。

 軽く清掃をしながら、非常階段に荷物は置いてないか、廊下の電灯は切れてないかなどを見て回る。


 月に一度だけ、見たくないものが置いてあったりする。

 酔っ払ったあとのごにょごにょするものが廊下にあったりすると大変だ。

 臭いが廊下に充満していたりするので、手早くモップも持ってきて掃除する。


 今日はそんな事もなく、出勤していく住人達に挨拶をする。

 少しだけ余裕がある人とは、一言二言お話しをする。


 「暑いですね」「寒いですね」「いってらっしゃい」「気をつけて」

 この四パターンがほとんどだけど。


 一人だけ変わった子がいる。

 今年高校生になる6階の家の人だ。

 マンションのある駅から3駅ほど先の共学に通っている女子である。

 可愛いなと、見守る視線でいられる自分に気づき、年齢を実感するのは内緒だ。


 そんな彼女の何が変わっているのかというと、出会いから変わっていた。

 マンション管理を引き継いで、ようやく仕事のルーチンが決まって朝の見回りをしていた時だった。

 見回りが終わり、エレベーターで最上階の自室を目指すべくエレベーターの前で待っていたら、降りてきたエレベーターに乗っていた女の子にあったのが初めての出会いだった。


 どこかの高校の制服を着た、スカート丈の少し長めの女の子がエレベーター内に立っていた。

 左手に食パンを持ち口に運びつつ、目線は右手のスマフォ。前を向け前を。

 ぶつかりそうになって慌てて避けたときに、ようやく僕の存在に気づいたらしい。

 やはり初対面なので不審者扱いされないように挨拶をするべきだと思った。


「おはよう、ちょっと前から管理人になった前橋だよ」

「……おはようございます」


 パンを口から離しながら、何故か半目で睨んできた。

 確かに食べている所に話しかけるのは悪いと思うが、そもそもエレベーター内で食べていると思わない。

 そのまますれ違い、エレベーターに乗る。そして扉が閉まる前に気がついた。

 エレベーター内に、学校の鞄らしきものが置いてある。

 その鞄を慌てて持ち上げ、今の女の子を追いかける。

 声をかけ鞄を渡して恐縮された。まぁさっきから恥ずかしよね、今もだけど。

 鞄を受け取るために手を空けるのはわかるけど、なんで僕に食べかけの食パンを渡すの?

 鞄を受け取った女の子は、食パンがない事に気づいたらしい。

 目の前にある、僕の手の中の食パンに慌てて食いつきそのまま持って行った。

 あとに残された僕は呆然とするしかなかった。


 もっとも僕がしっている女の子のエピソードはそんなものだ。

 良い管理人の秘訣とは、人の生活になるべく係わらない事なのだそうだ。


 僕は自室に戻り、趣味のプログラムを始める。

 そんなマンション管理人の午前中。

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