堕ちた竜 ―別視点―
堕ちた竜、滅びと再生の部分のエーデルフィア視点。
かなり暗めの感情になってるので、閲覧注意。
いきなり、感情が抑えられなくなった。感情が抑えられなくて、いきなり魔力が体中を駆け巡った。
そして気が付いたら私の周りを火柱が囲み、そして、私は漆黒の世界に叩き落された。
やめて。やめて。やめて。
私は、お父さんたちを傷つけたくはない。なのに、私の体は勝手に動き、お父さんたちに容赦なく攻撃を加える。そのうち、ドラゴンたちが増えたが、私の体は何も気にせずに炎を飛ばし続ける。
どうして。どうして私の体は言うことを聞かないの? 傷つけたくない、やめて。
「いかん! 堕ちるぞ!! フォンシュベル! 親として、エーデルフィアを救ってやれ! これ以上苦しむ前に、殺すんだ!」
「い………やだ。殺したくない、死なせたくない! 何か、ほかに方法はないのか、長老!?」
そうしていると、大じいちゃんが焦ったように告げ、お父さんがそれに泣きながら反論する。
でも、お父さん。これが止められないものならば、もう殺して。これ以上、傷つけさせないで。もう、これ以上傷つけたくないんだ。お願い。
そう思っていると、涙がこぼれているのが分かった。体は動かせないのに、涙は出るらしい。
お願い、お父さん。殺して。お願いだから。殺して。
「エーデルフィア。お父さんが、今助けてやろうな。解放、してやる。苦しませない。すぐに楽にしてやるから」
「フォンシュベル、手伝うわ。エーデルフィア、お母さんも、一緒よ。お父さんと一緒に、エーデルフィアを解放してあげるからね。………ゴメンね、私の愛しい子」
そうしていると、お父さんとお母さんが泣きながら私にそう告げる。うん、殺して。これ以上、傷つけさせないで。
そう思っているのに、私の体は勝手に動き、お父さんたちを攻撃する。お願い、やめて。勝手に動かないで。お父さんたちを傷つけないで。
ボロボロと涙をこぼしながらも、私の体は勝手に動く。今までずっと炎を放っていたものを、突然尻尾でお父さんたちを吹き飛ばした。
嫌だ! お父さん、お母さん!
涙で前が見えない。それなのに、私の体はお父さんたちを攻撃し続ける。
嫌だ! もう、嫌だ! 誰でもいい、殺してくれ! これ以上、傷つけさせないで!
そう思っていると、不意にお父さんが私の視界から消える。
そして気が付くと、私の首にはお父さんの持っていた剣が突き刺さり、そこから血が噴水のように飛び出していた。
ああ、これで楽になれる。
これで、誰も傷つけなくて済む。
これで、これで―――――
『じゃあ、この身体、もらってもいーいぃ?』
意識が闇に沈んでいく中で、幼い子供のような、高い声が耳に届いた。
その後、気が付いたら私はまた、仲間たちを攻撃していた。
どうして。私は死んだはずなのに。お父さんが、殺してくれたはずなのに。
だが、私の目には、私に攻撃されて燃える仲間たち、吹き飛ばされる仲間たちが映る。どうして。どうして。
もう、嫌なのに。もう、傷つけたくなんか、ないのに。どうして、まだ傷つけなくちゃいけないの?
『だって、僕はこの世界が大嫌いなんだ。だから、ぜーんぶ壊すんだよ』
そう思っていると、不意に声が届く。それは、私の意識が闇に沈む前に届いた声と同じ、高い、柔らかい子供の声。
その子供はにこにこと笑いながら、容赦なく破壊行動を続けている。――――私のその体を使って。
『僕はこの世界が大嫌いだから、君の体を使って、全部壊すんだよ。だから、君は黙ってみてなよ』
――――なん、だって? 私の体で、全部壊すだと? この、世界を? この美しい、世界を?
――――させない、そんなこと、させるもんか!!
『あ、こら! くそっ、黙れっ!!』
「お………にい…………ちゃ……」
その強い意志のおかげか、今、わずかながらも私の意思で体が動かせる。その間に、私の意見を、願いを、頼みを。
お願いだよ、お兄ちゃん。聞き届けて、私の願いを。
――――殺して。
『てめぇ! もうこの身体は僕ンだ! 引っ込め!』
「こ………ろして、早く! 今のうちに、………はや……く!!」
くそう、この少年の意思が強い。急がなくちゃ。早く、殺してもらわなくちゃ。じゃないと、また、傷つける。
―――――だから。
「おに……ちゃん、殺してっ!!!」
早く。早く。私が私でいられる間に、早く。
『ちくしょう! 邪魔するなら、消えろ、くそがぁっ!』
私というものが残っている間に、早く。お兄ちゃん。
少年が手に光を集める。そして、その光をこちらに放ってくる。あれを受けると危ない、本能はそれを訴えているのに、体は動かない。
――――あの光が届く寸前、私の意識は、再び闇に沈んでいった。
ああ、お兄ちゃんが私を殺してくれたのだろうか。そうなら、いいな。これ以上、私の体が誰かを傷つけなければ、それで――――
ねえ、お父さん、お母さん、カーヴお兄ちゃん、ティアお姉ちゃん、サーファお兄ちゃん。
――――私、幸せだったよ。お父さんとお母さんの子供に生まれてよかった。お兄ちゃんたちと兄弟でいられてよかった。
―――――ゴメンね。馬鹿な娘でゴメン。馬鹿な妹でゴメン。
堕竜になんて、なっちゃってゴメン。
大好きだよ。大好きだから、どうか、幸せに。
堕竜になった馬鹿のことなんて忘れて、幸せになってください―――
ねえ、ウェル。私も今からそっちに行くよ? そしたら、またいろいろ話そうね。そして、今度こそ、普通に名前で呼び合おう―――――
そしてこの後、エーデルフィアは
赤ん坊に戻って、フォンシュベルたちのもとに戻ります。