ハロウィンは美味しいもの
ハロウィンですね!
というわけで、ハロウィンをネタに書いてみました。
「トリック・オア・トリート」
とある季節の末のある日、カーヴァンキスやオースティア、サーファイルスは揃って末の妹の部屋に来ていた。そして、揃ってその言葉を放つ。
「へ?」
そして、いきなりの言葉に反応できないエーデルフィアに対し、三人揃って、ニコニコと微笑みながら、手を出す。
「今日はハロウィンだよ?」
「だから、ほら」
「お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうよ?」
兄姉たちのその言葉にエーデルフィアの目は見事に真ん丸になる。エーデルフィアは、この世界にまでハロウィンがあると思っていなかったのだ。
だが、兄姉たちが言うのならば、それはきちんと存在しているのだろう。だが、自分の考えるハロウィンと、この世界のハロウィンが同じとは限らない。そう思ったエーデルフィアは、ハロウィンとは何か、兄姉たちに尋ねていた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、はろうぃんって何?」
「うん? ハロウィンって言うのはね、仮装をして悪霊を追い払うお祭りだよ」
「んっと、それとお菓子、何の関係があるの? 繋がり、ないよね」
「んー? そういえば、そうだね。何でだろ」
「お母さんたちに聞いてみる? お母さんたちなら知ってるかも」
兄姉たちから聞いた話によると、この世界のハロウィンも日本のハロウィンも、対した差はないようだった。だが、やはりここまで聞くと、徹底的に聞きたい。
結果、子供達は揃って両親のもとに話を聞きに行くこととなった。
「へ? ハロウィン? あぁ、確か昔召喚された異世界人が伝えたものだったと思うぞ?」
「異世界人!?」
「ああ。自分の国では、こうやって魔を祓うのだと言って、ハロウィンのことを伝えたらしい」
「その異世界の人の名前とかって、分かるー?」
「確か、リュージ・サイトウだったかな。それがどうかしたか?」
子供達が尋ねると、フォンシュベルやエイシェリナは記憶を漁り、答えをくれる。
その答えの中で、エーデルフィアはある一つのことに考えが集中していた。
―――異世界人。
―――リュージ・サイトウ。
その名前は、どう考えても日本人としか思えなくて。
つまり、昔、日本人がこの世界に召喚されたことがある。
ま、いっか。
しばらく考え込んでいたエーデルフィアだったが、考えを放棄する手に出た。昔召喚された人のことを考えても意味はないのだから。
そして、一番の疑問を投げかける。
「で、ハロウィンとお菓子の関係性は?」
「伝わった話によると、そうやって集めたお菓子で祭りを開き、その陽気で悪霊を祓っていたそうだよ。だから、ハロウィンではお菓子をせがむようだ」
「へー」
「じゃあ、お菓子を集めてお祭り、する? 小ちゃいの」
「ふむ。ならば、今日の食事はハロウィンに沿ったものを作ろうか」
「ふふ。オースティア、エーデルフィア、おいで。ハロウィンは仮装するものだから、可愛く仮装しましょ」
エイシェリナはそういうと、娘たち二人を引き摺りながら洞窟の奥へと消える。そのときのエイシェリナは、ここ最近では見られないほどに機嫌がよかったという。
そして、母、エイシェリナによってしっかりと仮装させられたエーデルフィアとオースティア。エーデルフィアはドラゴンの姿で黒いとんがり帽子をかぶり、背中にはケープのような黒いマントをつけている。
そして、オースティアも似たような格好ではあるのだが、オースティアは人態だ。黒いとんがり帽子、背中にはかわいらしいマント、そして、下は少し短すぎるのではないかとフォンシュベルが突っ込みを入れたくなるくらいに短く、ひらひらとしたスカート。
