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お金の大事さを知りましょう

俺が知ってる中で、史実での劉表の動きを阻害した原因は大きく分けて二つある。


 一つ目は、当時最大勢力を誇っていた袁紹が、官渡の戦いで曹操に敗北したこと。曹操軍一万と袁紹軍十万が戦い、曹操軍が大勝したというあの戦いだ。十倍の兵力差を持って開戦したこの戦いでは、劉表だけではなく他の諸侯も、当の曹操でさえ、当然袁紹軍が勝つだろうと内心予想していた。この大番狂わせで劉表の目算も大きく狂い、知らせを聞いた劉表は執務室で嘆いたという。まぁ、その気持ちもわかる。


 二つ目は、直属軍の弱さである。史実における劉表軍は、ほとんどが蔡瑁、蒯越、蒯良など豪族の軍で以て編成されていた。軍隊の力がそのまま権力につながる当時において、劉表の命令に豪族が従わないということも多々あったことだろう。劉表が思い切った軍事行動をとりにくかったのも、こういう理由が影響している。

 では、直属軍を強化するためにはどうすればいいか。人材募集、募兵、鍛錬、武器防具の強化、などなどいろいろあるが、すべてに共通するのは金である。人材を雇うにしろ、兵を募り鍛えるにしろ、武具を作るにしろ、すべて財力がないと話にならない。つまり、強兵より先に富国である。


 今の世の中もそうだが、歴史上権力争いが絶えないのは、権力の椅子に限りがあり、かつその椅子に座りたい人が多いからである。俺が今から生きていく時代で争いが絶えないのは、根本的には皇帝の座は一つしかないのに、数十人の諸侯がこぞってその椅子に座りたがったせいだ。そっくりそのまま同じことが荊州の刺史についていえるし、もっといえばお金についてもいえる。荊州に限らず、権力を持つためには財力が必要不可欠だからだ。


 数年前、ふとした拍子に王粲と議論になった際にも同じような話になり、ならば椅子を増やせば喧嘩なんて起こらないだろう、という答えになった。さすがに権力についてはそうはいかないが、財力については簡単に実現できる。要するに、お金をみんなが欲しいだけもらえるくらい、国を富ませればいい。結局、富国である。

 荊州を平和にするにしろ、天下を統一するにしろ、まずは国を富ませなければ話にならない。



 とはいえ、俺は内政ができるほどの武将じゃないのだ。儒学で思想を説くことは可能でも、現実的にどうやって国を富ませればいいのかは全く分からない。蒯良、蒯越らに任せてはいるものの、彼らもそこまで明るくはないため、遅々として進まない。

 さすがにこれでは先が思いやられるため、この中で一番信頼できる王粲に一時暇をやって各地の有能な内政官を見つけてくれるように頼んでおいた。武芸大会の段取りもあらかた終わったようで、さっそく昨日出発してくれた。誰か見つけてきてくれることを祈りつつ、内政を行う毎日だ。



 最近長沙郡あたりがきな臭くなっていると聞く。少し警戒しているが、当面は配下たちに内政に専念するよう言っている以上、率先して軍を動かすことはできない。時間的にも、金銭的にもそんな余裕もない。

 考えれば考えるほど逸る気持ちを抑えつつ、俺は目の前の書類に向き直った。

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