第二話 そんなこと聞いてないよ
「で、妹と言うのは一体どういうことだ?」
「その前に、警察に通報したことについて何か私に申し出ることはないの?あとちょっとで私、前科持ちに成るところだったのよ」
「三人家族であるはずの家に、四人目を名乗るやつが来たら、普通不審者の線を疑うだろうが」
あの後、通報通り警察が駆けつけて来てくれたのだが、結局この正体不明さんこと神無月 奏は、逮捕も連行もされなかった。
というのもーーー
「ーーーー俺の父さんの名前を出すのは反則だろ」
そう、こいつはあろうことか俺の父の名前を出してきたのだ。
俺の父さんは刑事だ。それもかなり優秀で有名な刑事、らしい。実際のところどれだけすごいのかは知らないが。
ただ小さいころに俺の目の前に警察手帳を見せびらかして、これ見よがしに自慢してきたのだけは
覚えている。その後、あまりにうざかったので手帳をぶんどってゴミ箱に捨ててやったら泣いた。
で、そんな父の名前を持ち出し「極秘任務中なんです」とかわけの分からん事を言うと、警察は「そうか・・・・それはアレだな」とか言って帰った。アレって何だ。
「別にいいでしょ。使えるものは使っとけって昔どこかの誰かも言ってたことだし」
「どこの誰が言ったかもわからない言葉を格言みたいに使うな。せめて名前覚えてから使いなさい。そもそもなんで父さんのーー」
「それも含めて話すから、そろそろ本題に入っていいかしら?」
奏は俺の言葉を途中で遮って話題を振ってきた。
「・・・・出来るだけ分かり易く頼む。もうあんまりツッコみたくないし」
「わかったわ。それじゃあ話しましょうか」
こうして、ことの経緯が漸く説明されることとなった。
ーーーーーーーーーーー二時間後。
「つまり、なんだ。とある事情により路頭に迷っていたお前を、海外働いていた母さんと父さんが見つけて『住むところがないならウチの家族になる?』とかなんとか言って今に至ると」
「まぁ簡単に言えばそういうことよ」
「一分以内で終わりそうな説明になぜ二時間もかかったのか俺は不思議でならないのだが・・・」
「あなたが出来るだけ分かり易く、とリクエストしたからかなり細かく説明してあげたんじゃない」
「だとしても途中のデップの一人旅の話とか超いらなかっただろ。絶対後で何かしら関わりがあるんだろう、と思って真面目に聞いてたのに、結局お前がその日見てた夢の内容だったとか・・・」
「こっちだって思い出すのにかなり苦労したのよ?お礼くらい言ってほしいわね」
どうか永久に忘れていてほしかった。
一応確認として話を聞き終わった後に父さんに電話してみたら、あっさりと認めた。と言う訳でどうやら嘘ではないらしい。それがわかっただけでも一安心だ。
本音を言えば、せめて息子である俺に一言何か言ってくれても良かったんじゃないかとは思ったが、あの人たちの自由っぷりは今に始まったことではないのでしょうがない。
ただ、事前に知らせてくれれば、こんなに面倒くさいことにならなかっただろう。
「・・・とりあえず事情は分かった」
「そう、わかってもらえたみたいで何よりだわ」
そう言うと奏は手持ちの鞄の中から何かの書類を取り出し、俺に渡してきた。
「・・・・これは?」
「入学に必要な書類」
「は?」
「私、四月からあなたと同じ学校に通うことになったから。よろしく」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あら、これも知らなかった?」
もう一度親にかけなおしました。
そんで怒鳴りました。