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干支戦記~十二支の戦い〜  作者: 寺子屋 佐助
第一章 幼児・学園編
16/25

15話 初めての実習

皆さん明けましておめでとうございます。

更新頻度が年一のこの作品ですが、これからも末長くよろしくお願いします。

「全員いるな⁈それにナギサ先生から魔力の練り方はもう習ったな⁈それでは、水属性の君たちには今から対ネコように使える実戦形式の練習を行ってもらう」

 ナギサに引率され、ドームに移動したリュウ達はイカリの指導の元、実際のケースに基づいたシミュレーションを行っていた。イカリが生徒の出席と授業内容を確認すると、彼は発言しながら倉庫の奥から子猫と同サイズの布と綿で出来た大きな模型を引っ張り出してきた。

 三毛猫をモデルにしたのか、所々に茶色と黒が振り分けられている。

 頭から尻尾の先までリアルに再現された天敵の模型に、本能的に恐怖を覚えた生徒達はこぞって逃げ腰に後ずさった。

「ハッハッハ。心配するな、別にお前達を噛んだりしないぞ」

 生徒の様子がおかしいのか、模型の脚を軽く叩きながら豪快に笑い出すイカリ。そのまま生徒の名簿に目線を落としたイカリは適当に目に止まった名前を選んでその生徒を呼んだ。

「ホトリ、で間違いないな。試しに前に来て触ってみろ」

 いきなり呼ばれて面食らうホトリを差し出すように他の生徒達が一歩下がる。周囲の雰囲気もあいまってもう後戻りなどできないことを察したホトリは勇気を振り絞って前に出ると、恐る恐る模型に手を伸ばした。

「あっ、柔らかい」

「そうだろ、そうだろ」

 予想外の感触に驚き目を点にするホトリを見て、イカリがまるで自分の事のように胸を張っていると、授業を陰から観察していたナギサが補足の説明をした。

「この模型は防水加工もしっかりされているのでいくら水属性魔法をぶつけても壊れる心配はありません」

 ナギサが小さく魔力をぶつけてその性能を見せつけていると、イカリがホトリを下がらせながらよく通る声で告げた。

「ナギサ先生の言うとおりだ。と言うことでお前達には各自が練った水属性の魔力をこの模型の好きなところへ当てて欲しい。全員、模型を囲んで円を作れ!!!」

 ハンカチ落としをするように円形に広がる生徒達。見事に綺麗な楕円形を形どった彼らは隣に立ち並ぶ生徒達と模型の何処を狙うかを話し合いだした。顔面、頭部、脇腹、尻尾など様々な意見が飛び交う中、一匹弱気な発言をする生徒が現れた。

「例えネコでも傷つけるのは良くないと思う」

 他の生徒達のように魔力を練ろうともせずに俯き、立ち尽くす生徒の姿に気づいたイカリは一旦全員に中止の号令をかけると、その生徒の側に寄りながら語りかけた。

「優しさだけでは生きてはいけないのが俺たちネズミの宿命だ。この弱肉強食の世界で生き残りたければ、天敵に食べられない力、強さを持っていなければならない。どんな困難にも立ち向かう勇気と手段を持たないやつの先には文字通り死、が待っている。わかったな?」

 イカリの雰囲気に呑まれてか他の生徒達も一語一句逃さないように真剣に耳を傾けている。辺りが沈黙に包まれる中、全視線が自分に集まっていることを肌で感じたイカリは話しかける対象を個人から全体に切り替えると、出来るだけ切実に、けれども押し付けがましくはない真摯な態度で続けた。

「まだ親元を離れていないお前達には理解出来ないかもしれないが、いずれ分かるときがくる。どうか肝に銘じておいてくれ」

 今一度全てを理解したものは皆無で、生徒のほとんどが半信半疑だったが、言葉の奥に潜む重みは感じとれたのか、全員がコクリと首を縦に振ると、今度は本番だぞ、とでも言うかのように各自真剣な表情で魔力を練りだした。

「本日の目的はお前達がネコに魔力を打ち込むためらいを無くすことだ。準備が出来たものから魔力を放ちなさい。でははじめ!!!」

 イカリの号令が響いた。

「エイ!!!」

「トウ!!!」

 魔力を速く練り上げた好奇心旺盛で血気盛んな生徒から順にネコの模型の体に当てていく。少々内気な生徒やまだ魔力の扱い自体に慣れていない生徒が徐々に加わっていくと、次第にネコの模型が濡れている時間も長くなっていった。

「慣れてきたら出来るだけ急所を狙うんだ。急所に当てればネコは怯み、ネコが怯めば一瞬の隙が生まれ、一瞬の隙があれば逃げることが出来る」

 通常はネコに会った際、真っ先に逃走経路を確認したあとに逃げることが優先されるが、もちろんネコを回避出来ない場合も想定される。その時に重要なのがじぶんで逃走経路を作れるかどうかだ。イカリはそれを知識としてでは無く体感や経験で覚えさせようとしていたからか、声に熱がこもっていた。果たして何匹がイカリの意図を把握したのか定かではないが、信じられないくらいに全員が集中して取り組む事が出来ていた。

 その内至近距離で打つ者や、魔力を小刻みに放出する者など、バリエーションに富んだ攻撃が出てくると、イカリはその度にその生徒の近くに寄り、的確なアドバイスをした。

「そこまで!!!」

 時間が経ち、やがてイカリの号令が再び響きわたると、生徒達はポツリポツリと作業を中止し、視線をイカリの方へと向けた。

「みんな初めての実習だったのに良くやった。全員、今日の目標を達成したとともに新たな課題も見えてきたと思う。そんな中、自主的に自ら考えて先生に言われずとも別の攻撃法を試すやつがいたのには驚いた。これからも色々と挑戦して自分はこれ、といったネコの対処法を見つけていってほしい。次回から個人と連携の二つに分けて授業を進めていく。こちらからは以上だ」

 イカリが手でナギサの方を差す。ナギサは全員の視線を感じるとゆっくりとその日の授業の最後の締めにかかった。

「皆さん、お疲れ様でした。今日はネコとの戦闘訓練を元にした実習でしたが、水を扱えることが出来れば火事の消火に役立つ他、非常時の飲料水の確保も出来ます」

 一瞬リュウの耳がピクリと動いたが、ナギサはそれに気づかなかったのか、彼を素通りしながら言葉を続けた。

「そんな水属性をマスター出来るように共に頑張っていきましょう。今日はここで解散とします。運動した後の水分補給は忘れずにお願いします。ではまた次回」

 生徒達がスッキリとした表情を浮かべながら意気揚々とドームを出て行く。彼らを見送っていたイカリとナギサはその中にどこか思いつめた表情を浮かべた生徒がいることに気づかなかった。

学校に関する説明は大まかにしたので、次回からようやくリュウとその家族に焦点を当てたいと思っています。お楽しみに。

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