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ボクと妹の不適切な関係性  作者: 九巻はるか
第二章 好きと依存の境界線
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第二話 相談の中身とその理由

 大人しくなった生徒会女子部を見て、一夏が「そういえば」と疑問を口にした。


「『猫を被ってる』で思ったんだが、アフ〇ックのマスコットって何だっけ? たしかネコとアヒルの合成獣だったよな?」


 こいつ、大人しいと思ったらどうでもいいことを考えていたようだ。なお、一夏が言わんとするアフ〇ックのマスコットとは『まねきねこダック』のことである。


「すっごい話飛んだ」と、葵が言った。

「会長の血液型って何型でしたっけ?」佐鳥が尋ねた。

「B型だな」一夏が答えた。

「これだからB型は……」葵が手を広げてやれやれを首を振った。

「B型ディスるな!」一夏が怒った。


 いつの時代も悲しいかなB型は差別される側らしい。まったく由々しき問題である。

 それはさておき、和春が腕組みをしながら、アフ〇ックのマスコットについて思いだす。


「確か……あひる猫ダックだったか? あひるが猫とダックを被っていたような気がしたぞ」

「……あひるとダックって同じものですよね」


 朔がつっこむが一夏はそれに反応せずにさらに見当違いな疑問を差し挟む。


「まてまて、アフ〇ックはアメリカ資本だろ? だから上からあひる・ネコ・ダック(ドナルド的な何か)のトーテムポール的マスコットかもしれん。アメリカだけに」


 一夏の意見に和春が首を横に振り、持論を唱えた。


「いや、それはおかしい。ドナルド的な何かだから、あひる・ネコ・ダックのハンバーガー的マスコットであるべきだろう。アメリカだけに。ちなみにあひるをパン・ネコをハンバーグに見立ててみたがどうだろう?」


 どうだろうでは無い。明らかに間違いである。そもそもハンバーガー的マスコットってなんだ? ハンバーガーキッドじゃあるまいし。


「そんな解説いらないです! なんか想像するとグロいですし、そもそもハンバーガー的ドナルドって、最初に『マク』がつくドナルドでしょ! ドナルド違いですよね、それ!」


