第三話「生徒会長Ⅰ」
前回辺りに説明しておきたかったのですが、この作品の地名・団体名は日本を除いてほぼフィクションです。
よって後に銃器が出てきてもその辺の設定はアバウトです。あしからず!
ちなみにエイジアの元はアジアですね。気付いていると思いますけど…
徐々に日の傾いてきた霧原市桜真区の中央通りを僕達三人は歩いていた。
あの衝撃のHRの後、一度帰宅した僕らは(ちなみに僕達は三人とも同じ学生向けアパートにこの春から住んでいる)今晩くらいは三人で景気付けに外食でもしようという話になり、しかし予算が豊富でもないため、学生でも手軽に行けるファミリーレストランに行こうと、この桜真区の中心部であり、商業施設の集まっている中央通りへ繰り出してきたのだ。
「しかしあれだな、こうして外食すると分かっていたら誰かクラスの奴の連絡先一つくらいは調べておいて、お近付きのためにも誘っておけばよかったな」
「そうだね伊織。あの面子とお近付きになるのは大事だと思うけど…」
「食事の場でより疲れかねない…」
僕が言葉を濁したところをキッチリ引き継いで言葉にする三月。いや、全く同じこと言おうとしてたけど言っちゃダメでしょ。三年間その疲れそうな面子と一緒にやっていかないといけないんだよ…
伊織も僕と同じ考えなのだろう。その顔には苦笑いがあった。
「けど実際どうなんだろうね。あの濃い面子がウチの学校のスタンダードなのか、それともE組がおかしいだけなのか」
「あの超真面目優等生そうな生徒会長さんもぶっ飛んだ性格してたら、結構ビックリするけどな」
伊織の言っている生徒会長とは今日の入学式で司会をしていた金髪クールビューティーの先輩のことだろう。確か奏凍子先輩とかいう名前だったはず。
「性格的な面は知らないけど、あの人、学校のパンフレットとかに載ってた情報だとかなりの才女のはず。確か卒業さえすれば『国家戦技教育資格』取得もほぼ確定っていうくらいの」
「嘘だろ、三年だからまだ十八歳で戦技教育資格だと…」
伊織が驚くのも無理はない。それだけ『国家戦技教育資格』というのは所得が困難な資格なのである。
本格的な戦技教育が国の指定した一部の学校でしか行われていないのも、それに対応できる『国家戦技教育資格』の保有者が少ないことが大きな要因の一つである。
「けど生徒会長、教育戦争においては総司令官になる人が優秀なのはありがたいよね。勝率が大きく変わってくる」
「そうね。少なくともただの個性的なバカよりは数倍マシ」
しかし三月ってやっぱり言い方キツい時が多いよね。いつも眠たげに細めてる目も相まって初対面の人には結構冷たい印象を与えがちなのも分かる。もちろん付き合いの長い僕や伊織は彼女が他人思いで優しい本性を持っていることをよく知っているけど。
「よし、全部バックに詰めたな。ずらがるぞ!」
「そんじゃ、派手に行くぜ!」
駅ビルの前に到着した僕達を待っていたのは警官により包囲され近付けないようになっていた。
何が起きているのか近くの人に聞こうとした矢先、ビルからの爆発音と砕け散る一階部分の壁面。そしてそこから出てきたいかにも強盗ですと言わんばかりの目出し帽を被った二人組の男だった。
二人は持っていた拳銃を発砲し、周囲にいた群衆と警官をどかし逃走を開始する。
それを追ってビルの中から警官が数名出てくるが、犯人の二人の方が圧倒的に足が速すぎる。靴の中に加速用機器でも仕込んでいるのか、それとも…
ただこんな光景にもそこまで驚いている人はそこまで多くはない。今の世界ではこんな状況も日常の一部なのだ。
「追うよ二人とも」
そう言って走り出す三月。ただの学生が無謀な正義感で動いているのではない。こういったところで何か貢献をすることで後の評価に反映されたりするのだ。
それに僕達は、少なくとも三月は普通の中学を卒業したばかりの少女よりは遥かに強い。
取りあえず追い付けはしないが、ギリギリ視界から消えはしない距離で犯人は中央通りを逃走している。
そして二人がとある路地を曲がって行ったのを確認して、僕達もその後に少し遅れて路地に入った。
路地に入った僕達を待っていたのは、細い路地に倒れ伏した二人の姿と、その傍らに立つ灰色のマントで顔を隠した一人の人物だった…
ゴメンナサイ!今回新キャラを出すつもりだったのですが、重要性の低い強盗二人しか出てこなかったですね…
本来次のエピソードとこのエピソードは一本のお話だった予定なのですが。
次回こそ新キャラ多数(予定)登場いたします!
と言うことで次回、闘争世界のFreiheit第四話「生徒会長Ⅱ」遂にその存在と邂逅する。