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まさかの転生物語  作者:
番外編
48/53

とある少年の独白


エーデルフィアが堕竜に堕ちる際に、

エーデルフィアの体を奪った少年のお話。


Twitterでこの少年の正体は

何なのかと疑問を呟いてた方が

いらっしゃったので、書いてみました。


 僕は、こんな世界大嫌いだ。

 こんな、汚れきった世界を壊したいと思うのは、罪なのか。


 ―――いいや、罪ではないだろう。

 だって、この世界は真っ黒に汚れきってる。なら、壊してもいいだろう。


 僕にとって、この世界は僕を召喚して、やることをやったら僕を殺した、むかつく世界だ。



 遠い昔、僕は当時僕を召喚した国の敵となる者を退治するために呼ばれた。わざわざ異世界から、当時学生だった僕を呼び出した。呼び出していきなり、勇者として敵を倒せ、滅ぼしつくせとかなんとか言われて、適当な武器を持たされ、すぐに城を出された。

 城を出され、何とか戦いに戦って、何とか頑張って敵を退治した僕だったが、その後国に帰ってからが大変だった。

 まず、本当に敵を退治したのか疑われ、その間は腫れ物に触るような扱いを受けた。

 そして、敵を退治したことが分かった瞬間に、僕は国の礎になるのだと言われて、殺された。―――いや、殺されそうになった。


 敵を退治したら、元の世界に戻してくれると言っていたのは、嘘だった。

 それに怒り狂った僕は、その場にいた王族、貴族たちを皆殺しにして城から逃げた。だが、生き延びた王族たちに追っ手をかけられた。

 必死に逃げてはいたのだが、それでもやはり、個人では国には勝てなかった。


 途中でドラゴンの集落に迷い込み、そこで事情を話して協力を得るまでは、僕は夜も安心して眠れない日々を送っていたのだ。

 ドラゴンたちが協力してくれるようになってからは、少しずつ睡眠時間も増え、体力の回復もできるようになった。

 あの国の王族たちは、ドラゴンに手を出すのはさすがに気が引けるのか、しばらくは何もされなかった。

 だが、ある時点からはそれもなくなり、とにかく攻撃が飛ぶようになってきた。大半の攻撃は強いドラゴンが抑えてくれたが、それでもたまにドラゴンたちのガードを避けて集落に入ってくるものがいた場合は、僕が対応した。