 朔のつっこみに今度は反応した一夏が頷く。ただしそれは朔が指摘したいところでなかった。


「朔の言うとおりネコバーガーはグロい。関係ないが昔ぶーばーがー(CV:こうろぎさ○み)という、豚がバーガー的な動物紹介クレイアニメがあったな。グロくないけど」

「懐かしいな、レッツぶー。話を戻すと、ネコバーガーは確かにグロい。グロいが黒光りしてるG様ほどではないな。あのつるつるテカテカのボディは発禁モノだよな」


 話が明らか昆虫界のG様ことイニシャルG方面に逸れているが和春は構わず続ける。


「話、微妙に戻っていないですよね! それになんでいきなりG様の話に!?」

「はて? G様って何ですか?」


 佐鳥は首を傾げた。北海道に属するこの向日島にはG様が存在しないため、G様という呼び名ではどうやらピンとこないらしい。


「G様とは黒いダイヤことゴキブリだ。ほらそこにも」


 和春がにやりと口角を吊り上げて壁の隙間に向けて指をさす。するとかさかさと蠢くモノが朔の双眸をとらえた。


「ぎゃーー! なんで向日島にゴキが!」


 朔が可愛らしい悲鳴をあげた。すると、和春はくつくつと忍び笑いをしながら訂正する。


「おっと、すまんゴキブリではなくカマドウマだった。こうろぎ的に」

「グロさはたいして変わらない! あと中途半端な伏線を回収しないで下さい!」


 朔がぷりぷりと怒っていると、またも葵が何の気なしに口を開く。


「すっごい話飛んだ」と、葵が言った。

「変態の血液型って何型でしたっけ?」佐鳥が尋ねた。

「B型だな」和春が答えた。

「これだからB型は……」葵が手を広げてやれやれを首を振った。

「B型ディスるな!」和春が怒った。


 やはりB型はそれだけで差別される側らしい。本当に由々しき問題である。


「で、元々は何の話だったっけ?」

「副会長が俺たちに相談したいことがあるらしいな」

「なぜこの流れで元の話に戻った!? いやいいんですけどもね!」


 結果的にはオーライだが、何か納得できない朔であった。そんな中、会話に加わらず静観していた真冬花が思案しながら発言する。


「……あひるねコダック(カメラ的な何か)かもしれません。アメリカだけに。……あひるねって何でしょう?」

「知りませんよ! 静かだなと思ったらそんなこと考えてたんですか! その話題はもう終ってますから!」


 朔たちがそんなやり取りをしていると、ふいに時計を見た真冬花は何か用事があったらしく慌てて席を外す。


「――あっ、もうこんな時間? すいません、ちょっと私用がありますので中座いたします!」

「言うだけ言って退場ですか!」

「……真冬花のやつ、最近よく居なくなるが、いったい何処に行ってるんだ?」

「真冬花先輩、前に調べ物があるって言っていましたから、仙台銘菓『萩の月』の亜流である『萩の調べ』について――」

「そんな事よりも!」


 朔はそそくさと生徒会室を出て行く真冬花を横目で見送りつつ、一夏と佐鳥の終わりなきボケ地獄を遮りながら気を持ち直して訴えた。


「あなた達の様に金と権力しか取り柄が無く、変態的性癖を恥ずかしげも無く晒している人に頼るのは本当に死ぬほど嫌なんですが、断腸の思いで協力を頼みたいんです!」


 朔が生徒会役員を強烈に揶揄しながら頭を下げた。


「猛烈な上から目線が腹立たしいですね、この清純派ビッチは」

「まー、朔ちゃんらしくていいじゃない」

「それでどんな事を頼みたいんだ?」


 一夏が腕を組んで質問すると、朔は神妙に頷き語り出す。


「私の妹……希とは、今まで毎日一緒に下校していたんですけど、先週あたりから急に私を置き去りにして先に学園から帰るようになったんです。しかも、どこかに寄り道しているらしく、後から出た私よりも帰りが随分と遅くて……。問いただしても何も言わないし、これって一体どういうことなんでしょうか? 今までこんな事無かったから心配で……」


 話しているうちに徐々に朔のテンションが落ちていく。

 佐鳥は首を傾げて悩む一方、一夏と和春、葵はなんとなく思い当たる節があるらしく、気まずそうに顔を見合わせて言い淀んだ。


「いや、それはだな……なぁ、和春?」

「ああ……なんと言えば……どうだ、葵?」

「この状況で振られるとすっごい困るなー」

「……なにか知っているんですか?」

「知ってはいないが、なんと言うか……容易に想像が付くというか……」

「なんです! はっきり言ってください!」


 三人のはっきりしない態度に朔が食いつく。そんな時、それまで悩んでいた佐鳥が何か閃いたらしく、手をポンと叩いた。


「ああ、さとりました。よく考えてみればイージーな問題でしたね! 答えは――」


 一夏ら三人がどう伝えようかと悩んでいたのに、佐鳥が空気を読まず答えようと口を開く。


「――ばかっ! ちょっと待て!」


 和春は慌ててそれを止めようとするが、


「ずばり男ですね! 帰りが遅いのはデートでもしているんだと思います。もしかしたらラブホでヨロシクやっているのかもしれませんね! うししっ!」


 朔を嘲笑う佐鳥であった。

 佐鳥の弁に朔は寸刻放心したのち、ぽつりと呟いた。


「……希に男? 嘘だよね……」


 ありえない。朔はそう思った。

 なぜなら希は拓真一筋であるし、拓真は間違いなく希の前に姿を現していないからだ。

 しかし同時に疑心も生じる。一緒に暮らしているとはいえ、日に日に希との距離感が広がっていることを実感するくらいである。朔が知らないうちに希が拓真を諦め、新しい恋に目覚めた可能性も零ではない。

 そう考えると、佐鳥が言っていることもあながち間違いではないのかもしれない。


 ……いやそんなはずは無い! 希はそんな軽い子じゃない!


 朔は不安を胸に押しとどめながら、先程言い淀んだ葵ら三人に縋るような視線を向けた。朔は佐鳥の言葉が間違いであると言って欲しかったのだ。

 しかし、葵はバツが悪そうに視線を逸らすと、頭を軽く掻きながら正直な感想を述べた。


「朔ちゃん……私もさとりんの言う通りだと思うな……」

「……さすがにラブホは飛躍しすぎだと思うが、他は概ねその通りだろう」

「……あ……え? あはは、たちの悪い冗談ですよね! もーやだなーからかわないで下さい」


 朔は空笑いをして強がった。しかし首を横に振る葵。

 朔は葵たちの言葉が冗談でないことを悟るとよろよろと椅子に倒れこみ、真っ白に燃え尽きた。


「あわわ、さとりました! 追い詰めすぎたかもということを!」


 朔の急激な精神崩壊っぷりに煽り過ぎたことを反省する佐鳥であった。


「……もう死にたい……。生まれ変わって水底の貝になりたい……」

「朔ちゃん、しっかり! まだそうと決まったわけじゃないから!」

「そっ、そうだぞ、朔! 調べてみるまではまだ判らないだろう? だから明日、みんなで玉桂妹をつけてみよう! な? だから落ち込むなって!」

「よし、では明日は帰りのホームルームをぶっちして生徒会室に集合でいいな!」


「「「異議なーし!」」」


 こうしてなし崩し的に『希に男が出来たかも事件』の調査に乗り出すことになった生徒会執行部であった。


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