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干支戦記~十二支の戦い〜  作者: 寺子屋 佐助
第一章 幼児・学園編
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9話 魔法の授業

 リュウの通うクヌギの森学園はツインマウスに住むネズミの子供だけではなく郊外やそれ以外のところから様々な種類のネズミが集まるとても有名で大きな学園である。

 授業の内容と敷地の広さから代々ネズミの名門校と呼ばれていて数々の偉人達がこの学園から卒業していった。

 この学園の特色は一つは前述で述べた通りの広い敷地だ。ネズミの集落が一つ分入るか入らないかの大きさといえばその広さは一目瞭然だろう。

 もう一つの特色はなんと言っても授業の内容。まずは基本的な言語学や数学から理科や社会を始め、比較的珍しい天敵と戦う為の戦闘の授業などが充実している。

 何よりも有名なのは魔法を使った授業で大抵の外部生はこの授業を目当てにやってくることが多い。

 かつては理論だけの授業だったのだが、近年におけるネコの襲撃への対策法として注目され、今では専門家を呼んで実戦形式の授業も行っているのだ。

 今日は群青色のハツカネズミ、リュウにとって大事な日。何故なら今日はリュウ達新入生にとって最初の魔法の授業の日なのだから。



 ◇◇◇



 てくてくと一年二組の生徒達が小走りで先生の後をついていく。入学式から早くも一ヶ月以上が経過し、少しずつではあるがクラスの団結力も見えはじめていた。

「ねぇ、リュウ君はどんな魔法が使いたいの?」

 クラスが賑やかに行進を続ける中、列の後方では白い毛をしたネズミの女の子が群青色のハツカネズミ、リュウに声をかけていた。

「うーん、そうだなぁ……」

 炎を操る魔法や風を使って自由自在に飛び回ることを頭の中に思い浮かべながらリュウは憧れていた魔法のことについて考えた。

 いずれも魅力的で、リュウはなかなか答えが出せなかった。仕方がないのでリュウは上手く誤魔化すと、そのままリュウの後ろにいる少年に声をかけた。

「ルーク君はどんな魔法が使いたいの?」

 知的なイメージをうける丸めがねをかけた灰色の毛のルーク、と呼ばれた少年は丸めがねをクイっと掛け直すとほとんど間を空けずに答えた。

「僕は木か土の魔法が使いたいな。それでお父さんと一緒に植物の生態の勉強に使うんだ」

 出ている歯と丸めがねを鈍く光らせながら話すルークは何かを企んでいるように見えて、リュウは僅かに苦笑いを浮かべた。すると、リュウの前方から先ほどリュウに声をかけていた白い毛の女の子が耳をピクピクと動かしながらルークに賞賛の言葉を贈った。

「凄いね、ルーク君!もう魔法をどう使うか考えてるんだ!」

 えっへん、と鼻を高くしながらも嬉しそうに照れるルークに微笑みかけながらそう言うと、白い毛の女の子は前を歩いていた女の子とまた話しはじめた。

 リュウも凄いね、と感嘆しながらルークを褒めていると動いていた列が止まり出した。どうやら体育館に着いたらしい。そう判断したリュウは小さく深呼吸をしながら背伸びをして一番前にいるクラスメイトがまた歩きはじめたか確認した。

