センセーショナルな邂逅
初投稿です。
「……ここで居合して急襲仕込んでッ!」
僕の名前は須川雅人、21歳の学生だ。今ゲームをしていて忙しい。
「トリック急襲、当たってる間に打ち上げてトリック一段刀、すかさず大剣で兜割り!」
画面の中には最高評価を表すSuperSensationalStyle!!!の文字。
そう、僕は今とあるスタイリッシュに悪魔を倒しまくるアクションゲームをしていた。
「く~~っ!! やっぱり兄貴はカッコいいな!」
今僕が画面上で操作しているキャラは主人公の兄で、魔力で生成した剣を飛ばしながら、瞬間移動すらして近づき、鋭い刀や身の丈ほどもある大剣や格闘術を用いて、敵である悪魔を圧倒する、冷徹なる青い悪魔剣闘士だ。
僕はこのキャラ――青い悪魔剣闘士がとても好きだった。
圧倒的な力、冷徹な意思。
幼少期に親を殺されるという凄惨な過去を持ち、その喪失を経験をしたからこそ愚直なまでに力を求める青の悪魔。
敵であるはずの悪魔よりも鋭く容赦のない、ある種不器用ともとれるその男の生き様は、僕を魅了してやまなかった。
惜しむらくは、ゲーム上の正史で退場が早めで、しかもそれが決定づけられていることか。もちろん他のキャラクターも好きであったし、このゲーム自体をこよなく愛していたが、それでもこの青い男が特に好きだった。
鋭く容赦ない戦い方も、力へのこだわりも、生き方故の孤独なその背中も。
「はぁ。僕も兄貴みたいに強くかっこいい男になりたいなぁ……」
ふと口をついた、フィクションとノンフィクションをごったにした発言。
僕は普通の学生だ。そしてどちらかと言わなくても体を動かすよりゲームが好きで、そこまで悪い奴でもなく、しかし良い奴と胸を張って言えるほどでもない。そこそこのジョークを飛ばし、女の子からは優しそう、といったうっすいうっすい印象を抱かれるような男であると自覚している。
そこそこ――いや、かなり普通な僕と比べて、同じ男として虚構だとしても憧れを抱いてしまう。あるはずがないのに、なれるはずがないのに。
そんないつもの夕方だった。
「なれるよ、そんな男に。君がこちらに来てくれるなら!」
声が聞こえた。しかしどこからかまではわからなかった。僕は咄嗟に、あたりを見回す。
「だ、誰!? どこだ!?」
「ここだよ、ここ……ああもう、今出るからちょっと下がって!」
今出るから下がれ、という言葉に疑問が出すぎてわけがわからなくなりつつあった僕の頭では、いまさら胡坐をかいて座っている座布団から動くことはできなかった。
しかも混乱を加速させるかのように、僕が触っていたコントローラーがまばゆい光を放ち始めた。
「え、ちょっと、待っ――」
目を刺すぐらい激しい放たれる光に満たされる室内。思わずコントローラーから手を離し目を覆う。それでも目の前に太陽のあるがごとく眩しく、僕は驚きのあまり声を出すことすら忘れていた。
それでもやがて光は収まっていき――、
「んしょっと、はじめまして!」
後には組んだ足の上に、元気のよさげな女の子が残されるのみだった。
【次回予告】
突然現れた女の子、実は神様だったり!?
え、僕転移するんですか!?
次回、憧れの青い悪魔剣闘士になって異世界に転移したんですが……。
「転移は突然に」 お楽しみに!