朝のお仕事
僕の起床時間は決まって朝の6時。
そして起床時間が、仕事時間そのものだ。
何故なら朝一番の大事な仕事が二つある為だ。
一つは、マンション周辺のゴミ掃除だ。
箒とちりとりを持って、周囲に落ちている枯れ葉やゴミのカスなどを集める。
偶にガムがこびりついていて、へらで落とさなければならない事もある。
そういった時は中腰になって、ゴリゴリと削っていく。
季節はもうすぐ夏になりそうな時間。
6時には太陽が顔を出していて、気温も上がってくる。
それにつれ、ただでさえひょろ長いと言われている体から、貴重な栄養が汗と一緒に出て行っている気がする。
そして中途半端に長い髪が顔に張り付いてくる。
それを拭おうと思っても、実は拭えない。
清掃ともう一つの大事な仕事の為に、ゴム手袋を常につけているためだ。
もう一つの大事な仕事。
ゴミ収集など、ゴミの管理だ。
マンションのゴミ集積場にあるゴミを、自治体のゴミ収集所に運ぶ仕事。
マンションがある程度の大きさになってくると、マンションのゴミを集積する場所があるらしい事は、管理人となって初めて知った事だった。
今までゴミがどのように回収されて、どのように処分されるのかも知らなかった。
そういった仕事はゴミ掃除をしている業者の仕事であり、今まで借りていたマンションは決まった曜日に、指定の場所に分別したゴミを出すだけだった。
大きくなってもそれで良いのではないかと思っていたが、とんでもない事らしい。
住人が大体100人位いるマンションだ。
それぞれが仕事があり、生活がある。当然時間帯も違う。
そういった家庭がゴミを路上の集積場に捨てるとどうなるか。
ゴミが路上に溢れてしまう事を知った。
自治体によって異なるけど、基本は朝の8時までに出されたゴミが回収される。
かつ「燃やすゴミ」(昔は燃えるゴミと言ったらしい)「燃やさないゴミ」「ビン・カン・ペットボトル」「資源ゴミ」といった仕分けされた回収日。
100人が決まった曜日に、決まったゴミを時間までに出す。
学校のような音頭が取れる人がいない限り、実はどう頑張っても無理だ。
そういったゴミはどうなるかというと、不適切なゴミとして回収されなかったり、時間が過ぎているので仕分けがあっていても残される生ゴミなどが路上に散乱してしまう。
ゴミ集積場に捨てるゴミも仕分けして下さい、とお願いしているが必ず10人は仕分けをしないで、色々なゴミを一緒にして出す。
そんなゴミは仕分けをしないと回収されないので、集積場で仕分けを行う。
その為に、肘まである厚手のゴム手袋をつけているのだ。
このゴム手袋は工場の塗装などで使われる、ちょっと特別な手袋だ。
大げさだなぁ、と思う無かれ。これがないと怖くて出来ない。
半透明のゴミ袋は、なんとなくどんなゴミが入っているかはわかる。
わかるけど、それだけだ。
うーん、紙とビンが同じゴミ袋に入っていると想像してみよう。
重さとか床に置いたときの音で「あ、混ざっているな」と分かるだろう。
じゃ分別しなくちゃ、とそのまま手を突っ込むとどうなるか。
……たまにビンが割れているので、不衛生なゴミ袋の中、ガラスで手を切るという事が起きてしまうのだ。
他には、カンの鋭利な切り口があったり、壊れた鋏がそのまま捨てられていたり、滅多にないけど包丁が捨ててあったりもした。
そういった仕分けはとても大事な事なのだと学んだ。
面倒くさい、そう思って仕分けをしない事を想像してみたんだ。
特に、危険なものを捨てる人は無意識なのかゴミ袋の奥に捨てようとする。
何処に危険物があるかはわかりにくく、ゴミの収集をする自治体の人は大量に回収するので、あまり気にしない人も居る。
そういった人たちが怪我する事が読めてしまう。
そう、だから丁寧に仕分けをするのだ。
……欲を言うなら、そもそも分別をして捨ててほしいものだけど。
最後にゴミ仕分けの最大の敵について考えてみようと思う。
臭いとホコリである。
正直、臭いは慣れてしまった。というか嫌でも慣れる。
慣れたからと言って臭いが消えるわけではないので、仕事前は専用の服を着て、終わったらシャワーを浴びる。
そしてホコリ。
これが以外と多いのだ。汁とかね。
生ゴミを捨てるとき、人は何故かこのゴミを目の敵にする。
燃えるゴミである紙と生ゴミは同じ種類なのだが、何故か分けて捨てる人が多い。
45Lのゴミ袋に包装紙とかコピー用紙などをまとめて捨て、生ゴミはコンビニのレジ袋などの小さいやつにいれて、床に置く人が多い。
ゴミ収集する人の手間を考えると、小さい袋のものは備品である45Lのゴミ袋にまとめて捨てている。
このまとめる作業時に、中のホコリや汁がピュッと跳ねるのだ。
いや、汚いよ?汚いけどやらないといけないし、元々このゴミ達みんなのだからね!?
ゴミ収集している役所の人達に向かって「くさーい!」とか「あんまり近寄りたくないね」とか言っている人いるけど、元々みんなの生活ゴミだからね。
……プログラマ時代は思いもしなかった、ゴミの整理作業。
意外と奥が深いものなのだ。
そのうち雨の人か、雪の日の苦労を語るかもしれない。
聞きたくなくても聞かせるけどねっ!