第二話「自己紹介」
やばい、このクラス、面子のキャラが濃すぎる…
窓際に座る自分の番が迫る中、僕は戦慄を隠せないでいた。
教育戦争によって安定した生活、幸せな日々を手に入れる。その為には同じクラスで三年間を共にするこの1年E組のクラスメイトとの連携は必至であったし、何より学校での友人を作るのを避けるような暗い事情もなかった僕は、一番目の少年の自己紹介から真剣に聞きに行っていた。
始めに笹川先生から指名された彼は伊織と同じか少し背が高い程度のいい体格をして、制服の着こなし、明るい目つき、どれをとっても好印象を受ける、とても善良そうな少年だった。
「大川新二。得意分野は近接戦闘だから今後教育戦争などの荒事でもそっちメインで行こうと思う。将来の目標は教育戦争で名をあげて卒業後はガッポガッポ稼ぐこと。特に手段に拘りは無いからエイジア方面の犯罪シンジケートとかでもいいかなと思っていたが、さっきのセンセーの眼光でとりあえずそっちは止めておくことにしたよ…だからセンセ、そんな目で圧力かけないでくださいな。あ、儲け話があったらいつでも教えてくれよ。それじゃ、以上!」
笹川先生の眼光におどけながら外見に全く似合わないお金へのがめつさを見せつけた大川君を筆頭として、金に強欲なくらいなら全然マシだと思わせる面子が次々と続いた。
例えば…
「私は白宮絵美。彼女はいつでも募集中ですわ。得意分野は作戦考案、参謀ポジションとして振舞わせていただきたく思いますわ。将来の目標はこの国の法律を変えて女性同士の美しき結婚を合法にすることと、それを邪魔する汚らしい野郎を皆殺しにすることですわ。あ、さっきの大川さん。是非とも今言ったことのため、その力貸して下さらないかしら。報酬は弾みますわよ。まあ、その外見的に最後は自害して頂きますが」
と完璧なお嬢様ルックな美貌をぶら下げつつも、完璧なサイコレズ宣言までかまし、挙句クラスメイトに喧嘩を売っているととられかねないことまで言ってのけたアブノーマル全開の白宮さん。
「俺は佐伯相馬。呪われた異能を持ってしまった俺がまずこのクラスに存在することを許して欲しい。確かにこの右腕と左目の力が解放された時、世界は大いなる危機に瀕するだろう。だが俺は信じている。人の心に光ある限り、この呪われた力が世界を救うカギになる日が来ると。確かに人の心のダークサイトは…(以下省略)」
と左目に眼帯、右腕に包帯、ボサボサな短髪と言う何だか逆に違うんじゃないかと思えるくらいの中二病スタイルで先生に止められるまで訳の分からない話しをしていた佐伯君。
「俺の名前は四奈枝豪。得意なものはカードゲーム。好きなものはカードゲーム。いやー今の世の中戦うなら平和かつ楽しいカードゲームにすればいいのにな~。あ、一緒にやれるヤツ募集してるから、いつでも声かけてな」
カードゲーム馬鹿の豪君、極めつけには
「七山鈴鹿。得意分野情報収集。多分そこでなら少なくともこのクラスでは最強なはず…趣味でもあるから勝手に情報集めちゃうけど、このクラスで他人にどうしても知られたくない秘密があるなら、私にだけは気を付けなさい、ふふふふふ」
と不気味な眼光をメガネの奥から放つ、野暮ったいおさげの少女・七山さん。
他にもとても個性的な面子ばかりだったこのクラス。どうしてこんな面子ばかりなんだろう。
そんな事に内心不安を抱えているうちに隣の列が終わったらしい。窓際最前席に座っていた僕の番が回ってきていた。
「南條秋です。得意分野は近接戦闘。少し離れたレンジもこなせるのでどちらかと言うと中距離戦が好きです。将来の目標は教育戦争で名をあげて幸せを掴むこと。以上です」
うん、我ながら完璧だ。あらかじめ用意しておいた僕のテンプレートをこの上なく綺麗に言ってみせたぞ。
僕が静かに心の中でガッツポーズをしていると教室の中が少しざわついていることに気が付いた。あれ?特に驚かれるようなことは何もないはずだけど…
そんな僕の疑問に答えるように笹川先生が一言
「お前、いやそれで良いんだが、普通だな」
しまった、今までぶっ飛んだ面子が多すぎて普通なことが逆に目立つ要素になってしまってる!!
結局僕の後の二人、伊織と三月はそれぞれ
「趣味はポケ○ンだ。一緒に廃人ロードを駆け巡ろうぜ!」
「常時眠いです。けどよろしく!(サムズアップ)」
と少しだけ個性を出すことで僕の二の舞を防いだ。畜生、何でこの席順で座ってしまったんだろう、僕…
こうしてこの後、簡単な今後のスケジュールを笹川先生に告げられ高校生生活初日は解散になった。
とうとう私の大好きな変態達の登場です。やっぱり好きなキャラの登場エピソードは良いですねー。
次回も新キャラてんこ盛りでお送りさせていただくのでよろしくお願いします。
次回闘争世界のFreiheit第三話「生徒会長」
その学校においてその名は、最強の証…