 そのうち、僕も隠れるための方法を考えるようになった。

 気を隠すなら、森の中。ドラゴンの集落にいるのならば、僕もドラゴンになればいい。


 そう思ってからは、僕は王族たちに倣った魔法をまた勉強しなおし、何とか僕もドラゴンに変身できないか。

 そうすれば、追っ手も何とか撒ける。僕も、生きていける。

 それに、魔法を研究すれば、元の世界に帰る魔法も見つけられるかもしれない。


 そうやって研究を進めて数年。僕は僕がドラゴンになるための方法を手に入れた。僕は、魔法を使ってドラゴンになった。

 ああ、これで僕が僕だと特定されない。

 ドラゴンになったことによって、僕はドラゴンの持つ力も手に入れた。本家本元のドラゴンには及ばないながらも、それなりに。


 だが、それは逃げにすぎなかった。

 あの国は、僕がなかなか見つからず、殺せないと知った時点で、まだ弱い子供ドラゴンを捕らえ、殺すようになった。

 最初は、一匹。一匹殺せると、図に乗って何匹も同時に捕らえて殺していった。

 それが続いたことで、ドラゴンたちも申し訳なさそうに僕を追い出し、そして、すべてが終わったら戻ってこいと言ってくれた。

 ドラゴンたちは優しくて。だからこそ、僕はドラゴンの集落にいてはいけなかった。


 僕はドラゴンの集落を出てすぐに、あの国に向かった。僕が死ねば、子供ドラゴンたちは殺されなくなる。

 ――――僕さえ、居なければ。


 だが、僕が大人しく国に捕まり、牢に入れられた後も、子供ドラゴンたちは捕まり、殺され続けた。

 曰く、恐怖の対象は取り除くべきだ、と。


 許せなかった。

 許せるはずが、なかった。

 子供ドラゴンが殺されるのが嫌で、僕は大人しくこの身を人間に捕らえさせた。おとなしく、殺されてやるつもりだった。

 だが、それでも。それでも人間たちはドラゴンたちを殺す。



 ―――ならば、僕が大人しく捕まっている必要はない。

 ―――こんな世界、壊し切ってしまえばいい。



 怒りに身を任せた僕は、いつの間にかドラゴンの姿になっていた。だが、今の僕の感情にはちょうどいい。ドラゴンならば力もある。こんな世界、壊してしまえ。

 みんな、みんな滅びてしまえばいい。壊しつくしてしまえ。


 ヒトのいる場所を壊しつくす。すべてを破壊しつくす。

 ああ、ドラゴンたちよ。すまない。僕のせいで、被害を増やしてしまった。

 でも、もう大丈夫。僕がその元凶をすべて殺しつくすから。



 なのに、どうしてドラゴンたちも、ヒトと一緒に僕を止めるの? ヒトなんていらないだろう? 壊しつくそう。

 君たちの居場所は、そちらではない。こちらだよ。壊しつくそう。


 ねえ、どうしてそこまで言っても、ヒトの味方をするんだい、ドラゴンたち。

 ――――――――なんだ、君たちも僕を裏切るのか。


 なら、ドラゴンもヒトも、すべてを壊しつくそう。すべての生き物が滅びれば、この世界は平和に戻るかもしれない。

 そうすれば、僕のように異世界から召喚されるような被害者は出てこない。


 壊す。すべてを。何もかも。壊しつくす。



 だが、それは志半ばで終わることとなった。僕は、ヒトとドラゴンの連合軍に倒され、首を落とされた。


 そして僕のことは未来へと語り継がれた。当時の僕がドラゴンに変身した姿が白銀色だったからか、白銀色の竜は不吉だと言われた。そして、僕の死んだあとの鱗で剣を作られ、聖剣としてまつられていた。

 だが、僕はまだあきらめていない。ヒトもドラゴンも、滅ぼしつくす。


 それから幾星霜。何度かドラゴンたちが何故か僕と同じ白銀色になり、暴れまわる事件が起こった。白銀色になったドラゴンは理性を無くし、ただ暴れまわる。

 僕はそれを、ちょうどいいと考えて体を奪い取った。理性がなければ、僕を止めるものはいない。ならば、そのドラゴンの体を使って、今度こそヒトたちを滅ぼせばいい。


 なのに、毎回ヒトやドラゴンどもに止められる。邪魔をするんじゃない、ニンゲンどもが。


 今回だってそうだ。

 今回は、ニンゲンとドラゴンに恨みを持った、エーデルフィアというメスドラゴンの体を奪い取った。完全に理性を失うときに奪い取ったというのに、そのくせに、途中で理性を取り戻しやがった。

 理性を取り戻しさえしなければ、僕はこの身体を使って世界を滅ぼしていたのに。

 なのに。あいつは世界を壊すことを望まず、自ら望んで兄の手にかかった。兄も、相手は妹だというのに殺してしまった。

 これ以上騒がせないために、エーデルフィアというモノ自体を消し去ろうと思ったのに、その寸前にコレの兄は、この身体を壊してしまった。


 ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。

 次に、また理性を無くしたドラゴンが現れるのは、堕竜となったドラゴンが現れるのはいつなのか。


 次に堕竜と成り果てたドラゴンが現れた時、その時こそ、僕はこの世界を破壊しつくしてやろう―――


ヒトとドラゴンに強い敵意を抱いていた少年。

少年は、まだまだヒトとドラゴンを滅ぼすことを諦めてはいません。


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