鏡界帰のフシギ
鏡界帰学園。それが、僕が通う中学の名前だった。
名前の由来なんて知らない。僕は、普通に学園生活をおくりたかった。
ただ、それだけだったんだ。
「鏡界帰学園の噂っつってもさ、たいしたことねぇよなあ」
同級生の太一が、遠くを見ながらそういった。
「どうせ、噂だし・・・・」
鏡界帰学園には、不気味な噂があった。
「三日月の赤く光る夜。学園の踊り場にあるあの古びた鏡の前を通ると、鏡の世界に連れて行かれて、元の世界には戻れなくなるんだって。」
不気味なモノだけど、七不思議みたいって笑う奴もいた。
だけど、あの踊り場は、人通りが少ない。
皆、昼間でも通ろうとはしなかったからだった。
「なあ海月。今夜、三日月だろ?この噂本当か、試してみようぜ」
太一は怖い物知らずだ。・・・なんてこともない。
どうせ強がって、女の子にいいとこ見せたいだけなんだろうなぁ。
僕は海月。うみづきって読むんだけど、よくくらげと間違えられる。
太一は気に入って、僕の事をくらげと呼んだ。
「確かに今夜は三日月だけどさ・・・噂は赤い三日月なんだぞ。赤い三日月なんて・・・あるはずないじゃないか」
「・・・あったら、困るだろうが」
・・・はぁ。
太一は僕より怖がりなのかもしれない。全く、ばかだなぁ。
僕は噂なんて信じない。
僕が一言言ってやろう。そう思ったときだった。
「何かよからぬ事を耳で聞いたんだけど・・・・深夜の外出は禁止されてるはずよ」
凛とした声が、後ろから聞こえた。
「げっ・・・イインチョウ・・」と太一は小声で言った。
うちの学園には、学級の1つ1つに委員長がいる。
学級委員長・・・いわば学級のボス。
これはまずい。そう、悟った。
「最近は、色々物騒なの。行方不明事件だって・・・」
「「行方不明事件!!」」
吃驚して、太一と海月は大声をあげた。
委員長は大きくビクッと肩を揺らすと、小さく頷いた。
「これは極秘よ」そういって、小さな声で委員長が喋りだした。
委員長によると、鏡界帰学園の周辺は事件があまりなくて平和らしい。
じゃあ別に物騒じゃないじゃないかというと、委員長は首を横に振った。
「10年に一度だけ・・・なぜか1件だけ行方不明事件があるのよ。必ずね。その10年たった10年目が――――――・・・・」
キーンコーンカーンコーン・・・チャイムがなった。
“今年なのよ”