そして極めつけは、オースティアとおそろいの格好をした、エイシェリナ。これでフォンシュベルの理性は崩壊した。
「カーヴ」
フォンシュベルは静かに言うと、暗にカーヴァンキスにこれからは大人の時間だから部屋にいろと訴え、自分たちから離れさせる。そしてもちろん、子供たちがいなくなった瞬間に、二人は大人の時間へと突入した。
しばらく時間をおいてカーヴァンキスたち、子供らが戻ってきた後、フォンシュベルは「最高の一日だった」と最高の笑顔で語る。そしてエイシェリナの服は、誰が見てもわかるほどに着崩れていた。自重しろ。
まあ、きらきらと輝いていたフォンシュベルや少し疲れた様子のエイシェリナが元に戻ると、今度こそハロウィンの祭りの準備だ。
「せっかくだ、町の人間を巻き込もう」
その後、フォンシュベルの提案によって町の人間たちも巻き込まれ、エーデルフィア含み、子供たちが揃って仮装して町の大人たちの下を巡ることとなった。
「トリック・オア・トリート!」
そして子供たちは、ハロウィンの定番文句を言いながら、町の人間たちの家を順に回って行く。そのたびに大人たちはにこやかにほほ笑みながら、子供たちにお菓子を渡していった。
「おやおや、小さき竜神様もですか」
「いいでしょ? 私も、まだ子供だよ?」
「私たちより年上でしょうに。ですが、竜神様方の中では、まだまだお子様なのですね」
「うん! でしたら、お菓子を渡さないわけにはいきませんね。どうぞ」
「ありがとー」
その中でエーデルフィアのみ、実年齢を挙げられて子供ではないのではないかと笑いながら告げられたものの、それでもまだ立派に子供のエーデルフィアは、町の大人たちから順調にお菓子をせしめていた。
そして子供たちが町にある家をほとんど回り、町の中で広場となった場所へ行くと、そこでは大人たちが祭りの準備をしていた。………大量の料理だ。
大量に並べられた料理のうち、肉類はフォンシュベルたちドラゴンが捕らえてきたもの、野菜類は、町の人間たちが作ったものだ。両者、互いに持ち合って料理の準備をしていた。もちろん、エイシェリナは見学だが。
「お、子供たちが戻ってきたようだな。いっぱいもらったか?」
「いっぱいもらったー!」
そんな中で、祭りの準備をしていた大人の一人が、お菓子の入った袋を持った子供たちがやってくることに気付く。
「おかえり、エーデルフィア。エーデルフィアもたくさんもらえた?」
「ただいま、お兄ちゃん、お姉ちゃん。うん、いっぱいもらえたよ! ほら!」
エーデルフィアがたくさんお菓子の入った袋を見せると、そんなエーデルフィアがほほ笑ましいのか、カーヴァンキスたちは揃って相好を崩し、エーデルフィアを撫でる。ちなみに、途中からそれにエイシェリナも参加した。
「やっぱりエーデルフィアはまだまだ子供よね。可愛いんだから」
「ふーんだ! まだ、五十にもなってないもん、子供だもん」
「そうね。エーデルフィアはまだまだお母さんたちの小さな子供よね」
「うんっ!」
「おおーい! 皆の集、祭りを始めるぞーい!」
そうやってエイシェリナたちがエーデルフィアを愛でていると、町長が大きな声をだし、町の人間たちを集める。
そうして始まった祭りは、見事なものだった。大人たちは酒を飲んで騒ぎ、子供たちは子供たちでもらったお菓子を食べながら騒ぎ、酒を飲まない大人たちもそれなりにおしゃべりに花を咲かせた。
もちろんそれは、フォンシュベル、エイシェリナ、カーヴァンキス、オースティア、サーファイルス、エーデルフィアとて、同じこと。みなが揃って騒ぎ、はしゃぎ、魔を祓っていた。
そして、祭りの締め。これを言わねば、ハロウィンは終わるまい。
―――――――ハッピーハロウィン!!
なお、リュージ・サイトウさんは
適当に考えた人です。
この世界にハロウィンを作るのに、無理やり
作られた人です。
この話以外には、一切関係ありません。
なので、エーデルフィアじゃないですが、
ま、いっか。です。