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干支戦記~十二支の戦い〜  作者: 寺子屋 佐助
第一章 幼児・学園編
18/25

17話 習い事

新年明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

 放課後のクヌギの森学園の校庭ではリュウ達より頭一つ分大きな上級生らが砂埃をあげて駆け回っている。新学期初めのシーズンの行事が終わり、ようやくクラブ活動のために校庭が解放されたのだ。この日を待ち望んでいた上級生は休み明けで鈍った身体を奮起して、あるものは走り込みなどの基礎体力づくりを、またあるものは大会を目指して一心不乱に技を磨いている。

 リュウとルークは羨ましそうに目を輝かせながら教室からその様子を見ていた。

 クラブ活動は、体格差や怪我の面も考慮した学校の措置により上級生のみが参加できる制度になっている。当然、入りたての新米である二匹に参加資格はなく、リュウはぶつくさとルークに文句を言っていた。

「あーあ、僕もクラブ活動したいな」

「仕方ないよ、リュウ君。僕ら入学したばかりだし、先生に聞いてもダメだったじゃないか」

「そーいうルーク君もすごく残念そうだね」

 ホームルームでクラブ活動の話題を出した際にまだ参加出来ないと言われてしまったのを思い出してリュウは口を尖らせる。それを聞いてなだめるルークだったが、自然探検クラブに入りたいと嘆いていたのを知っているリュウはあくまで同族を見る目つきをしながらしかめっ面をしていた。

「何話してるの?」

 二匹がそんな会話を繰り広げていたところ、下校していたはずの白ネズミ、ユキが戻ってきた。何やら忘れ物をしたようで、机の奥に手を突っ込みながら二匹の様子を探っている。

 リュウとルークは互いに顔を見合わせると自分たちの会話にユキを入れることにした。

「上級生は羨ましいよねって話をしてたんだ」

「僕たちだってクラブに参加したいのにさ」

 教室の外をチラリと見つめながら大体の内容を察知したユキは、二匹の不満に共感しながら解決策になりうる打開案を提示した。

「だったら習い事をしたらいいと思うな!」

 放課後の課外活動は何もクラブだけではない。なんらかの理由で遠くから通う学生や、用事ですぐに家に戻らなくてはいけない生徒のためにクヌギの森学園は習い事のススメという小さなパンフレットを配っている。その内容は校外の習い事を区域ごとに一つにまとめたもので、ユキもたまたま職員室の近くを通りかかった際に偶然一つもらっていた。

「習い事って言ったら他にもパルクールとか料理教室とか色々あるよね」

 ルークもユキの発言に興味が湧いたのか自分の家の近所にある道場やら教室などを思い返しながらユキが出したパンフレットの中を覗き込む。

「ちなみに私は笛を習うことにしたんだ!」

 リュウ達に見えるようにパンフレットを渡しながら、少し自慢げに告げるユキ。すごいね、そうなんだ!と口で言いながらも二匹の目は既にパンフレットに釘付けだった。

 ルークやユキが言った習い事の他にもまだまだ色んなものが載っているパンフレットにすっかり夢中になったリュウは、自分がその習い事をする姿を想像しながらユキに飛ぶ鳥を落とす勢いで尋ねた。

「このパンフレットってどこでもらえるの?」

「職員室の近くの棚とかにも置いてあるはずだよ」

「そっか。ありがとう!」

 リュウの食いつき具合に一瞬、ビックリするも力になれたこと自体は嬉しいのか、ユキはその真っ白な頰をほんのりと赤く染めながら小さく微笑んだ。

「ルーク君、一緒に取りに行こう!」

「うん。ユキちゃん、一応その棚まで案内してもらっていい?」

 リュウは興奮気味にルークに呼びかけると、ルークはどこか呆れたようにリュウを見返した。その後念のためにユキに案内役を頼むと、三匹は忘れ物がないように確認をしてから足並みをそろえて職員室まで向かうのだった。



 ◇◇◇



「母さん、僕習い事をはじめたい」

 パンフレットを片手に家に帰ったリュウは、着いて早々にパンフレットをミュウに渡すとそうおねだりした。

 普段なら、学校の話をする前に先に宿題をしなさい、と注意するところだったが、少々内容が突然だったがためにミュウは家事をしていた手を一旦止めると、リュウに説明を求めた。

「上級生はクラブ活動に参加できるのに僕たちは無理なんだ。そしたら代わりにユキちゃんが習い事したらいいって言ってくれて、学校からパンフレットもらってきたんだ」

 詳細を省いたせいで少々意味が伝わりづらいところがあったが、流石に自分の息子の言いたいことは分かったミュウは一瞬思案顔を浮かべると、リュウと目線を合わせた。

「何かしてみたい習い事はあるの?」

 うっ、と一瞬固まるリュウ。習い事をはじめたいというものの、何を習いたいのかまだ決めていなかったリュウは言葉に詰まった。その様子を見たミュウは小さくため息をついてからリュウの肩に手を置くと言い聞かせるようにして口を開いた。

「とりあえずまずは何をしてみたいのかよく考えて。そのあと母さんに言えば後は父さんと相談して決めるから」



 ◇◇◇



 リュウはパンフレットを睨みつけながら頭をひねっていた。

 というのも、習い事の候補を絞ると言ってもその数は多く、どれも興味が湧いてくるのだがいかんせんこれ、というものが見つからないでいた。

 音楽関係ならユキの習う笛や太鼓、ドングリの楽器作りなんてものもある。

 芸術系まで広げれば伝統舞踊に木ノ実を歯で削って創作する歯型アート、裁縫教室など幅広く、スポーツならパルクールや、サバイバルスキルを身につけるマウススカウトなどこれまた好奇心をくすぐる多くの候補があった。

 そんな中、格闘技の項目に目を通していたリュウの目に見慣れないとある武術の名前が止まった。

「はりみち?」

 針の道と書いて針道(しんどう)と呼ぶそれは、遠い昔、ハリネズミの始祖がハチの動きを模倣して研鑽してきた由緒正しき武器を使用した格闘技でありハチ流派や古典派など細分化していった今なお、ハリネズミたちの間で人気を誇る武術の一つである。

 今年から新しい教室でハリネズミ以外の生徒も受け付けます、と一言書いてあるその項目には住所と連絡先以外は特に何も記入されておらず、他の習い事の候補のように写真などは一切載っていない。にもかかわらずリュウの印象に残った理由はその住所に見覚えがあったからだった。

 そう。それは忘れもしない、例の大晦日のネコに襲撃される前に住んでいたかつてのリュウ達一家の住処だった。

あと少しで子年・・・。

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