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【凍結中】青い人間とカリソメのダークスレイヤー  作者: 風間 智
序章:レモン色の神様がギューンと
2/10

転移は突然に

【前回までのあらすじ】

 学生、須川雅人はその日ゲームをしていた。

 突然コントローラーが光を発した。そして活発そうな女の子登場。

 あまりにも唐突なお誘いが雅人の心を揺らす。

「あ、あの~」

「なんでしょう?」


 前略、女の子が出てきたのですが……。


「ち、近すぎませんか?」


 それはいっぱいいっぱいになった僕と、膝の上に乗った彼女との、30cmぐらいの邂逅でした。




 

 ともかく、まずは紅茶とお菓子をお出しして、テーブルに落ち着きました。ちなみに女の子は紅茶一杯につき、砂糖スプーン3杯がお好みだそうです……なかなか、甘党だ。


「……それで、まずは……どちらさまで?」


 まず僕は頭に混沌と渦巻くさまざまな疑問の中から、思いついた順に手当たり次第聞いていくことにした。


「神様です!」

「そ、そうですか、神様ですか……」


 僕はここで改めて、えへへと笑いを浮かべる彼女の人となりを観察した。

 体の大きさとしては、身長120cm前後……小学2年生くらいか、かなり小さい。ところどころクルリと癖があるものの膝下あたりまでストンと垂れたレモン色の髪が、シンプルな大人用白ブラウス以外何も身に着けてないように見える外見と相まって、何ともアンバランスで俗世離れした印象を受ける。


 早い話が裸ブラウス金髪ロング幼女だ、あり得ない。


 神様という自己紹介に説得力は皆無だが、確かに街中でも(あらゆる意味で)気軽に会えるような人物でないのは見て取れた。


「それでは、次。どうやってここへおいでに?」

「え~? お空から、こうギューンって降りてきたの。んで、ゲームしてるようだったから割り込んでバチバチドーンって!」


 ちょっとした身振り手振りも交えながら、彼女は快活に説明してくれた。

 申し訳ないが、正直頭が痛くなった。もともと見た目からして詳しい説明を期待していたわけではなかったが、それでもあんまりだと、僕はこれからのやりとりの先行きに不安を感じざるを得なかった……伝えようとする努力は一目瞭然なのだが。


 僕はようやく次の質問で、このかわいい神様の訪問の真意について切り込もうと思っていた。


「じゃあ、神様はなんでここに?」

「それはね、それはね! 君を異世界にご招待するためだよ!」


 異世界にご招待。どういうことなんだろうか。


「異世界って、なんです?」

「えっとね、剣と魔法がバーンってすごい、夢の世界なの! ファンタジーっていうんだっけ?」

「ということは、僕をファンタジーの世界に連れて行くためにここへ来た、ってことですか?」

「そうだよ! さあ行くの!!」


 女の子は僕の腕をぐいぐい引っ張ってどこかへ連れて行こうとする……しかし、その方向にはテレビとゲーム機一式しかない。


「ま、待って待って! 待ってください、そんな困りますよ!」

「なんで? 行こうよ?」


 僕はただただひたすら困っていた。

 学業もあれば、これまで築いた人間関係、そんな人たちと作った思い出。パッと思いつくだけでも、この世界に、この地に僕を引き止める要素はあまりにも多すぎた。

 混雑する頭の中でそれを言葉に出すには難しいので、とりあえず不安なことを思いつく限りあげていくことにした。


「まず、親とか友達とか、離れたくない人がいっぱいいるんですけど」

「大丈夫、イヤになったときはわたしに言ってくれればすぐに帰すよ!」

「でも、離れている間にいろんなことが起こったら」

「安心して、向こうに行ったその時間に帰すから、こっちの時間は動かないよ!」

「それに剣とか魔法とか、ぜんぜんできそうにないんですけど!」

「わたしがいろいろつけてあげるよ、それこそ! 君の憧れるその悪魔のような力を!」


 そう言われてしまうと、僕は何も言い返せなくなってしまった。


 この素早い掛け合いの中で、僕の心は激しく揺れ動いていた。イヤならすぐに帰れる、こちらの世界での時間経過は実質ナシ、しかもあの憧れている圧倒的な力すらつけてくれるのだという。

 頭の中で反復すればするほど、ウソみたいな好条件である。

 本当に、あり得ないぐらい。


「……本当に? 今言ったこと全部、本当?」

「本当だよ、神様をしんじて!」


 このレモン色の小さな神様が、どれだけ信頼できる方なのかは今だ確証が持てなかった。

 しかしここまで話してきて僕が彼女から受け取った、活発かつ僕に言いたいことを伝えようとする懸命なイメージが、この神様の言葉を信じるようにと僕の心に働きかけていた。


 それでも僕は、未練を断ち切れずにいた。築いたものが無駄にならないということを聞いた今、もう僕を引き止めるものは無いと思いたかったのだが――情けない話、知らない場所、ましてや想像もできないほど遠くの異世界に行くだなんて。

 内心怖くて尻込みしている僕がいて、自分が意外と臆病であることを知った。

 

 そうしてクヨクヨしていた僕を、連れ出したのはやっぱり小さな神様だった。


「ほら、行こう! わたしに任せて!」

「――あ」


 そういって神様は僕の手をとった。繋がれた片手をぽかんと見つめる僕。そのまま、神様はまた眩い光を放って――。


 僕が覚えていたのはそこまでだった。

【次回予告】

 目が覚めたら、異世界でした。

 任せて安心神様パック付きで。


 次回、憧れの青い悪魔剣闘士になって異世界に転移したんですが……。

 「憧れの青い悪魔剣闘士になって異世界に転移したんですが……。前篇」

 お楽しみに!

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