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干支戦記~十二支の戦い〜  作者: 寺子屋 佐助
第一章 幼児・学園編
17/25

16話 ジュウ

新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

「次の方どうぞ」

 ネズミ専門の獣医であるジュウの元には今日も具合を悪くした患者が詰め寄る。

 足を捻った青年や風邪を引いた老婆、ものもらいにかかってしまった子供のネズミなどの幅広いネズミを相手取りながら、ジュウは我が家へ帰宅する時を今か今かと待ちわびていた。

「そんなに焦らなくてもいいのに」

 苦笑気味にジュウを見やるミュウ。だがそんな彼女もしきりに時計の針を意識しながらどこかソワソワしている。

 ジュウとミュウが時間を気にするのも無理はない。なぜなら今日はリュウの初めての実習の日なのだから。

「しょうがない。ほら、もう最後の患者さんを診察したんだから後片付けは私に任せて早く行きなさい」

 事故に遭ったり、怪我を負ったり、頭などを強く打ったりしていないかと休憩時間にまで口にして心配していたのを知っていたウメは親バカ二匹を追いやると、掃除を始めた。

 ウメの提案を聞いた途端、有無を言わずに礼だけ言って出て行くジュウ。

「お言葉に甘えて」

 ミュウもジュウの後を追うように短く礼をするとそのまま彼の背中についていった。


 ◇◇◇


 家が焼け、ネコに壊された家から引っ越したリュウの新しい家はツインマウスの北に流れる小川の近くの木の下にあった。食事用に栽培されている赤いカーネーションの小さな花壇に左右を挟まれ、その家は最近取り替えたばかりの干し草の屋根の匂いに包まれている。

 家に着いたジュウとミュウはリュウがまだ帰ってきていないことを確認すると、やり残した家事を片付けながら彼を待つことにした。

「ただいま」

 少ししてリュウが帰ってきた。食事を準備していたジュウは手を止めると、満面の笑みを浮かべながらリュウに尋ねた。

「おかえり。学校はどうだった、リュウ?」

「楽しかったよ」

 どこか感情のあまり籠らない言葉でそう返すリュウを見て何かを勘ぐるジュウ。しかしどう聞き出すものかと悩んでいると、裁縫をしていたミュウが助け舟に入った。

「実習はどうだった?上手く魔法は使えた?」

 その途端一気に表情が曇るリュウを見て、息子の異変を察したミュウとジュウは僅かに視線を交錯させた。その一瞬でリュウの心中を探ることを決意した二匹は、ただし深く追求することはせずに彼の返事を待つことにした。

「まあ、ご飯でも食べながらゆっくりと話そうじゃないか」

 ジュウの提案とともに一家が食卓を囲みだす。今日の献立がドングリとどこかで摘んできた野花であること、以外は特に変わらないことを確認したリュウも自分の位置を確保すると食事に手を伸ばした。

 しばらくの間、ドングリをかじる音がガリガリガリガリと続くと、リュウが一旦手を止めてジュウ達に声をかけた。

「ねぇ、父さん、母さん」

「なんだい、リュウ?」

 代表してジュウが口を開く。父親として真剣に対応しようと真面目な顔をするも、頰いっぱいに詰めたドングリのせいであまり様にはならなかった。

 その瞬間にプッと吹き出すリュウとミュウ。どうやら、今のジュウの表情で多少気を緩めることが出来たのか、リュウは少し笑みを浮かべながら語り出した。

「実習の時間にネコの模型に水魔法を当てる練習をしたんだ」

 等身大の三毛猫の模型を頭の中に思い浮かべながらリュウは説明する。すると、また表情を曇らせて彼は言った。

「もし僕が水魔法を使えていたらチュウ兄ちゃんとシュウ兄ちゃんを助けることが出来たかな?」

 リュウの目にあの大晦日の夜の情景がよぎる。もし、もっと早く大人に伝えることが出来たら事態は変わっていたんじゃないか?もしあの時点で既に水魔法を行使出来ていれば、火を消してすぐに逃げ出すことが出来たんじゃないか。

 まだ子供なのに苦い思い出を噛み締め、自分を責めるリュウにジュウはただ頭を撫でることしか出来なかった。返す言葉がないジュウはミュウと視線を交わすと、意を汲んだミュウが言葉を選びながらリュウを励ます。

「あのね、リュウ。お母さん、あなたの気持ち痛いほどよく分かるわ。でもね。いつだってどうしようもない時はあるし力不足の時だってあるわ。大事なのはそれを引きずることじゃない。私はあなただけでも助かって嬉しいと思ってるわ」

「リュウはあの日、死にものぐるいで父さん達のところへ逃げてきた。ネコに襲撃された今だからこそ、リュウ達はネコに襲われた時にどう対抗するかを学校で習っているけど、本来ならすぐにその場を去るのが当たり前の状況だった。だからあの日リュウがしたことに間違いはないんだ」

「うん、分かった。ありがとう」

 二匹に説得されてリュウは礼を言うと食事を再開した。

 無邪気にドングリを頬張るリュウを見つめてジュウは思考を巡らせる。

 もし自分がリュウと同じ状況であったなら何を優先して何をするべきだったのかを。あの日リュウがネコの襲撃を運良く免れ、命からがら逃げることが出来たのはそれこそ奇跡としかいいようがない。

 普通は近くの民家辺りに身を隠し場をやり過ごすことが正解であったようにも感じる。しかし、それは無駄でもしリュウがそんなことをしていたら村ごと踏み潰され荒らされていただろう。

 リュウの足が速かったことも逃げることの出来た要因の一つだ。もし一つでもかけていればリュウはこの場にいなかったのかもしれないと考えると、ジュウは恐ろしくて食べ物が喉を通らなくなっていた。

 ジュウは本当にリュウやミュウが生きていてよかったとつくづくそう思った。

もう少し分かりやすく書く練習をしないといけませんね、すみません。

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