 一組の担任の先生が開くドアからキィーっという黒板を引っ掻くような音が聞こえてきた。リュウは思わず耳を塞ぎながらドアが完全に開くのを待っている。

 やがて一組の生徒達がぞろぞろと体育館の中へ入っていき、二組もゆっくりと動きだした。

 もう一度深呼吸をするリュウ。心を落ち着かせたリュウはそのまま大きな期待を胸に体育館の中まで進んでいった。



 ◇◇◇



 広々とした体育館の中でリュウ達一学年一同は大きな円を作って床に腰を降ろしていた。生徒達は授業がはじまるまでの間ワクワクしながら談笑している。

 やがて全てのクラスが入り終えると、各クラスの担任と学年主任の先生が円の中央に集まり体育館に響き渡る声で生徒達に静かにするよう呼びかけた。

 少しずつ声が途切れていき、最終的に体育館内が外の風の音が聞こえてくるぐらいの静寂に包まれると、学年主任のぽっちゃりとしたネズミが話しはじめた。

「おはようございます、皆さん。元気ですか⁈」

 彼の言葉に一斉に返事をする一年生達。彼は満足そうに首を縦に振ると、今度は表情を真面目な顔に変えてから話を続けた。

「今日は皆さんが待ちに待った魔法の授業の日です。そのことについて私から注意と説明をします。さて皆さんは魔法と聞かれたら何を思い浮かべますか?地面を盛り上げたりお湯を沸かしたり今では様々な用途で魔法を使っていますが、魔法というのはかつてはあまり馴染みの無かった比較的新しいお勉強です。ではどうして皆さんは魔法を習うのでしょうか?何故皆さんが魔法を習うのかというと、最近ではネコに襲われるネズミの集落が増えてきていて、近頃はそのネコの対処法として利用されているからです。それではもし皆さんがネコに襲われたらどうしますか?どうやって自分を守りますか?この授業では自分を守る護身用の為の魔法を習います。早速始めたいと思いますがここからは各クラスの担任の先生方にお願いしたいと思います。それでは皆さん魔法の授業を楽しんでください」

 長い長い学年主任の説明の後、各クラスの担任はそれぞれのクラスを引き連れ各自の場所へ散っていった。



 ◇◇◇



 体育館のとある一角。リュウの所属するクラスは緊張が解け切ったかのように騒ぎながら魔法についての話をしていた。

「魔法を使う前に一つだけ重要なことを伝えます」

 そんな中リュウのいる二組の担任、ヒヨリが真剣な面持ちでクラスに語りかけていた。

 生徒達はその圧力を感じさせる気迫にただならぬものを感じ、一気に静かになると、体をヒヨリの方へ向けた。

「たった一つだけ魔法を使う際に気をつけなくてはいけないこと、いいえ、絶対にしてはいけないことがあります。皆、それは何だと思う?」

 まるで息があったかのように首を傾げる二組の生徒達の中、一人下を向いたまま手をあげる者がいた。ヒヨリはその子をチラリと見るとそのままその生徒の名前を呼んだ。

「リュウ君……」

 群青色のハツカネズミの少年はしばらくの沈黙の後、僅かに口を開きながらボソリと呟いた。

「悪いこと……」

 何かを思い出すようにいうリュウに対し、ヒヨリは固く頷くと、今度は全員に聞こえるよう声を張り上げた。

「魔法はとても便利であって同時に危険でもあります。リュウ君が言ったように魔法を悪いことに使ったら誰かが傷ついてしまうかもしれません。だから皆も絶対に気をつけるって約束出来たら魔法を使ってください。分かりましたか?」

 誰かが唾を飲み込んだ。ヒヨリが一人一人の目を見ながら確認をとる。全員が頷いたのを見たヒヨリは真剣そのものだった表情を和らげると、今度は明るい口調で語りかけた。

「それでは改めて魔法の授業を始めます」

 クラス全体から歓声があがった。リュウも先ほどの暗い表情から一転して目をキラキラと輝かせている。一瞬で賑やかになった子供達に笑いかけながらヒヨリは言葉を告げたした。

「ですが、その前にまずは皆の魔力の属性を調べなければいけません。そろそろ他のクラスも話し合いが終わる頃だと思うんだけど…」

 すると、学年主任が布が被された何かを台の上に乗せて舞台の上に現れた。

「それでは皆さん、まずは一組から魔力属性を測っていきましょう」

 そう言ってサッと布を引く学年主任。布の下から現れたのはどこまでも透き通った透明な水晶玉だった。

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